ある日の事。メイン勢一行は、早朝以外は四六時中虹がかかり続けている事で有名な、とある島の長老に呼び出された。
この島唯一の集落の集会所にて、早速長老は一行を呼び出した理由を話し出す。
【長老】
早速ですがの、実はこの島の虹が全て消えてしまったのです。
確かに。本来この島は雨上がりでなくてもいつも美しい虹が見えているはずだったが、今日は飛行機からも一本も見えなかった。
虹でちょっとした観光地になっているこの島が、何故突然、虹が全て消えてしまったのだろうか?長老は続ける。
【長老】
そこで私と集落の若者たちが、島の南にある水の祠に行ってみた所、何とそこに祀られている“雨粒のオーブ”がなくなっていたのです。
そう、虹が消えた原因は、祠から『雨粒のオーブ』がなくなっていたせいだったのだ。
【長老】
あの祠は普段は結界が張られていて入れないようになっています。
つまりその結界を何者かが故意に破り、奪って行った可能性があるのです。
【カロ】
確かに…結界が張られているのなら、それが一番強いですね。
【リズ】
決まってんじゃん! あいつらだよあいつら!!
【Z・ジェット】
この平和なワールド内で酷い事するんは、鳳凰団に決まっとるわ!
【カロ】
待って下さい、まだ確定したとは言い切れません。
とにかく調査してみましょう。
【Z・ジェット】
調べる言うても、とっくに逃げられとるんとちゃうか?
【長老】
そうだ! そういえば昨日も、祠で怪しい人影を見たと言う者が多数おりました。
もしかしたらまだ近くをうろついているのかもしれません。
【長老】
実は虹をかけるためには、オーブがもう一つ必要なのです。
【長老】
はい。この島には雨粒のオーブ以外に、“太陽のオーブ”と言う物が祀られています。
そちらが置かれている光の祠は、特定の者以外には非公開になっています。
もしかしたら、犯人はそれも奪おうとして…。
【カロ】
犯人がどのような人物像だったか、見覚えはありませんか?
【長老】
見たのは一瞬だけだったようなので詳しい事は分かりませんが、目撃者たちからの情報で共通しているのは、いずれも大きさがまちまちの3人組だったと言う事です。
【パト】
…だね、3人組で目立った悪事働く奴って言ったら。
【リズ】
さっさと行こう!
どっちにしてもオーブ2つとも持ってかれたら、時間の問題だよ!
【カロ】
そうですね。
雨粒のオーブを取り返して、太陽のオーブを守りましょう!
【長老】
おぉ、引き受けて下さいますか!どうかよろしくお願いします!
一行は水の祠に向けて、集会所を出て行った。
…が、一行は肝心な事を聞き忘れていた。
【パト】
ねぇ、水の祠はガイドブックにも載ってるから良いとして、光の祠ってどこにあるの?
【Z・ジェット】
何肝心な事聞き忘れとんねーーーん!!!
【パト】
あーあ、あんなに張り切って出てっちゃったから、今更役場に戻れないしなぁ…。
【カロ】
困りましたね、これでは鳳凰団の居場所も掴めません。
この島は広いですから、当てもなく探し回っても日が暮れてしまいますし…。
と言う訳で、まずはガイドブックにも載っている水の祠に向かう事にした。
流石は観光スポットなだけあって、水の祠とその周辺はそれなりに舗装されていた。
が、肝心のオーブが盗まれた上に不審者がうろついているという注意喚起が入っているからか、人はまるっきり見当たらない。
【リズ】
そりゃそうだよ、普通危なくて近寄れないもん。
一行は犯行現場等でよく見る、立入禁止の黄色いテープが貼られた祠に近寄ってみた。
入り口を塞ぐ柵は壊され、内部が荒らされた形跡がある。そしてガイドブックに載っている写真では中のオブジェに固定されるように置かれている雨粒のオーブだが、それが跡形もなく消え去っていた。オブジェも壊されている。
【Z・ジェット】
他人事とちゃうで。早よ鳳凰団見つけて取り戻さんと。
外でかすかに物音がした。一行は慌てて入り口の陰に隠れ、様子を伺う。外にいたのは鳳凰団だった。
光の祠が見つからず、一旦ここに戻ってきたのだろう。
【孔雀】
全く、雨粒のオーブを手に入れたのは良いけどねぇ…。
【ツバメ】
太陽のオーブが必要なんて、そんなの聞いてねぇっスよ!
【イーグル】
オーブが揃わないと、お城に虹がかけられないガー。
【孔雀】
一体どこに光の祠があるってんだい!?
