第204話 異なる二つの加圧者と被圧者 Aパート

文字数 7,865文字




 迎えた昼休み、冬美さんからのメッセージを確認するも、返信が無かったからどうしようかと迷っていた所に、
「今日こそは愛美と一緒にお昼する」
 昨日と同じように実祝さんが、朝の興奮と残酷なクラスメイトの反応に受けたショックの両方を残した咲夜さんを連れて来てくれた時、
「お待たせ……しました」
 全く元気の無さそうな冬美さんが姿を見せてくれる。
「……ひょっとしてここに来るまでの間に、また彩風さんと揉めたりしたの?」
 全く元気が無く、いつもより姿を見せてくれるのが遅かった冬美さん。私はなぜか九重さんの視線を感じながら、冬美さんの元まで歩み寄る。
「霧ちゃんと揉めるって……そのお話は岡本さんと中条さんにかばって頂いたじゃないですか」
 だけれど、それは違うと言う冬美さん。一瞬受験生だって言っていた私に、心配かけないようにしているのかなとも思ったけれど、朝と今の冬美さんの様子を見てもそう言った雰囲気も受けないし、さっきメッセージの確認をした時も理沙さんからも何もこれと言った話は流れて来ていなかった。
「……ひょっとして前に空木君とキス『っ』をした『咲夜っ!』――最近二人でよくお弁当を食べてる議長の雪野さんだよね」
 冬美さんが落ち込んでいる理由に心当たりのない私が、考え込んでいる間に、午前中は人の恋路に興奮状態だった咲夜さん達がそのままついて来て、私のドロドロになってしまっている原点をそのまま口にしてしまう。と同時に、あの日の行動を反省しているのか、冬美さんも表情をこわばらせる。
「……結局先輩たちもワタシが悪いって仰りたいんですね。確かにワタシは空木先輩の頬にキスをしました。でもそれは口にして頂きたかったワタシの気持ちを拒否した結果で、ワタシは空木先輩の頬に……したかったわけでは……ですのに、今朝の口ぶりですと空木先輩と岡本さんは、もう何度もキスをする……仲……で……」
 そうか。そりゃ自分の大好きな人が、恋敵と口付けしているのを聞かされれば、大きなショックを受けるに決まっていた。
 私だって優希君と冬美さんが口付けをしたって聞かされただけで、もうずっと残ってしまうくらいの傷が心に付いたのだから、気付けなかった私はやっぱり浮かれすぎていたのかもしれない。これじゃ冬美さんの友達失格だ。ひょっとして優希君は冬美さんの気持ちが人より深い場所で理解出来ているから、冬美さんの気持ちに気が付いた上で私が唇を巻き入れても、舌で湿らせても口付けをしてくれなかったのかもしれない。
 そう考えると私以外の女の子にそこまで優しく出来てしまう優希君にやっぱり嫉妬が生まれてしまうけれど、
「……咲夜さん。私の友達が悪いって言って涙させたんだから、後で説教ね。それから冬美さんも。これ以降私は優希君の頬にした口付けに関しては悪いだなんて全く思わないから『?!?!』自分を責めるような事も、たとえ私の友達から何を言われても気にはしなくて良いよ。優希君が“大好き”なんでしょ? そしたらここだと目立つし、いつもの場所でお昼にしよっか」
 私自身が友達を傷つけていたのなら、たとえ自分に嘘を付いて悪者になったとしても、それが偽善者だと言われても、やっぱり冬美さんに対する気持ちは整理しないといけないと思う。
 現に私はこのまっすぐで頭の固い後輩を本当に気に入っているのだから。やっぱり余分には傷ついて欲しくない。
「どうしてそこまでワタシを……」
 とにかく冬美さんの涙をみんなに晒す訳にも行かないから、少し冬美さんを励ます意味も含めて人気のない所で話をしようと場所を変える。


「えっと。何で二人も付いて来るの?」
