第15話 死闘再び

文字数 2,290文字

「先程の映像は夕方のニュースの話題のコーナーで放送されるらしい。時間は6時台だそうだ」
 そう神城が言うと英梨は
「じゃあ、それまで暇ですよね。新世界にでも行って何か美味しいものでも食べましょうよ」
 そんな事を言って神城に甘えて食い下がる。
「新世界?  なんでまた……」
「そこが美味しいもの沢山あるそうなんです」
「新世界って確か……串かつが有名だっけ?」
 神城が言うと英梨は興奮状態になって
「そうです!美味しいんですよ串かつ。いきましょう~よ。ねえ!」
 そう言って増々甘えて来る。
「仕方無いな、夕方までは特に用も無いしね」
 神城が折れると英梨の喜びはすさまじいものがあった。子犬が喜ぶと言うのはこのような状態を言うのかと鈴和は思った。そしてつぶやく様に
「私は行かない。部屋で休んでる。昨夜ずっと能力使っていたから、休んでおくわ。だから英梨私の分も食べて来て」
 鈴和はそう言ってロビーのソファに体を沈めた。心なし顔色も良くない様だ。
「鈴和さん……そんなに疲れていたんですか?  私知りませんでした。すいません……」
 英梨がそう言って詫びると鈴和は
「何で英梨が謝るの。それに神城先輩となら、私が行かない方が良いでしょう。いいのよ。
夕方迄休んでいれば元に戻るから」
 そう言って笑っている。
「すいません。じゃあお言葉に甘えます」
「そ言う事なら、僕達二人で行ってくるから、ちゃんと休んでるんだよ!」
 神城もそう言って、二人は新世界へと行ってしまった。
 二人の気が全く感じ無くなると鈴和はホテルを出て、駅とは反対の方向へ歩いて行く。そして人気の無い公園に来ると
「もうそろそろ姿を表したらどうなの、サツキ!」
 鈴和はかってヒロポン事件で死闘を繰り広げた相手の名を呼んだ。すると公園の木の影から、かっての異世界から来た能力者サツキが姿を表した
「やはり判っていたのかい、それで関係無い人物を逃したのか……まあいい、残りはお前を殺した後にゆっくりとやらして貰うから」
 そう言って黒ずくめの姿を表した。
「お前にやられて関西に移動になって、当分復讐の機会は無いかと思っていたんだけどね。こりゃ神様が機会を与えてくだすったと思って、この際死んで貰うから」
 そう言うと両手に気の円盤状の形をつくり、物凄い勢いで回転させ始めた。
「この気の円盤を見たかい。これでお前の頭を切り刻んでやる」
 回転させていた円盤を鈴和に向かって投げつける。音も無く物凄い勢いで回転して来た円盤は避けた鈴和の脇をかすめて、後ろの木を傷つけ、Uターンして戻って来る。どうやら、完全に制御出来る様になったみたいだ。
「不味いな」
 鈴和は短くつぶやくと、なるべくサツキの目標にならない様に移動して行く。
「くそ!あいつ能力上がってるじゃん! まずいよ」
 そうつぶやきながら鈴和はサツキ目掛けて気の弾を数発投げつける。サツキはそれらを全て円盤で砕いて行く
「もうそんなへなちょこな弾は通用しないからね。今度こそ死んで貰うよ」
 そう言ったかと思うと今度は両方の手で廻っていた円盤を同時に投げつけた。一枚をかわした時、もう一枚がその避けて行った方にやって来る。それもかわした積りだったが、かわしきれずに風で膨らんだブラウスの端をきって行く。体は何とか大丈夫だったと思った瞬間にもう一枚が脇腹をかすめて行く
「痛!」
 脇腹を抑えると痛みを感じる。どうやら、気で一応体を覆ってるので直接の傷は無いものの、体の内側にダメージを貰ってしまった様だ。きっとアザになってると思う。
「くそ! どうするかなぁ、昨日能力使って疲れてるから、不利だよね。きっと今までこのチャンスを狙っていたんだろうな」
 そう言って、サツキからは直接見えない公園のモニュメントの影に身を隠して様子を見る。段々と脇腹が痛くなって来る。
「不味いな、早く決着つけなくちゃ」
 鈴和は気を刀の形にして構える。この刀でサツキの円盤を切り刻む積りだ。硬く作られた方が相手を負かす事が出来る。鈴和は気を充実させ、作り上げた刀を硬くしていく。そして、モニュメントから飛び出しサツキに向かっていく。体力が無い今、長期戦は不利と考えて、一気に勝負に出たのだ。
「ふん!来たね。切り刻んでやるよ」
 そう言ってサツキは二枚の円盤を時間差で投げつけて来る。鈴和はまず、最初の一枚を「エイッ!」と気合もろとも真っ二つにする。その瞬間に円盤は消えて無くなる。そして、遅れて襲って来た二枚目に切り込むと切り込んだ感覚があった瞬間に刀も円盤も同時に消えて無くなった。”おあいこ”になったのだ。
 鈴和がほっとした瞬間、サツキの気の紐が飛んで来て鈴和の両足に巻き付く。もんどり打って倒れる鈴和
「ふん、疲れているあんたの気はあの刀でもう終わりだろう。だが、あたしは違う。未だ未だお前を殺す気はたっぷりとあるからな」
 そう言うと今度はサツキが気で刀を出して、鈴和に見せる。
「これで、一気に殺す!」
 鈴和目掛けて突き刺す!鈴和は身を避けて僅かにかわす。
「ほう、かわしたか、じゃあ今度はあの世に送ってやるよ」
 鈴和は、この時覚悟をした。気で動きを制限されているので、テレポートも出来ない。サツキがその気になれば、自分の動きも止める事が出来るのだ。
「お父さん、お母さん、御免なさい!  康子元気でね!」
 心の中で想い覚悟をする。
「ふん、大人なしくなったかい、じゃあ楽にさせてやるよ」
 そう言ったかと思うと気の刀を鈴和目掛けて振り下ろした。
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