こうなったら、いっそ長老締め上げて聞き出すしか…。
鳳凰団が村へ向かおうと振り向く。と、そこには一行が!
奴らのあまりに腹立たしい発言に、戦闘覚悟で飛び出したようだ。
【孔雀】
げっ、またアンタたち!
行くとこ行くとこ現れるわね!!
【孔雀】
あ~ら、ツバメの言う通り、話を聞かれてたようだねぇ。
ふふふ、アンタたちが欲しいのはもしかしてこれかい?
そう言いながら、懐から何かを取り出す。それは青く輝くオーブだった。
【カロ】
そのオーブはあなたたちのような悪人たちが持つ資格はありません!
今すぐ返しなさい!!
一行の非難に、孔雀がニヤリと怪しい笑みを浮かべた。
【Z・ジェット】
ふざけんなや、嫌でも返してもらうで!!
【孔雀】
ふん、取り返せるものなら取り返してご覧なさいな。
…まぁ、その前にザコガラスを倒せればの話だけどね!行けぇ!!
孔雀は一行を指差して叫んだ。同時にイーグルがザコガラスを数体召喚する。
一行はすぐに武器を召喚し、戦闘体勢に入った。
【イーグル】
ウガー、邪魔する奴らはやっつけるガー!
前回と同じく、ザコガラスが一斉に襲いかかって来た。
相変わらず突進攻撃しかしないザコガラスたちを、一行は蹴散らして行く。ここに書くのも面倒なくらいのワンパターンである。
そんな事を言っているうちに、あっという間にザコガラスたちを倒してしまった。
【孔雀】
ムキーッ!!
こんな役立たずのオーブなんかいらないわ、くれてやるわよぉ~!!
続けてツバメとイーグルも後を追うように逃げて行く。
地面に叩きつけられたオーブだが、流石は島に虹をかける力がある伝説の宝、表面にはヒビどころか傷一つ入っていなかった。
リズが近くまで駆け寄り、このオーブを拾い上げる。
雨粒のオーブは海のように青く輝き、、絶えず水のような澄んだ美しさを放っていた。
鳳凰団に荒らされたせいでオブジェが壊され、このままではオーブを元の祠に戻す事が出来ない。
【Z・ジェット】
とりあえずあのじいさんとこ持って行こか。
【カロ】
そうですね、長老さんに預かってもらうのが最も安全だと思います。
そこには驚くべき光景が広がっていた。今度は集落全体がめちゃくちゃになっていたのだ。
中央の広場に人だかりが出来ている。そこには…!
何と、長老が傷だらけで倒れていた。ゴザの上に横たえられ、住民たちに介抱されている。
一行が慌てて彼の元に駆け寄る。
【Z・ジェット】
じいさんどないしてん!? エライなケガしとるやん!
【住民A】
大変な事が…!
鳳凰団がこの集落を襲って、光の祠への地図を奪って行ったんだよ!
【住民B】
それで長老が自ら守ろうと立ちはだかったんだけど、あいつらには敵わなくて…。
後は見ての通りよ。
老人に大きな傷を負わせるとは、何と言う極悪非道な連中なのだろうか。
一行の頭にはとうとう血が上った。
【パト】
勝手な目的のために、集落の人たちを巻き込むなんて!!!
【住民A】
これは…奪われていた雨粒のオーブ!キミたちが取り返してくれたのか!
【パト】
もし奴らが太陽のオーブを手に入れたとしたら、奪い返した僕らを狙ってまた襲って来るかもしれません。
だから、あなたたちに大切に持ってて欲しいんです!
【住民A】
…分かりました!
長老!メイン勢の皆さんが、雨粒のオーブを取り戻してくれましたよ!
【長老】
おぉ、無事取り返してくれたんですな。何とお礼すれば良いか…。
【リズ】
お礼なんていいから、おじいさんは安静にしてて!
ケガしてるんでしょ!?
【長老】
すまないねお嬢ちゃん。今度は奪われないようにするよ。
【Z・ジェット】
よっしゃ! 鳳凰団の奴らをぶっ飛ばしに行くで!!
【パト】
あいつらなんかに太陽のオーブは絶対渡しませんから!
【長老】
どうかよろしくお願いします。
そうだ、あれを…。
そう言って住民の一人は、一枚のコピー用紙を手渡した。
カラーで何か地形のようなものがプリントされている。
【長老】
それは光の祠までの道のりを記した地図です。
念のために写しを取っておいたのです。
【Z・ジェット】
じいさん、ナイスやで! おおきに!
