第25話 異世界の能力

エピソード文字数 3,229文字

 サツキは鈴和と神城の会話には何か自分には判らないモノがあると感じたのだが、鈴和には兎も角、神城には詳しく訊く気になれないのだった。
 というのも、神城はなんとなくこの世界の生まれでは無いとサツキも感じていたからだ。同じ異世界生まれのサツキにはその辺が良く判るのだった。
 ぽかんとしている美樹と康子に神城は
「僕と鈴和ちゃんの話の意味が知りたいかい?」
 そう訊くと、ふたりとも
「ききた~い!」
 と乗り気だ。サツキも神城に振られたので、乗りで頷く。
「じゃあ、このあと僕の家に来てくれるかな?  流石にここでは言えない事だから」
そう言われ、五人は神城の家に行く事になった。
 サツキは神城の家に行くのが初めてだったので、実は楽しみなのだ。曰く鈴和からは「お金持ちの家」とか言われていて、実家があまり裕福でないサツキはそう言うものに憧れがあったからだ。実はサツキの部屋の家賃は組織が持っていてくれているし、生活費等は組織から月給という形で貰っている。そう多くは無いが今のサツキにとっては充分な額だ。元の世界では貧しさから前の組織入ったサツキだったが、今では手が切れて良かったと思っているのだ。だから、これから神城が言う事の内容では、自分の事にも関わって来るのでは無いかと思うのだった。そう、異世界という一点において……。
 神城家は結構古そうな洋館のお屋敷だった。門を入り、入り口を開け
「ただ今帰りました」
 と声を掛けると奥から岡さんが
「お帰りなさいませ」
 と顔をだす。そして斎藤さんも
「おかえりなさいませ」
 と出迎えてくれた。
「今日はお客さんを四人連れて来たので、お茶の用意をお願いします」
 そう神城が頼むとふたりとも
「かしこまりました」
 と言って軽く一礼をする。鈴和は何度も来ているので
「こんにちは岡さん、斎藤さん」
 と言って挨拶をする。二人から見れば鈴和は本家のお嬢様なのだ。
「これは鈴和様、ようこそいらっしゃいませ」
「また、迷惑をかけます。宜しくお願いします、私の友人なんです」
 そう鈴和が言うと岡さんは
「鈴和様のご学友ならわたし達にとっても大切なお客様です」
 そう言ってくれた。そのやりとりを見ていたサツキは
「ああ、やっぱり由緒正しい家柄の家は違うわね」
 と妙な感心をするのだった。
 皆、神城の部屋に案内されて、そこには来客用の椅子とテーブルが用意されていて、隣の部屋には恐らく神城が使うであろうベッドや机が見てとれた。
 康子は神城の家には来た事があるが部屋に案内されたのは初めてだった。そのせいか、あたりをキョロキョロと見回している。それを美樹に
「ヤス、ちょっと落ち着きなさいよ。みっともないわよ」
 そう窘められてしまった。
 岡さんが紅茶を五つ置いて下がって行くと神城はおもむろに話はじめた。
「まず、ここで僕自信の事をここに居る皆には、ちゃんと話しておこうと思う。それによって僕に対する見方が変わってしまう可能性もあるかも知れない。そこの処を良く判って欲しい」
 そう神城は言うと紅茶を一口飲んでから
「康子ちゃんと美樹ちゃん。特に康子ちゃんはショックを受けると思うから心して聴いて欲しいのだけど。実は僕はこの世界の人間じゃ無いんだ。そう、異世界と呼ばれる世界から時限の間に落ちてこの世界にやって来た処を、ボスとマザーの拾われ育てられ、途中からはこの神城家の人間として暮らして来たんだ」
 神城はそこまで言うと紅茶を一口飲んで様子を伺った。一番心配していた康子は特に表情も変えていなかった。それを見て神城は良かったと思ったのだが、実はそうでは無かった。余りの事に康子は唖然としたままだったのだ。更に神城は語る
「それだから僕の能力は、この世界の人は変わっているんだ」
 それを訊いてサツキは
「私も異世界から来ましたが、能力はこの世界と同じものでした。神城さんの世界は全く違うのですか?」