 いくら大っぴらに話す内容じゃ無いとは言え、私用でいつも役員室を使うのに抵抗を感じたから、今日はいつものグラウンド横にある四人掛けのテーブルに向かおうと、元気を失くしたままの冬美さんと共に昇降口まで移動したにもかかわらず、気まずそうに黙って私たちの後をついて来た実祝さんと咲夜さん。
「何でって……知らなかったとは言っても愛美さんの友達を悪く言ったのを謝りたかったのと、あたし自身も空木君には色仕掛けをしたんだから、雪野さんが悪いなんて思ってないのを伝えたかったから。それに愛美さんの説教は本当に堪えるからその前に許して欲しいの」
 さっきまでの浮ついた雰囲気を、いつの間にか全て消している咲夜さん。
「ん。愛美と咲夜には仲良くして欲しい。もうこれ以上の喧嘩はあたしも見たくない。万一そんな事になったら、今度こそあの教室は駄目になるし、あの送り狼も駄目になる気がする」
 私は冬美さんと込み入った話もしたかったのだけれど、私と咲夜さんの仲を願っている実祝さんからの補足説明。確かに長い間二人とは喧嘩をしたり、行き違いをしていたから、私の方の状況を伝え切れていなかった部分も大きい。
 それに一番近くで応援すると決めた先生もそうだし、私の友達想いを理解してくれている二人からの気持ちを考えると、私も頑なな態度で再び二人と喧嘩をするなんて間違っても望んでいない。それにお姉さんにしてもお母さんにしても優希君にしても。
 私が友達としていたケンカの仲直りを心から喜んでくれたのだから、私も気持ちを落ち着けようと一度深呼吸をする。
「冬美さんどうする? 二人で話する? それとも私の友達が一緒でも大丈夫?」
 だけれど私一人では決められない。私の友達の意見、考え、気持ちをしっかりと聞いてからだ。
「ワタシはどちらでも構いません。ワタシを責めたければワタシが空木先輩にしたのは事実なんですから――」
「――本当に違うの。そんなつもりじゃなかったの。ごめんなさい。その証拠にさっきも――」 
「――辞めて下さい。事実無根の話じゃないんですから、先輩が後輩に謝るなんて事しないで下さい」
 確かに冬美さんのこの辺りのけじめと言うか、礼儀に関してはきっちりしていたはずだ。
「それは違う。愛美の友達なら自分が間違ってたら先輩後輩関係無く謝る。頭を下げる。そうでないと愛美は納得しないし、愛美と友達出来ない」
「それにあたしもフラれはしたけど、空木君が好きで愛美さんが空木君と付き合ってるのを知った上で告白もしたの『なっ!』もちろんこの話も愛美さんには全部話してる。だから本当に雪野さんが悪いとか責める気持ちなんて全く持ってないのだけは分かって貰いたいの」
 その中身は優希君や蒼ちゃんから聞いただけで、咲夜さん本人から聞いたわけじゃない。優希君に対して色仕掛けをした咲夜さんに気持ち悪くなるほどの嫉妬を覚えるけれど、逆に今の咲夜さんの言葉で本当に冬美さんに対して責める気持ちは無いんだって言うのは理解出来る。
 ただいくら何でも、こんな他の生徒の往来が激しい場所でする話じゃないからと、急ぎ場所を移動する。


「……改めてお伺いしますけど、岡本さんはもう空木先輩と……キス……はされたんですか?」
「……げほっげほっ!」
 仕切り直しのために冬美さんに落ち込んでいる理由を訪ねようとしたら、それ以上にまっすぐ過激に聞いて来る冬美さんに、せっかく今日もお母さんが作ってくれたお弁当なのに、思わずむせてしまう。
 確かにまだ目に涙を浮かべている冬美さんだから、それが理由で落ち込んでいるのは分かったけれど、もう少しこう、聞き方とか言い方とかないものか。
「今、恥ずかしがった愛美さんを見ても分かると思うけど、二人はもう何回もキスはしてるよ。しかもお互いが本気で求め合うような激しいキス。二人の間にはもう誰も入れないくらい隙間の無いくらいの、お互いを想っているのが端から見ても分かる程情熱的なキス。正直空木君から断られた時よりも、目の前でアレを見せつけられた時は本当に辛かったよ」