一行は早速、地図に示された光の祠へ向けて走って行った。
地図を見ながら向かった結果、着いたのは何と先程の水の祠がある広場だった。
それも広場に大きく印が付いているため、具体的にどこにあるのかは分からない。
【リズ】
おじいさん、違う地図渡しちゃったんじゃないの?
【Z・ジェット】
でも確かに“光の祠”やて、下にちぃちゃく書いとるで。
【カロ】
もう少しこの辺りを探索した方が良いかもしれませんね。
【リズ】
だったらあれとか、めちゃくちゃ怪しくない?
指差した先は広場の中央。そこに大きな石碑がでんと佇んでいた。
石碑にはまるっきり読めない文字が刻まれている。解読されていないようだ。
本来ワールド内ではどの住人も、不思議な力によってほぼ全ての言葉や文字を理解出来るようになるのだが、一つだけ例外があった。
それがこの“神の古代語”と呼ばれる言葉なのである。カロは神に限りなく近い種族と言われる“神々しき一族”であるため、出身地である次元聖域で日常的に使っていたこの言語はお手の物。何の苦もなくスラスラと解読して行った。
【カロ】
えーっと…。
“水と日ありて、奇跡の光生まれん 全ての根源、ここに眠る”
…だそうです。
【パト】
奇跡の光って、たぶん島にかかる虹の事だよね?
【Z・ジェット】
っちゅー事はやっぱ、この辺のどっかに祠が…ん?
【Z・ジェット】
なぁ…ここ、ちょっと風吹いてへんか?
確かに、ここだけ微かに風を感じる。
調べてみた結果、風はこの石碑の根元から出ているようだった。
パトとリズの二人で石碑を横から押してみる…が、当然びくともしない。
【Z・ジェット】
ここはオレに任せとき…ふんっ!!!
ジェットが代わり、持ち前の怪力を発揮した。
ゴリゴリゴリ…。重量感のある音を立てて、石碑がゆっくりと動く。
ついにその佇んでいた場所から完全に動かし切った。
そこには人ひとり入れそうなサイズの穴があった。下へ降りるちょっぴり急な階段が続いている。
どうやらこれが光の祠への入り口のようだ。まさかこんな近くにあったとは。
【パト】
何があるか分かんないから、気を引き締めて行こう。
先頭からジェット、リズ、カロ、パトの順で階段を降り、穴の中へと入って行った。
階段を降り切ると、綺麗で明るい石造りの空間に出た。天井はドーム状になっており、そこから中央に向かって一本の光が差し込んでいる。
そしてその真下には、赤く輝く美しいオーブが佇んでいた。雨粒のオーブ同様、こちらも支えるオブジェに固定される形だ。
守るべきお宝を見つけたリズが飛び出そうとした。
が、危険を察知したジェットに慌てて引き戻される。
一行は近くにあった巨大な女神像の陰に素早く隠れ、様子を見る。
このフロアの奥に他の部屋へと続くトンネルがいくつかあり、その一つから鳳凰団が出て来たのだ。
【孔雀】
全く、困ったもんだねぇ。オーブは固くて外せないし、オブジェも壊せないし…。
他の部屋で使えそうな物探しても、ここ以外は泉しかないじゃないの!!
【ツバメ】
早くしないとあいつらが来ちまいますぜ、姐御~。
【孔雀】
分かってるわよ!!あいつらが来る前に、とっとと太陽のオーブを奪ってズラかるわよ!
それとたぶん、住民共に雨粒のオーブを預けてるはずだからねぇ、そいつらを締め上げてそれも奪うのよ!
奴らの会話を、女神像の陰から盗み聞きしていた一行。
話し声が聞こえないよう、テレパシーでそれぞれ会話する。
【パト】
(それにしてもあいつら、また村の人たちを危険な目に遭わせようとしてるのか!)
何とジェットが足を滑らせてしまった。その勢いで思わずカロの手を掴む。
将棋倒し状態になった一行は、そのまま前のめりに倒れてしまった。
物音に気付いた鳳凰団がこちらを振り返る。
【孔雀】
誰だい、この鳳凰団様の話を盗み聞きするなんて、良い度胸してるじゃないの!!
…って、誰かと思えば!!!
【ツバメ】
お前ら、いつの間に来てやがったんだ~!?
こけた事を馬鹿にされ、顔を真っ赤にしたジェットとリズは怒った。まぁ人間、たまには失敗もあるさ。
【Z・ジェット】
それよりもお前ら!
よくも太陽のオーブを奪おうとした上に、集落の奴らをコケにしよったな!?
【孔雀】
ふ~んだ、それは祠の場所を吐かないあいつらが悪いんじゃないの!
