第23話 西高での戦い

文字数 2,896文字

 翌日からは、西高に近いサツキのアパートで着替える事にした。昨日の帰りに鈴和が
「いちいちウチで着替えるの面倒臭い!」
 そんな事を言い出したので、サツキが
「じゃあ、私の部屋で着替える?」
 そんな提案をしたので、美樹も康子もサツキの部屋に行ってみたくて
「それがいい!」
 と決まってしまったのだ。
 サツキの部屋は西高から歩いても五分ほどであり、住宅街の真ん中にあった。アポートの前に立った鈴和は、もう陽も暮れているのにもかかわらず
「いい場所じゃない! 寄り道したくなる様な場所だわ」
 そう言って気に入った様だった。康子は
『寄り道したくなる様な場所って……』
 と突っ込もうと思ったが止めた。どうせ鈴和の事だ理由なんか無いに決まってる。感覚の人だからな!  そう康子は思うのだった。
 サツキの部屋は二階で、六畳と四畳半にキッチンとバス・トイレ付きだった。中に入り周りを見て美樹は
「中々オシャレな感じでいいわねえ! 今度泊まりに来ていい? 彼氏が来ない時」
 そう言って笑ってる。サツキは
「彼氏なんかいないから何時でも歓迎よ」
 言いながら、コーラを出して皆に配った。そして翌日の事を相談したのだった。
 そして翌日、鈴和は康子を抱いて、サツキは美樹を抱いて、一旦サツキの部屋にテレポートして着替えてそこから歩く事にした。
 西高の前で、例の女生徒が消えた場所を検分した。鈴和は霊視したが、特には何も無かった。
学内に入り、鈴和、康子とサツキ美樹のコンビに分かれて、鈴和達は「現代経済研究会」の部長を、サツキ達は顧問の先生を見張る事にした。お互いテレパシーで連絡をとりあう事を確認する。
 ここで、読まれている方の為に、登場人物を改めて紹介すると共に、鈴和とサツキの能力の紹介もしようと思います。なんたって書いてる本人が混乱するかも知れませんのでね……。

・上郷鈴和(かみごうれいか)……この話の主人公で、組織のボス達也の長女。能力は、霊感、気を操る事、異世界への移動、テレパシー、テレポート、だが能力にムラがあり、安定して発揮できない。
百六十二センチ四十九㌔(推定)大のパフェ好き!

・田中康子(たなかやすこ)……鈴和の幼なじみで親友、普通の人間だが、組織の事も鈴和の事も全て理解している。実は神城先輩が好き。百五十八センチ五十㌔(推定)

・井上美樹(いのうえみき)……鈴和、康子の同じ中学出身で当時から仲良し。今は大人しい感じだが、中学時代は暴走族だった。本気で切れると素地が出る。百六十センチ四十五㌔(推定)

・浅野サツキ(あさのさつき)……「ヒロポン事件」では敵方の能力者だったが、改心して今は鈴和の仲間となる。能力は高く安定しており、行動力もあり。能力は、気を操る事、異世界への移動、テレパシー、テレポート等百六十二センチ四十八㌔(推定)

となっています。

 美樹とサツキは職員室の前で顧問の教師が出て来るのを待っていた。暫くすると、顧問が出てきたので、二人で後をつける。サツキが見ると美樹も中々胴に入っており、中々だと思った。暫く歩くと職員用のトイレに入ったので美樹は
「なんだトイレか!」
 そう言って気を抜いて笑ってしまった。自分が何だか探偵にでもなった気分でいる事に気がついたからだ。
「ばかみたい!」
 自分でも可笑しくて笑ってしまった。暫く待っていても出て来ないので、サツキが
「あたし、中見て来る」
「大丈夫?」
 そう心配する美樹に
「大丈夫だって、中を覗いて来るだけだから」
 そう言い残してテレポートで消えた。それを見送って美樹はぼんやりと校舎の窓から校庭を見ていた。放課後の学校はどこも同じ様なもので、自分の学校と変わらないな、と美樹は思っていた。その時だった、いきなり後ろから羽交い締めにされた。
「おい、お前らこの学校の生徒じゃ無いだろう!」
 その人物は間違い無く今まで見張っていて、トイレに消えたハズの顧問の先生だった。だが、美樹はその声を聴いて同じ声でも
『違う!こいつは姿形は顧問の先生だが違う誰かだ』
 と思った。理由は無い、只美樹の本能がそう告げていた。
「あたしを随分舐めてくれたわね」
 その瞬間に美樹はかっての暴走族だった頃に戻っていた。羽交い絞めしている腕に食いつき思い切り噛んだ。
「いててて!」
 と叫んで、顧問は美樹を放す。美樹は急いで体を反転して顧問と相対する姿勢を採る。そして、自分のスカートの中に手を入れて、太腿に括りつけてあったジャックナイフを取り出した。
「こう見えてもね、この前までは毎日こんな事やっていたんだよ」
 そう言った美樹はもう普段の美樹では無かった。顧問は気を操り、美樹を金縛りにしようとする。
 美樹は喧嘩馴れしているので、何かは判らないが、相手が何かを仕掛けて来そうな感じを掴み、手に持っているナイフを顧問目掛けて投げつけた。顧問はまさかナイフを投げて来るとは思わなかったので、対応が一瞬遅れた。気がつくともう眼前にナイフが迫っていた。思わず素手でナイフをはたき落としたのだが、手の甲に傷を負ってしまった。
「クッ!」
 気がつくと傷口から血が滴り落ちている。
「くそ!いまいましい小娘だ」
 そう言ってハンカチで傷口を抑えると美樹に気を送って来た。
 サツキはトイレの一室に顧問が入ったまま出て来ないので物陰から様子を伺っていた。その時に表で物音がしたのでトイレの外に出てみると、顧問が左手の甲から血を流しており、足元にはナイフが転がっている。美樹は、今までで見たことも無い厳しい形相で顧問と相対していた。
「美樹!」
 サツキの大きな声で顧問は
「チッ!邪魔が入ったか。また今度だな」
 そう言い残すとテレポートで消えて行ってしまった。
「美樹!大丈夫!」
 サツキは慌てて美樹の元に駆け寄った。
「大丈夫だよ私は、それより顧問の奴、能力者だった」
「うん、そうだったね。鈴和に言わないとね。でも美樹凄いね。とても普段の美樹とは思えない感じだった」
 そう言って驚くサツキに美樹は
「そうか、サツキは知らなかったか、私、この前まで『族』だったんだ。だから喧嘩慣れしてるの」
 美樹はそう言って笑っていたが、サツキは
「でも、能力者相手だと勝手が違うから、危なかったよ」
 言いながら、美樹に怪我が無いかもう一度確認する。
「大丈夫だよ。サツキが傍に居てくれると判っていたからね」
「無茶しちゃ駄目だよ」
「判った」
 美樹はナイフを拾い元の場所に収めるとサツキが
「凄い場所に仕舞ってあるのね」
 感心をすると美樹は
「映画なんかの定番よここは」
 そう言って笑った。
「それより、レイとヤスも心配だわ」
 その美樹の言葉にサツキも
「一旦合流しましょう」
 そう言って、二人は「現代経済研」の部室に急いだ。
 その二人を、影から見つめ
「煩そうな奴らが介入して来たものだな。上に報告をして、連絡を待つか……」
そう言って何処かへ消えて行った。左手を抑えながら……。
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