 あの咲夜さんが逃げ出した放課後の教室でした優希君との口付けを思い出したのか、咲夜さんの声音が変わる。
「咲夜……あの時も言ったけど、副会長の愛美への気持ちはそれだけ本気の証拠。逆に遊び半分で咲夜とも付き合って平気? それで咲夜も喜べるくらい咲夜の恋愛は遊び? 副会長はそれだけ誠意を持って咲夜を断った。だからこそあたしの中ではあの副会長は良い男になってる」
 優希君が遊び半分で浮気なんて、あの優珠希ちゃんの態度を見てもあり得ないのは分かるけれど、私たちの想いと関係。
 それを蒼ちゃんからも聞いているだろうからと、ここは耳を傾けておくだけにする。
「違う! あたしは愛美さんに向ける優しさをほんの少しで良いからあたしに向けて欲しかった。遊びの気持ちなんて持ってなかった」
「咲夜の気持ちは、ほんの少しで満足できた? その程度の気持ちだったらやっぱり――」
「――それも違う! ほんの少しで満足できなくってた。もっとあたしにも優しく接して欲しいと思うようなってしまってた。いつの間にかあたしは空木君に本気だった。でもあたしは嫉妬や妬みから友達の関係を壊すのはもう卒業したの。誓ったのっ!」
「……ひょっとして以前岡本さんが仰ってました“会長に協力してたご友人”って貴女ですか?」
 咲夜さんの一言に驚きの表情へと変え、一本の線へと繋げてしまう。本当に冬美さんって、優希君の言う通り地頭は良いんだなって分かる。
「……うん。そうなんだ。しかもあたしの場合はもっと最低で、あの時はまだ空木君を好きまでではなかったのに……本当の友達である愛美さんが、ところかまわず男子からの人気を集めてた上に、女子からも大人気のあの麗しの副会長と付き合えてる嫉妬からだったんだよ……しかも友達

人たちグルになって」
 あの保健室内で耳にした咲夜さんの涙ながらの嗚咽ながらの独白。その話をする時、今尚声色を変えて口を開く咲夜さん。
 その俯けた表情を見ていると、本当に悔いてくれているのが分かる。
「……ワタシはあの会長と共にお二人の仲を何とか壊して、空木先輩との既成事実を作った隙に、傷心の岡本さんを会長が癒す手はずだったんです……今思えば酷く歪んだ協力関係を敷いてたんです」
 冬美さんの説明を聞いて、金曜日の統括会の際の二人の会話の意味を、恐らくは正確に把握する。
 つまり、私たちの傷心の隙、弱っている心の隙を突いて私を彼女にでも、あるいは優希君を冬美さんの彼氏にでもするつもりだったのだと理解出来る。今の冬美さんの説明と女子トイレまで私を追いかけてきたあの人の行動を思い返せば全て符合する……してしまう。
「……何度聞いても。人の弱さ、好きな女子の傷心に付け込もうとするなんて、男として、人として最低。男なら副会長みたいに堂々とするべき」
 本当に実祝さんの言う通りだ。いくら好きだからって、どんな手段を用いても私が欲しいからって、意図して弱った心を狙うなんてさすがに論外だし、そんなに簡単に私が他の男の人に惹かれる、なびくと思われているのも本当に不愉快極まりない。
 私はそんなに四六時中男の人ばかりなんて考えていないし、どんな事をしてでも好きだって気持ちはあっても、好きな人を傷つけるなんてのは全く別の話だと思う。
 それに私は、今までに何度も何度も優希君が“大好き”だって、優希君の彼女だって言って親友である蒼ちゃんや、今目の前にいる実祝さんの前でも断って来たのだ。
「……あたしも自分の過ちに、卑怯な自分に気付いて、結局本気で好きになった人や本当の友達の傷つく姿なんて見てられなくて、正直怒鳴られながらも……脅されながらも断り切って会長のとの協力関係を解消したの」
「……脅されたなんて初耳。それ、どう言う事?」
 実祝さんすらも初耳の、更に驚きの話。本当に私の友達になんて事をしてくれたのか。もう怒りも嫌いも突き抜けて悲しくなる。