【ツバメ】
そーだそーだ!
大人しく教えてれば、あんな目には遭わなかったんだぜぇ!!
【イーグル】
鳳凰団に逆らったから、お仕置きしてやったんだガー。
あっはっはと大声で笑う鳳凰団。悪びれた様子もないようだ。
【カロ】
仕方がありません…。
多少手荒くはなりますが、力づくでも諦めてもらいましょう!!
一行は武器を召喚し、いつでも戦闘が可能な態勢に入った。
【カロ】
島の皆さんが大切にしている宝を、あなた方のような外道には渡しません!!
【孔雀】
外道ですってぇ!? 鳳凰団の邪魔をするアンタたちに言われる筋合いはないわよ!!
コバードβ、やっておしまい!!
どこからともなく甲高く気持ち悪い奇声が聞こえたかと思うと、鳳凰団の前に小柄な影が降って来てゆらりと立ち上がった。
それは人間の子供の体に羽毛を生やし、手足は完全に鳥で鋭い爪を光らせる、前回のコバードαよりもおぞましい姿をした化け物だった。奴の爪で引っかかれれば、ひとたまりもなさそうに思える。そしてこいつは、腰から鳥の翼が生えていた。
見た目はまるで、西洋妖怪のハーピーみたいだ。しかしコバードαと比べると、より人間に近いフォルムだった。
αやβと付く限りザコガラスとは違って、コバードシリーズは量産型ではないようだ。
【孔雀】
コバードβ、こいつらに一生消えない引っかき傷を付けておやり!!
甲高い奇声と共に、コバードβが爪を構え、襲いかかって来た。シャッ!!!一秒経たぬうちに、辺りに空気を切り裂く音が響き渡る。
素早い動きで爪を一振りして、斬りかかって来たのだ。幸いにも一行は間一髪で避け切ったが、その空気の凄まじい音と流れはしっかり感じ取れた。
パトがすぐに刀で斬り返すが、惜しくもあと少しという所で逃げられてしまった。
【パト】
あの鋭い爪で切り裂かれたら、ケガくらいじゃ済まないね…。
【Z・ジェット】
こないだのαとは比べ物にならへんで…。
そう言っている間に次の攻撃が迫って来た!
ガキィィィン!!リズが刀で爪を受け止める。
刀で押し返すリズ。コバードβは吹っ飛ばされる。
しかしコバードβはすぐに起き上がり、爪を一振り。空気を裂く音と共に真空の刃を放った。
そして一瞬のうちに刃は一行の間を横切った。
幸い攻撃は当たらなかったが、一行はその風圧で転倒してしまう。
【イーグル】
当たってはないガー、でも手応えありだガー。
【孔雀】
ふん、あいつらがピンチならそれで良いのさ。
さぁ、お遊びはおしまいだよ。コバードβ、とどめを刺しな!
孔雀の命令するがままに、コバードβは一行のもとへ飛ぶ。まだ起き上がれていない一行を、爪で切り裂こうとしているのだ。
スピードを上げ低空飛行し、その途中で爪を振り上げる。このままでは一行は、まとめて真っ二つに切り裂かれてしまうだろう。
鳳凰団が勝利を確信した、その時。
ビカッッッッッッ!!!突如中央のオブジェから、一本の光の柱が伸びた。
鳳凰団と一行、そしてコバードβも驚いてズザァァァァッと急停止し、光の柱を見る。
それは太陽のオーブがまばゆい光を放って出来たものであった。
光は温かみを感じるオレンジに近い色をしていた。天井から差し込む光に溶け込み、オレンジと金色のグラデーションとなっている。
入り口の方から声がした。見ると、そこには車椅子に乗った長老と住民数人がいた。
見ると長老の手には、ほんのりと水色に輝く雨粒のオーブが。
【長老】
ほっほっほ、私は島の秩序を守るべき存在。そう簡単に死ねやしませんとも。
【長老】
ほほっ、ダテにジジイをやってませんからな。
それだけ言うと、長老は住民に車椅子を押してもらい、オーブの方へ向かった。
何と、一行や鳳凰団ではびくともしなかった太陽のオーブを、いとも簡単に取り外したのだ。
【長老】
やれやれ、盗難被害が出ないように魔力をかけておいたのに、まさか雨粒の方がオブジェごと壊されるとは…。
【住民A】
今度はより頑丈な素材で作っておかなくてはいけませんね。
【孔雀】
ふん、オーブが揃うとは、何てラッキーなのかしら!
ちょうど良い、ウチらがまとめて頂いてやるわ!!
