第三章 大天使長ルシフェルの預言

文字数 614文字

 天使らの振る舞いは神を神とも思わぬ専制振りが目立ち始めた。

 聖指環、この時は未だ顕現せず。されど未来に産まれる脅威に備えて時は沈黙と共に動く。
 天国に新しい概念が産まれようとしていた。

 神学と哲学である。弁理法を用いて神に近づこうとする動きがみられていた。されど、その方法には限界があった。被造物に限界があることの証明でもあった。信仰と思考で神を捉えようとする動きは画期的であったが、同時に被造物の限界を知らしめるものであった。ルシフェルの知己であったラジエルなる賢老がいた。彼は大天使長の許を訪れ、問いただした。

「友よ、何故あなたはそうまでして神を求めるのか? 神なら既に我々の許に顕現なされているではないか? 何がそこまであなたを掻き立てる? あの日、闇を討伐した日に何があった?」

「余は暗き未来を知った。故に備える必要がある。いつの日か余自身が絶望する前に。友よ、約束を。あの子を頼む。我が弟を。余が忘恩の徒になる前にあなたにあの子の後見人となって欲しい」

「その理由は如何に?」

「聖指環があの子に微笑むであろう」

「聖指環?」

「いつの日か判るであろう。耳のある者はしかと聴け。目のある者はしかと視よ。いつの日か余は枯れるであろう。大木が倒れ去る様に。しかし、あなた達には希望がある。切り倒された大木から一つの芽が出でる。天使達はその者に希望を託すであろう」

 これはルシフェルの言葉ではなく、神が彼を通して預言したのである。
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