第十八章 魔王の歓喜

文字数 316文字

「ククッ……」

 魔王は知らず知らずの内に不敵に笑んだ。
 彼の中に一抹の喜びが溢れているのを隠しきれなかった。
 だが、彼は臣下の前ではそれを隠さなくてはならない。
 彼は心の中で喝采した。

 まだいたのか。聖なる指環に相応しい器が。かすかではあるが、この不埒な天使から聖なる指環の気配を感じる。
 聖なる指環の全容は掴めないが、指環は独りだけを選ぶのではないのか。あるいは大天使長が中心となってこの苦しみの環から抜け出す術を知りうるのだとすれば。

 流石だ、そう魔王は褒めたたえた。己が生涯を通じて希求した聖なる指環。その全容を掴ませぬというのか。どれ程、多くの経綸を持とうとも神の教えは究めがたいという事実。

 それが魔王を震撼せしめる事実。
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