「……その後で“カッとなって言い過ぎた。だから無かった事にして欲しい。それくらい愛美さんが好きなんだ。だからもう一回空木から盗り返して彼女にするために協力して欲しい”って言われたから黙ってたんだけど……」
「……もったいぶらずに早く言う。そして愛美の中の会長の印象を明日告白なんて聞く必要無いって思わせる」
 酷く言い淀む咲夜さんに、少しずつ目的が変わりつつある実祝さんの催促。もうその先を聞かなくても完全に私を諦めてもらうだけの儀式に近いから、本来なら聞く必要も受け入れる気持ちも全く無いのだけれど、これは優希君・朱先輩・お母さんと三人の答えが一致しているのだから、曲げるつもりは無い。
「そうです。大体ワタシ

の気も知らずに空木先輩とお付き合いをされてるにもかかわらず、他の男性の告白を伺うなんて常識外れな岡本さんに考え直して頂かないといけないんです」
 ……あれ。ひょっとして二人の目的はいつの間にか一致しているのかな。それとも私だけがずれているのかな……でも朱先輩を始め三人共が同じ答えだし……
「……あたしが愛美さんの代わりになれるのか。あの思慮深い考え方、どんな願いでも聞いてくれる優しさ、そこらにはいない女性としての奥ゆかしさ、それら全て愛美さんの代わりを務められるのか。会長とのデートも含めて俺を本気にさせた責任をあたし自身が取れんのかって……言われたの」
 理沙さんが男の人に対して雑言ばかりを並べ立てる意味が分かった気がする。
 電話口にも関わらず蒼ちゃんに怒鳴った時もそうだったけれど、言われた女の子側としては後日謝ってもらったからと言って終わる話じゃないし、以前咲夜さんには説明しておいたけれど私に対しては去年から気があったんじゃないのか。
 だから咲夜さん相手に、一度もあんな人の彼女になった記憶も無いのに恥ずかしげもなく“盗り返す”なんて言えたんじゃないのか……大変不本意ながら。
 なのに何を勝手に私の友達に私の代わりをさせようとしているのか。要するに私以外の女の子でも誰でも良いって事なんじゃないのか。
 しかもここでもついて来る私とのデート。結局あの人の中では統括会は理由や口実の一つでしかなくて、“私自身”が目的なんじゃないのか。そりゃ教頭先生が呆れるのも、私に探りを入れたくなるのも分からない話ではなくなってしまう。
 本当にどっちも大変不本意だけれど。
「酷い。酷すぎる。咲夜は咲夜だし他の誰でもない。咲夜には咲夜の良い所がたくさんあるのに……酷い。それに、愛美の代わりが他の人に務まると思ってるのも酷い。愛美もまた愛美なのに……もう何て言ったら良いのか分からない。謝って済む問題でも気分を害したからとか言う次元じゃない――愛美。それでも会長の告白。聞く?」
 私が答えないのを気持ちが変わっていないと取ったのか、咲夜さんの腕を抱き込んだ実祝さんが大きくため息をついた後、
「……ワタシはもっと単純ではありますが、あの会長が協力し合っていてお互いの目的、懸想してる方への恋の成就、想い人への[成恋(せいれん)]だったはずなのに、よりにもよって空木先輩に暴力を振るってたんです。『っ?!?!』――ワタシは正直空木先輩と二人きりのお時間をご用意頂けるとか、岡本さんにとって不都合な話――例えば二枚舌――などを伝えて頂き、空木先輩の中の岡本さんへの印象を落として頂けるのを期待してたんですが――実際は負傷した空木先輩の手当てをワタシが行って、空木先輩の気を惹くと言うのが会長の思い描いた協力だったみたいなんです」
 この冬美さんは、雪野さん時代から私に対して何て失礼な“妄想”をしてくれていたのか。
 さすがに冬美さんがこんな狡猾な考え方をしているとは気付かなかった。あんな若いだけの張りぼて後輩女子である可愛すぎる狡猾女子、八幡さんとは違って冬美さんは本当に警戒しないといけない女の子だと再々認識をする。
