幕間講義 7 ストーカー規制法 (序)

文字数 5,118文字

倉本:んー! んー!
理沙:愛先輩! このクソ男を簀巻きにしました!
優珠:何ゆってるのよ。簀巻き程度で済ませるなんて何考えてるのよ! 目潰して息できない
   ように鼻を洗濯ばさみで摘まみなさいよ
蒼依:もちろんだけど二人ともそれが終わったらしっかり手を洗って消毒する事。良いね
倉本:んーっ! んんーっ!!
慶久:あの。ねーちゃんをこんな目に遭わせたこいつ。蹴り飛ばしても?
巻本:もちろんだ! 同じ男として到底許せんからな! 気のすむまでやってくれ!
優希:僕からもお願いするよ。慶久君

冬美:えっと。鼻まで摘まんだら会長息できなくて、お亡くなりになられるんじゃ
彩風:お亡くなりって……
佳奈:あの。幼馴染やってるって聞いてたんですが止めんでええんですか?
実祝:いい。逆にもっとやれ
結芽:そうね。劇中ではうちは知らない事になってるけど、後輩に送ったメッセージは誰が
   どう見ても犯罪よね。これって強要罪だったっけ?
朱寿:その話は後でするけど、今はガス抜き――
蒼依:――言っときますけど! 愛ちゃんをこんなにも危ない目に遭わせた、ブラウスの人に
   は二度と! 愛ちゃんの隣には座らせませんからね
愛美:えっと。蒼ちゃん? 朱先輩の隣、私が座りたいんだけど……
朱寿:愛さんっ!
優珠:ちょっと、メス女! こんな性犯罪者に何ゆってるの? この性犯罪者の鼻を潰して
   おかないと、女の匂いが~とかゆって、鼻をヒクつかせ始めるわよ
女子:?!
理沙:空木妹! さすがだな。じゃあ早速鼻をガムテープで貼り付けた後、洗濯ばさみで摘まむ
優珠:目は? 愛美先輩のスカートの中を見たこの性犯罪者の目は?
実祝:当然潰す。むしろ目玉をくりぬく
咲夜:あの。みなさん少し過激すぎません?
彩風:どうして先輩なのに敬語なんですか?
蒼依:だったら自分が、付き合えば良いじゃない
優珠:ふん! そこは同じ考えをするのね
結芽:大体女子の匂いを嗅いで興奮するなんて、どう考えても変質者よ。変質者
冬美:いえ。女性のスカートの中を覗くなんて、どう考えても盗撮、犯罪です
直実:……
巻本:えっと……見るだけでも犯罪なのか? さすがに聞いた事ないぞ?
蒼依:……そう言えば先生。愛ちゃんのブラウスの中、背の高さを利用して何度か見てますよね
理沙:!! ちょっと先生! それはどう言う事ですか?!
優珠:だからこの教師はロリコンだって何度もゆって来たじゃない
優希:……
愛美:私。そんなつもりなかったんだけど……ひょっとして優希君。怒ってる?
冬美:(その調子で岡本さんに幻滅して下さい)
優希:もちろん。不可抗力とは言え、僕以外の男子に見せる意味が分からない
佳奈:お兄さん以外にって……
優珠:もういいの。お兄ちゃんはこの腹黒に染まったんだから、もう諦めてるの
巻本:俺。何も言ってないけど、何で空木と俺でそんなに差があるんだ? 同じ男なんだから
   空木だって糾弾されるべきだろ
理沙:あの……先生。それ本気で言ってます?
蒼依:理っちゃん。そこじゃないよ。先生が全く否定してない。つまり愛ちゃんの恥ずかしい
   部分を見てたって所にしっかりと反応しないと駄目じゃない!
実祝:なんだか以前の蒼依より、目に見えてしっかりしてるし、自分の意見を言葉にしてる
   気がする
咲夜:そりゃ二人はそれだけの付き合いで、お互いを想ってるんだからそれが形になるのは
   当たり前なんじゃないかな
朱寿:わたしだって、わたしだって! 愛さんの一番の理解者なんだよ!
蒼依:その割には愛ちゃんが危なかったのに、顔どころか連絡の一つもしなかったんですね
彩風:なんか蒼先輩が今回の幕間講義では終始押しそうですね
朱寿:?!
優希:あの。先生。劇中ではもうしばらく自重しますけど、愛美さんは僕の彼女なので、人の
   彼女のを見て楽しむとかホント、辞めて頂けます? もう一度教頭先生に相談――告発
   しますよ?