 そう神城に訊き返す。サツキにとって神城が異世界人というのは既に折り込み済みだから、特別驚く事には値しない。
 神城はサツキに言われた事について
「うん、僕の能力は『支配』と言うもので、自分のテニトリー内ならば全てをコントロールすることが出来るんだ」
 それを訊いてサツキは神城と戦った時の事が理解出来た。今では深くやり合わなくて良かったとさえ思っているのだ。
「じゃあ、さっき鈴和と言っていた『なりすまし』とか『変態』って?」
 サツキが訊くと神城は
「うん、だから僕の居た世界かあるいは近い世界の者ではないかと思っているんだ」
 それを訊いてサツキは納得出来るのだった。
「でも『変態』って要するに化ける事でしょう?」
 それまで黙っていた鈴和が口を開く
「そう、あるいは記憶まですっかり移植出来る『なりすまし』かいずれかだと思うんだよね」
 神城はそう言って自分の考えを披露した。
 鈴和は、あの時美樹が手の甲を傷つけたのは、能力者に間違いはない。その後に私達に声を掛けたのは本当の顧問だった。二人は別人物……年中入れ替わっていて良く記憶の辻褄が合うと思う。そう考えてる鈴和にサツキがテレパシーで
『私もそこが疑問なのよ。鈴和、霊魂が乗り移るって事は無いのかしら?』
サツキの問いに鈴和も、
「霊魂かあ~」
 と呟いた。
「ねえ、さっきから三人で何やってるの? 私と康子も仲間に入れてよ!」
 それまで黙っていた美樹がしびれを切らしたように口を開いた。
「ああ、御免、二人を蔑ろにするつもりじゃ無かったんだ」
 神城が謝るとそれまでぼおっとしていた康子が
「やっぱり、異世界人でも私の想いは変わりません!」
 そう言って神城を見つめるのだった。
「そこかよ!」
 思わず美樹はガクっと肩を落とした。
「ねえ、みんな、どういう能力や理屈だったら、顧問の事を説明がつくと思う」
 サツキが四人に問いかけると鈴和が
「霊能力で魂を眠らせて、その隙に乗り移るという事は私でも出来ると思うの。でも傷を直すのは別な能力なんだと思う」
 そう言って自分の見解を披露すると、サツキは
「あたしの、前の世界では数は少なかったけど、修復能力のある人は居たわ」
「修復能力って?」
 美樹がサツキに問いかける
「うん、文字通りの意味で、死ぬ様な怪我とか傷は無理だけど、命に別状が無い怪我や傷だったらすぐに傷や怪我を再生してしまう能力よ」
 それを訊いて神城は
「うん、それは『変態』に近い能力だね。それをもっと進めたのが『なりすまし』だね」
そう言って説明を始めた。
「『なりすまし』はね、姿形を見るだけでそっくりそのまま再現してしまうんだ。だから一時的に傷つけられても、最初の記憶した姿形を覚えているので、傷は瞬く間に直るんだ」
 それを訊いて今度は美樹が
「でも血を流していました」
 そう言うと神城は
「恐らく、時間的な余裕が無かったのでは、と思う」
 そう言って美樹の反論に答えたのだった。
「いずれにせよ、新しい異世界から何かの目的があって奴らは潜入して、証拠は無いが売春まがいの事まで行ってるとならば、見捨ててはおけない。僕も明日から潜入して捜査しよう」
 そう神城が言って、その日は解散となった。
 神城邸からの帰り道、鈴和は康子と二人連れだった。サツキと美樹は方向が同じなので一緒に帰って行ったのだ。
「ねえ、康子、神城先輩が異世界人と知ってショックだった?」
 そう鈴和が訊くと康子は笑って
「ううん、初めは驚いただけ。だって神城先輩は神城先輩に変わりが無いから……やっぱり素敵な人だし……」
「おおそうかい! それはご馳走さま」
 鈴和は笑って康子に言うと
「今度パフェ奢ってくれるなら、ノロケ沢山聴いてあげるわよ!」
 そう言って笑うのだった。
 だが、家に帰る二人を怪しい影が後をつけていた。
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