「――フタを開ければ、ワタシが懸想する空木先輩への雑言と暴力。それに統括会での空木先輩外しに岡本さんのノロケ話。
 こんなのはとてもじゃありませんが協力関係とは言えませんでしたので、解消させて頂きました。それなのに岡本さんはワタシは悪くない。本当に好きだったら、人に協力してもらうのはあるって仰って頂いたんです。そこまでワタシにも優しさを見せて頂けた岡本さんに対して、卑怯な手段を取ってたワタシ自身にも恥ずかしくなったんです。
 だから今度こそ正々堂々と岡本さんから空木先輩を盗り返す意味でも、まかり間違ってワタシが逆転不戦勝なんて納得出来ないので、今回のような会長からの告白をお受けするのは反対なんです」
 逆転とか不戦勝とか、さっきまでのあの落ち込みと涙声はどこへ消えてしまったのか。私と優希君が何度も口付けをしているのを知ってショックを受けていた可愛い冬美さんはどこへ行ってしまったのか。
 それに冬美さん的には絶対あり得ないけれど不戦勝の方が……いやでも正々堂々とも言っていたのか。
 そう考えるとやっぱり頭の固い冬美さんらしくまっすぐな性格を――
「――つまり副会長を好きな二人共、愛美が会長から告白を聞くのは反対と」
「……」
 ――あれ。そっちの話になるのか。と言うか、確認した実祝さんも首を縦に振ると言う事は結局みんな同じ意見なのか。
「もう一回言っておくと、あたしは今度こそ大切な友達の力になりたいの。同じ間違いはしたくないの! もう二度と友達の不幸を目にしたくないのっ!」
「……」
「その言葉を聞けて良かった。咲夜自身がそう言えるって事はちゃんと咲夜自身前に進めてる『……』じゃあもう一つ。
 あの日愛美にしたキスを目にして、副会長は愛美を裏切って他の女子の誘いに乗る?」
「そんなのあり得ないし考えたくない――」
「いくら岡本さんのご友人だからと言って、ワタシの懸想する殿方を悪く仰るのは辞めて下さい」
 一つずつ咲夜さんの恋情を紐解いて、落ち着かせていた実祝さんに二人からの反論。だけれど当の実祝さんはさして驚く素振りも見せずに満足そうにうなずく。
「……そう。つまり副会長は愛美を大切にしてるし、大切にしてるからこそ愛美の友達に対しても誠意を持って丁寧に断ってる。だから愛美の友達は特に大切に扱った上で“遊び”なんて中途半端な行動は取らずにしっかりと断ってくれた」
 気付けばあまり喋るのが得意ではない、おしゃべり好きの実祝さんが一つずつゆっくりと話を進めて行く。
「最後にもう一回確認。そんな副会長と愛美の間に咲夜は入り込みたい? 二人のお互いに想いやる姿を幾度となく見て来た上で愛美を泣かせてまで、こんなにも優しい友達を不幸にしてまで、咲夜は副会長と付き合いたい? その上で愛美よりも副会長を好きだ、好きで居続けて付き合いたいって言い切れる?」
 もちろん私は誰よりも優希君が“大好き”だし、ましてや別れるだなんて考えたくもない。
 だから誰が相手でも負けるつまりなんて無い。なんなら優希君にバレない様に相手には引いてもらうつもりまではしている……主にあんな若いだけの優希君を何も分かっていない可愛い狡猾女でもある後輩の八幡さんには。
「……さっきも言ったけどあたしには自分の友達を不幸にするつもりなんて無い! 無いけど……」
 それでも咲夜さんは私を見ながら、やっぱり優希君への想いをまだ消化しきれていないからか言葉を詰まらせる。
「大丈夫。咲夜は可愛い。だから

恋は、あたしもしっかり応援する」
 何度も実祝さんが口にした優希君から私への想いの強さ。私から優希君に対する想いの深さ。実祝さんがどうやって咲夜さんの気持ちを整理していっているのか、その片鱗を伺う。

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