巻本:――!! ……
佳奈:なんかお兄さんかっこようなってんな
優珠:当たり前じゃない! お兄ちゃんはいつだって何をしても格好良いのよ
愛美:ありがとう優珠希ちゃん。優希君の良さを分かってくれてありがとうね
優希:愛美さん。これからはやっぱり僕も愛美さんの隙を指摘した上で、しっかりと隠すよう
   にする
倉本:んんん!! ん~~ん!!
理沙:あの。そこの犯罪者。何言ってんのか分かんないんで、静かにしてもらっていいですか?
愛美:ちょっと優希君? 劇中でも言ってた通りそれは恥ずかしいから嫌だよ?
蒼依:空木君。愛ちゃんが嫌がる事。するの?
結芽:なんか(つつみ)さん。本当に変わったのね。これで登校して来たらこの話も、どう雰囲気が
   変わるのかしら
優珠:何が“嫌がる事”よ。この女は自分から見せてるの――
優希:――優珠。いくら優珠でも、愛美さんを悪く言わない。愛美さんが優珠を大切にしてる
   のは分かってるんでしょ?
佳奈:さすがお兄さんやね。岡本先輩と優珠ちゃんの両方を理解してるから言える言葉やね
慶久:あの……質問なんですが、こんな暴力ねーちゃんのどこが良いんですか?
巻本:なんで岡本の弟が、岡本の良さを知らないんだ? それにこの弟、ちょっと礼儀なって
   ないんじゃないのか?
愛美:……ちょっと先生。慶は私の弟なんですけれど、何か文句ありますか?
女性:(あ~あ。またここにも一人言っちまいやがった)
巻本:?! いや?! そう言う訳じゃないぞ?
愛美:だったら今のはどう言う意味ですか? 慶も私の大切な家族なんです。先生こそ慶の
   何を知って礼儀がなってないとか言うんですか?
実祝:愛美にはこれがある
結芽:と言うか岡本さんの周りの人をディスらない。これって最低条件よね
朱寿:そんなの当たりま――
蒼依:――愛ちゃんがどれだけ周りの笑顔を大切にしてるか、ご家族を大切に想ってるかを
   考えればわかるよ
穂高:(つつみ)さんのワンサイドね
朱寿:今回の作戦はわたしが教えたのに~
蒼依:私はおばさんから聞いたって聞きました
彩風:蒼先輩の目。炎が出てる
理沙:お二人とも。この性犯罪者は鼻をつまんでアイマスクをして、テープを貼って簀巻きに
   して。無害化したんですから仲良くしましょうよ
冬美:相変わらず中条さんが壊れてます
咲夜:なんだか二年の後輩がまともに見えるから不思議
愛美:私のお気に入りの後輩なんだから当たり前じゃない。それとも咲夜さんは冬美さんに
   文句あんの?
咲夜:?! 無いであります!
優希:ふふ……今の愛美さんを見ても分かるけど、慶久君のお姉さんは、普段は照れ隠しで
   色々誤魔化してるけど、実際は自分を後回しにして周りばかりを考えてるんだ。それは
   さすがに慶久君も心当たりの一つや二つはあるんじゃないかな
慶久:……まぁ……無いとは言わねーけど
愛美:ちょっと優希君。恥ずかしいよぉ
男子:(な! なんて色っぽいんだ!)
女子:(こいつらは愛美さんだったら何をしても良いのか?!)
佳奈:……なんかお兄さんも、岡本先輩の弟さんまで仲ようし始めてるんやね
優珠:……ふん! 結局お兄ちゃんも腹黒に染まったって証拠じゃない!
佳奈:ほな、優珠ちゃんも腹黒い言うとる岡本先輩と仲ようしとるって認めるんやね?
優珠:……変な揚げ足を取るのは辞めてちょうだい。わたしはこんな腹黒とは仲良くする気
   なんて無いんだから!
冬美:……おかしいです。この辺りが最後の逆転の目だったはずなんです
彩風:いや。物語の流れからしてもおかしいよ? もうこれでほとんど決着付いたよ?
倉本:……んん……
結芽:あ。会長の元気がなくなった
咲夜:まあ、劇中であれだけこっぴどく振られたらね~
優希:だから今後は僕が愛美さんのスカートの中も守る!
全員:(いや。その理屈はおかしいんじゃ?)
理沙:つまり愛先輩の彼氏だったら良い……のか? いや、彼氏だからって何をしても良い
   なんて――
実祝:なんだか後輩が変な悩み方してる

