5-12. 勝利のサーバーへ走れ

文字数 1,598文字

「さて、ヌチ・ギを叩くぞ!」
 レヴィアは手元の端末を見ながら何かを探っていた。
「F16064-095とF16068-102じゃ、探せ!」
「え? 何ですかそれ?」
「サーバーラックに番号がついとるじゃろ、それとブレードの番号じゃ。二枚を同時に引き抜くと奴は消滅する。探せ!」
「二枚同時ですか!?」
「そうじゃ、一枚抜いただけでは残りのサーバーの情報から修復されてしまうが、二枚同時は想定されていない。復旧できずヌチ・ギの身体は完全に消失する。どんなスキルを持っていようが引き抜いてしまえば(あらが)いようがない」
「なるほど……、エグいですね。ヌチ・ギ以外に影響はないんですか?」
「確率的に言えば両方のブレードに同時に乗っているのはヌチ・ギだけじゃろう。安心しておけ」
「で、F16064……でしたっけ?」
 俺は辺りを見回した。探せと言われてもこの広大なジグラートの中でどうやって探すのか皆目見当がつかない。確かによく見るとサーバーラックにはフレームに番号が刻まれている。俺はいくつかラックを見ながらその番号の法則を探った。
「あー、これは列と階と入り口からの番号ですね。十六階へ登りましょう」
「十六階……、間に合いそうにないな……」
 レヴィアがつぶやく。
「え? 時間制限があるんですか?」
「そうなんじゃ、使うサーバーは次々に変えられてしまうのじゃ」
「じゃぁ、次変わったら走りましょう」
 二人は画面をじっと見つめる。
「変わった! B05104-004、B05112-120! 走れ!」
 俺たちは全力で走った。しかし……、
「はぁはぁ、変わってしもうた、 G21034-023、G21095-113」
「二十一階は無理ですよ!」
「じゃあ休憩じゃ……、あ、A06023-075!」
「六階行きましょう!」
 俺たちは全力で走るが……、
「あぁっ! 変わってしもうた……はぁはぁ、D14183-132……」
 俺は肩で息をしながら言った。
「はぁはぁ、追いかけるのは無理そうです。張りましょう」
「張るって……どうするんじゃ?」
「サーバー変更の規則性を読むんです」
「え――――! そんなのどうやるんじゃ?」
「何かメモできるものありませんか?」
「メモ帳を使え」
 レヴィアはそう言って、端末のメモ帳アプリを起動してよこした。
 俺は変わっていくサーバーの番号を次々とメモっていった。
「こんなのランダムじゃないのかのう?」
「静かにお願いします!」
 俺は必死に法則性を追った。システムがサーバーリソースをアサインする場合、きっと何らかの制約があるはずだ。バッチリ予測は出来なくても階と列くらいは絞れて欲しい。ゲームハッカーとして(つちか)った能力を総動員し、何としてでも法則性を見出してやるのだ。

 俺はしばらく画面をにらみつづけ、ついにある事に気が付いた。たまに10回前の位置と相関のあるところに出ることがあるのだ。
 だとすると次は……近いぞ!
「レヴィア様、こっち!」
 俺はレヴィアの手を引いて走った。
「分かったのか?」
「確実ではないですが、可能性が高い所が絞れました」
「ホントかのう?」
「いいから本気で走ってください!」
 俺は必死に走った。全力で対応しないと後悔するような嫌な予感に突き動かされ、必死に足を動かした。

         ◇

 俺は予想されるサーバーラックの前までやってきた。
「はぁはぁ……。次……、この辺りかもしれません」
「はぁはぁ、世界の命運がかかっとるんじゃ、頼むぞ~!」
 二人は息を切らしながら端末に祈った。
 果たして、次のサーバー番号が表示された……。
「D05098-032、D05099-120! ビンゴ! レヴィア様、その120番ブレード抜いてください、私はこの32番ブレード抜きます!」
「ほいきた!」
「行きますよ! 3、2、1、GO!」

 ヴィー! ヴィー!
 警報が鳴り、辺りのサーバーラックのインジケーターが全部真っ赤になった。
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登場人物紹介

ドロシー

主人公と同じ孤児院で暮らす孤児

可愛く頑張り屋さんなお姉さん

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