第十四章 英傑ら、別れを告ぐ

文字数 489文字

 刹那の祈りの後、彼女は幻から醒めた。

 主の大いなる日が近づこうとしている。その日に何が起きるのか子も知らない。父なる方のみが全てをご存じであるからだ。

 力の源が具現化する。

 少年が天使の長の両の手に抱きかかえられていた。

「畏れるな、狼狽えるな、あなたの神である主が共にいることをおぼえよ。主に不可能なことはない。なぜ驚くのか。この子の力を畏れるのか? であれば、何故あなたは主の力を畏れないのか? 偶像を拝するのを已めよ。この子の価値は主のみが測られる。それは銀の坩堝。金より高貴で純真無垢な魂」

 天使の長は賢老に歩み寄り、弟を渡した。

 弟は必死に駆け寄ろうとした。

 兄は言葉で強く停める。

「来てはならない。それが聖なる指環の運命なのだ」

 兄が去ろうとする刹那、天上の英傑らが現れり。次なる天使の長へ別れの言葉を告げに。

 知恵の女王は語る。

「いつまでも健やかに」

 無意味を意味する王が語る。

「神の善き旅を楽しめ」

 蝿の王は哀しそうな笑みを浮かべ語る。

「その様に泣かれては困りますよ。私達も悪の道を歩む決心が鈍りますから」

 諸王と従え、かつての天使の長は魔王として去ろうとする。
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