蒼依:そう言えば愛ちゃん。嫌い嫌いって連呼してたよね?
理沙:もっとこうハッキリとぐっさりとノーを突き付けてやっても良かったんじゃ?
優珠:それでしっかり殴り飛ばしてたじゃない。あれはスカッとしたわよね
冬美:ワタシはむしろあれを見て怖かったんですけど
実祝:でもお母さんもアレくらいはやれって言ってた
慶久:おかんもんな事言ってたな
愛美:なんかね。後から思い返して、嫌い嫌いだけじゃなくて、もっと人の話を聞かない人は
   嫌いだとか、女の子だったら誰でも良いんだから私以外を選んで! とか言えば良かっ
   たんだけれど、今までそれは散々言って来たからね
蒼依:そうだよね。私が愛ちゃんの家にお泊りした時も、愛ちゃん理由を添えてたし、公園で
   の時もちゃんと言ってたし私も建前でだけでもちゃんと言ってたもんね
朱寿:……愛さんと――お泊り
実祝:でも言葉は嫌いの連呼だったけど、実際には消毒液も全部使ってた。手も洗ってた
彩風:そう言えば最後駆けつけた時、携帯も何もかも汚れてるかのような言い方でしたね
冬美:実際ワタシへ送られたメッセージをご覧頂ければ、そう思われても仕方がないんじゃ
   ないでしょうか
実祝:ん。空になった消毒液の容器をお母さんが確認した時、あたしにも男子を断る時はそれ
   くらいはしろって言われた
咲夜:男子に触れる機会すらないあたしは……
結芽:ものすごく不本意だけどうちも同じだから、それ以上は言わなくても分かるわよ
巻本:なんか嫌い、好きじゃないって言われるよりキツイな
慶久:だからねーちゃんなんだよ。ねーちゃんを本気で怒らせるとマジこえぇからな
朱寿:……慶久くん?
慶久:……お姉ちゃんは他人思いだから、人の悪口を言うと必ず怒るぞ?
倉本:……
巻本:肝に銘じておく
優希:劇中ではまだ先生は知りませんが、もう先生に芽はないんで、さっさと愛美さんから
   離れて下さい
佳奈:なんか満足そうやな
優珠:お兄ちゃんがしっかりしてるんだから当たり前じゃない
佳奈:ちゃうやろ? 岡本先輩がハッキリ断ったしやろ?
結芽:なんかこの空木君の妹さんも劇中とは全然違うわね


穂高:なんだかみんな青春してるわねー
優珠:先生の青春はもう終わってますからね
佳奈:優珠ちゃん。いくらおばさんに近いから言うたかて、それはアカンやろ
穂高:お?! おば?!
巻本:大丈夫です。養護教諭はまだまだお若いです
愛美:優珠希ちゃん? 先生とはもう仲直りしているんだから、そんな言い方をしたら怒るよ?
慶久:な? 結局ねーちゃんは最終的にみんなこうなるんだよ
穂高:だからこそ私も、遅まきながら岡本さんを理解出来たのよ
冬美:結局ワタシもこれに飲み込まれました
彩風:飲み込まれたって……

直実:それじゃそろそろ時間だから、今回の議題に入っても良いかな?
理沙:是非! よろしくお願いします!!
直実:さすがに気合入ってるな。優珠ちゃんは良いか?
朱寿:(ま! またこの憎い妹さんなんだよ)
優珠:もちろんよ。とはゆってもこの法律もある程度知ってるけど
直実:さすがは優珠ちゃん。でもしっかり説明するから出来れば意見なんかも言ってくれたら
   嬉しいよ
優珠:分かりました
優希:……
佳奈:お兄さん? これはただの講義ですからね?
直実:もちろん朱寿(すず)もな!
朱寿:……うんっ! なんだよ!
蒼依:今の“なんだよ”って要らないよね?
愛美:蒼ちゃん。朱先輩は心優しくて私の相談にも乗ってくれてる人だから、もっと優しく
   して欲しいな
朱寿:愛さん!
理沙:それ、あーしにももっと優しくして頂ければ大喜びなんですけど
優珠:……
佳奈:優珠ちゃんが素直になるんはもう少し後やもんな

穂高:それじゃ行くわね。空木さんは分かってるみたいだけど今回の講義は

              「ストーカ規制法」

穂高:よ
理沙:はい! 性犯罪者は全員去勢確定を定める法律ですよね
冬美:……中条さんがいる限り脱線して前に進まない気がします
優珠:何をゆってるのよ。性犯罪者はもれなく死刑にする法律なのよ
佳奈:多分世界のどこを探してもそんな法律無い思うけど
蒼依:でも、私や愛ちゃんからしたら、それくらいはして欲しいよ
慶久:……
実祝:分かる。あたしも是非お願いしたい
巻本:気持ちは分かるけどな、これもちゃんと定義と罰則規定があるから説明するな
優希:それは先生の保身の為ですか?
朱寿:空木くんの気持ちも分かるけど、せっかくなんだから少し落ち着くんだよ
愛美:優希君の気持ちは嬉しいけど、まずは朱先輩とナオさんの説明を聞こうよ
優希:分かった

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