第十七章 英傑は神の国の為に立ち上がり

文字数 418文字

「異議あり!」

 突如として響いた声を以てして魔軍の叫びが沈黙する。

「副熾天長アブディエル」

 まだいるというのか? この邪な時代に正義を行おうとする者が?

「大天使長ルシフェル様! あなた様は決定的に間違えていらっしゃる! 神なる方をさしおき自身が神になろうなどとは愚問!」

「力は正義なり。正義なき力は傲慢であり、力なき正義は無力である。力と正義は常に一つでなければならぬ。されば、その様なことを成し得るのは神において他ならぬ。故に余は神の代行としてではなく今まさに神自身となる定めを己に科せり」

 副熾天使長は若く憤りを隠さず宣言する。

「あなた様は神に非ず! その様な傲慢を垂れ流すとは何という不義の輩か! 私は間違っていた! あなたは君主の器に非ず! あなたの弟君こそ王太子に相応しい器である!」

 血気盛んな天使は剣を取り出し、魔王の額に一撃を放つ。正に電光石火に一撃であった。
 その雷鳴にも等しい一撃は魔王を十歩引かせ、魔軍を轟かせた。
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