幻の森の三姉妹・Chapter7
文字数 1,973文字
館の中は漆黒の闇に包まれていた。外の光でかろうじて入り口周辺の数メートルがうっすら見える程度で、それより先は真っ暗だ。
一行は辺りを確かめるべく、慎重に足を踏み入れる。すると…。
バターン!!!!全員が館の中に入りきった所で、突然背後の扉が勢い良く閉ざされた。
そう言いながらクレスは灯火の魔法を唱えた。ポッ。途端に蛍のような光球が現れる。
同時に全員とその周囲、数メートルが照らされる。真っ暗な中の探索だけは免れそうだ。
そして…。
【カロ】
何度も彼らを見ていると、何だか可愛く思えて来ますね。
一行は闇に包まれている間に、子グモの大群に囲まれていた。言うまでもなく、館の主であるマダム・スパイディーネの差し金だろう。
パトとリズはまたもビックリしていたが、大人組はもう驚いてもいない様子だ。
灯りで照らされている部分以外は視界は悪いが、何度も戦ったために子グモたちの動きのパターンはある程度読めるようになっていた。
ジェットが床を蹴って距離を詰め、子グモ数匹に素早く足払いをかける。命中した子グモたちはバランスを崩し転倒する。
さらにそこから衝撃波が放たれ、揃って転倒して行った。
バチバチバチ!!!
そこへパトが強烈な電撃魔法を食らわせた。
魔物らしい奇声を上げ、脚を縮めて動かなくなる子グモたち。
死んではいないが効果は抜群なようだ。
【Z・ジェット】
いつまでこないな戦い続くんやろか。
【ファルファーラ】
でも相手の本拠地に入り込んでる以上、もう目的地は目と鼻の先よ。
【クレス・ビートル】
マリキータを助け出すまでの辛抱だ、もう少し頑張ってくれ。
しかしあの後様々な部屋をくまなく探すも、スパイディーネはどこにもいなかった。
どこへ入っても、待ち構えているのは手下の子グモの大群のみ。体力と魔力だけが減って行く。
一行は一旦、主人…スパイディーネのものであろう部屋とおぼしき豪華な部屋に集まり、休憩し回復していた。
【パト】
僕たちが押しかけて来たのに感づいて逃げちゃったのかな?
【クレス・ビートル】
いや、スパイディーネはマリキータをさらう時、確かにこの館へ来いと言っておった。
あの者は一度交わした言葉を破るような女ではない。
【Z・ジェット】
え、分かるんか?
ってかホンマなんそれ?
【クレス・ビートル】
あぁ、ワシの若い頃は彼女もこのエントマーズの森の住民だったからな。
ただあのような悪人ではなかった。
【クレス・ビートル】
…フッ、じゃが所詮昔の話じゃよ。
今はマリキータのヒト成分を取り戻す事だけを考えよう。
そこには一台の本棚が、壁のコーナーに合わせて置かれていた。
豪華な装飾が施された本棚そのものについつい目が行く。
言われるがままに、本棚の真下を凝視する。
そこにあったのは…。
よく見ると本棚の真横の床に、微かに引きずったような跡が付いていた。
暗いのもあり、灯りで照らして注視すれば気付くくらいの薄さだった。しかも傷は比較的新しい方だ。
つまりつい最近、この本棚は動いた事になる。
【Z・ジェット】
よっしゃ、ここはオレの出番みたいやな!
本棚を掴み、気合の入った掛け声と共に引っ張る。
ズズズズズ…。
何と本棚の後ろの壁にぽっかり穴が空いていた。ちょうど人ひとり通れそうなサイズだ。
館のどこにもいないとなれば、この先の空間にいる可能性はほぼ100%だろう。
隠し通路に入る他、選択肢はなかった。
クレスを先頭に、ファルファーラ、パト、リズ、カロ、ジェットの順で中へ入って行ったのだった。
=Chapter8へ続く=
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