鳳凰団+コバードβがザコガラスも放たずに、一斉に襲いかかって来る。しかし詰めが甘いとはこの事だ。
突然奴らの動きが止まり、その場に浮遊する。
奴らも一行も、突然の出来事に戸惑う。それは長老の仕業だった。
【長老】
やれやれ、封印しておいたはずのサイコパワーを解禁する事になろうとは…。
言った通り、長老が目玉をぐりんぐりんと動かすと、鳳凰団の体が回転する。
彼の目が弧を描くように動いた。
鳳凰団はそのままポーンと投げ出され、重なるように床に落ちる。
重なって身動きが取れないでいる鳳凰団をよそに、長老は両手にオーブを持ってパトとリズの所に向かった。
長老は雨粒のオーブをパトに、太陽のオーブをリズに手渡す。
【長老】
今のキミたちならオーブの力で虹の光を呼び覚まし、奴らを倒せるはずだ。
2人がそれぞれオーブを空高く掲げる。2つのオーブが一層強く光り輝き、みるみるその光が混ざって行く。
そしてオーブから放たれる2色の光は、美しい七色となった。
ギューーン!!!七色の光がレーザー光線のように飛び出した。
そのまま鏡を反射するように空中を屈折し、鳳凰団へと突っ込んで行く。まばゆいばかりの光線は見事奴らに命中した。
特にコバードβの断末魔は凄まじかった。どうやら鳥であるが故、強い光の反射にめっぽう弱いらしい。
強烈な目くらましを食らい、鳳凰団たちは怯んでその場にうずくまる。
【長老】
地図を守れなかったお詫びとして、とどめは私が刺しましょう。
長老が再びサイコパワーによるテレキネシスを発動させた。今度は泉の水が湧き上がり、動き出す。
そのまま恐ろしい勢いで、うねりにうねった水は鳳凰団+コバードβの方へ向かって行く。
【孔雀】
くやし~、オーブどころか虹の光まであいつらのものになるなんて~!!!
【ツバメ】
姐御、今度ホースの水で虹作りやしょうぜ!
【孔雀】
おバカ!そんなチンケな虹作っても嬉しかないわよ!!
鳳凰団+コバードβは、空の彼方へ消えて行った…。
夕刻。空には数本の美しい虹が絶えずかかっている。一行+長老の活躍により、無事オーブが戻って来たのだ。
オーブに関しては『一緒に祀っていた方がオーブたちも喜ぶだろう』と言う結論に至り、光の祠に一緒に置いておく事となった。
壊された水の祠はお祓いをした上で撤去し、光の祠は名称をそのまま『虹の祠』へと変更し、一般公開する予定らしい。
その儀式は近々執り行うそうだ。もちろんオブジェからは取れないよう魔力による封印も継続の上、セキュリティの面も強化すると言う。
【長老】
いやはや、オーブを守って下さり本当にありがとうございました。
そして島の集落の長老宅。ベッドの中で長老がお礼を言う。
その周りに一行と住民たち数人がいた。
【リズ】
長老さんたちが来てくれなかったら、あたしたちやられてたもん!
こっちこそありがとう、おじいさん!
【Z・ジェット】
それにしてもあのテレキネシス、ビックリしたわ~!
【長老】
いやいや、あの程度大した事ありませんよ。また何かあったらよろしく頼みます。
さて、今夜からはじっくり養生して、来週の儀式に臨みますかの。
これ、メイン勢の皆様を飛行場まで送ってやりなさい。
【Z・ジェット】
あいつら来たらまた知らせてくれな~!
一行はスコアランド本土へ帰る飛行機に乗るため、それぞれさよならを言いながら手を振る住民たちに別れを告げ、小さな送迎バスに乗って飛行場へと向かって行ったのだった…。
【リズ】
ホント、ずーっと見てたくなっちゃうよね~♪
住民たちが見えなくなった頃、送迎バスの中ではパトとリズが、スコアランド本土ではなかなか見られない虹の話で盛り上がっていた。
おしまい。
【今回の主要以外の登場人物】
====================
【長老】→島の集落の長老で、住民たちをまとめる役目を持つ男性。メイン勢に今回の事件の解決を依頼した。
サイコパワー(超能力)を持っているが、この能力は自分自身がケガ等で命の危機に晒された時しか使えないらしい。
【コバードβ】→鳳凰団が造り出した鳥人間の生命体『コバードシリーズ』の二号体。
人間の少女のような体に羽毛が、腰からは翼が生えている。その姿はまるで西洋妖怪のハーピーのよう。
小柄であるが故の素早い動きと、手足の鋭い爪による切り裂き攻撃が得意。