第10話 鈴和、阪急に驚く
文字数 2,350文字
鈴和は新幹線の中で汗を拭っていた。思ったより「味噌煮込み素麺」は難物だったのだ。一方、英梨は汗も大して掻かず涼しい顔をしている。
「やっぱり慣れてる奴には敵わない」
と思っていた。
「そう言えば情報は貰ってるわよね」
「あ、はい戴いています。鈴和さんの情報とすり合わせないといけませんね」
「そんな敬語なんて使わなくても良いよ。同じ歳なんだしさ」
「でもボスのお嬢様ですから……」
「そんなの関係無いから……ね!」
「わかりました。じゃあ普通の言葉で言います」
そんなやりとりがありやっと、まともに話す事が出来た。
お互いのスマホを取り出して本部から来た情報のすり合わせをする。
「現場の位置情報貰ってる?」
鈴和が聴くと英梨は
「伊丹シテイホテルのから西に8分ほど歩いた市立伊丹高校の傍だとか、一応貰ってますけど土地勘無いから……」
「そうだよね。私も無いもんGPSだけが頼りかな。もちろん住所は判ってるんだけどね」
「でもどうして、関西支部が動かないんですかね?」
「あ、それはね」
鈴和はこの前の「ヒロポン事件」を詳細に語って聴かせた。
「うわ~悪魔の様な奴ですね。で、鈴和さん狙われてるんですか?」
「う~ん。今はそう言う感じはしないけど、きっと手不足なのと東京に私を余り居させたく無いと思ってるだと思うの」
「やっぱり、ボスは鈴和さんを溺愛してますからねえ」
「ちょっと、やめてよ! ウチの父が溺愛なんて……」
「えへ!」
そう言って二人は笑って新大阪に向かって行った。
新大阪に着くと鈴和は英梨に
「乗り換えるんだけど、東海道線ね。それに乗って一つ目だから」
「でも面白いですよね。JRは『大阪』なのに同じ所にある私鉄や地下鉄は『梅田』なんて」
「そうねえ、なんでかね? あ、ここだ、この階段降りると東海道線のホームだよ」
二人はエスカレータを降りるとホームに降り立ち、英梨が
「来た電車は何でも乗って良いのですかねえ?」
そう訊いて来るので鈴和は
「この駅に止まっる電車はみんな大阪に止まると思うよ。名古屋だって大曽根に止まった電車は皆名古屋に止まるでしょう」
「そう言えばそうですね」
そう言いながら英梨はホームにある立ち食いのうどん屋さんを眺めている。
「ねえ鈴和さん、帰りは『きつねうどん』食べて帰りましょうよ」
「きつねうどん? そんなの東京でも名古屋でも食べれるでしょう?」
「違うんですよ。美味しいんですよ! ね!」
どうやら英梨は食道楽の毛があるようだと鈴和は思うのだった。
大阪駅に着いて地下道を阪急電車に乗る為に歩いて行く。地下街でサラリーマンがたかってる店があるので何か? と覗いたらなんと立ち飲みの店だった。
「凄い! 東京なら東京駅の地下街に立ち飲みの店がある様なものだわ。考えられない」
「いや~凄いですね。
二人で阪急電車のりばの案内の通りに進んで行く。きっと目立つのだろう、高校生の男子や大学生らしい男どもが二人を舐める様に見て行く。
それはそうだろう。一人は見てくれもスタイルも抜群の高校生。もう一人は百七十五センチありながらもこれも抜群の容姿の高校生だ。注目を集めるな、と言うのは無理だと思う。鈴和は気にしないが英梨は相当気になるらしい。
「なんかジロジロ見られてますよ」
「気にしない。皆畑の芋だと思えばいいよ」
鈴和のあっけらかんとした言い方に英梨は笑ってしまった。
やがて阪急の梅田の駅についた。伊丹までの切符を買って自動改札を抜けて、神戸線のホームに行く。
「はあ~私鉄なのに凄いですね。名鉄の名古屋駅は凄いですけど、ここのほうが大きいですね」
英梨が感心してると
「どれに乗ればいいんですかね」
と鈴和に訊いてきた。
「ほらこの路線図を見ればいいじゃ無い。まず塚口と言う駅まで行って、そこで伊丹線に乗り換えるのよ。塚口は特急以外は皆止まるから大抵のは大丈夫よ」
そう言って二人は準急に乗った。間もなく電車は動き出す。すぐに中津と言う駅に止まる。ここで隣のホームにも電車が止まっているのが見えた。やがて動き出すと、新淀川の鉄橋に差し掛かった。ここで二人とも驚いてしまった。
何と、自分の乗っている電車、それに隣の鉄橋を走っている電車。そしてその向こうにも同じ色の電車が並行して鉄橋を渡っている。その壮大さに我を忘れて見入ってしまった。
「凄い!阪急ってすごい! でも全部チョコレートに見えて着ちゃた。伊丹着いたらパフェ食べよう。ね英梨!」
英梨は突然の鈴和のパフェモードに戸惑うばかりだった。
二人は伊丹駅に着くと、伊丹シテイホテルのチェックインした。ここは宿として組織が予約を入れてくれていたのだ。部屋に入り、地元の組織の人物に連絡を入れるとすぐ行きます、との返事だった。その通り、荷物を開ける間も無く部屋のドアがノックされた。
開けると三十歳くらいの女性が立っていた。
「こんにちは、アルファと申します」
その女性はにこやかに自己紹介をした。ひと目見て能力者と判り、しかも組織の人間だと判ると二人はアルファを部屋に入れた。
「これから荷物を整理されたら、私が直接現場にご案内します。事情を説明したら、私は今担当しているヒロポン事件に戻ります。そちらの指令が片付いたら又ご連絡下さい」
アルファを名乗る女性は極めて事務的に説明をする。
「こちらでもヒロポンは広まっていますか?」
そう鈴和が聴くとアルファは
「それはもう、先日は大元の能力者とやり合いました。逃げられましたが……」
それを訊いて鈴和は
「忙しいところすいません。早速行きましょう」
そう言って英梨と共に立ち上がった。
「やっぱり慣れてる奴には敵わない」
と思っていた。
「そう言えば情報は貰ってるわよね」
「あ、はい戴いています。鈴和さんの情報とすり合わせないといけませんね」
「そんな敬語なんて使わなくても良いよ。同じ歳なんだしさ」
「でもボスのお嬢様ですから……」
「そんなの関係無いから……ね!」
「わかりました。じゃあ普通の言葉で言います」
そんなやりとりがありやっと、まともに話す事が出来た。
お互いのスマホを取り出して本部から来た情報のすり合わせをする。
「現場の位置情報貰ってる?」
鈴和が聴くと英梨は
「伊丹シテイホテルのから西に8分ほど歩いた市立伊丹高校の傍だとか、一応貰ってますけど土地勘無いから……」
「そうだよね。私も無いもんGPSだけが頼りかな。もちろん住所は判ってるんだけどね」
「でもどうして、関西支部が動かないんですかね?」
「あ、それはね」
鈴和はこの前の「ヒロポン事件」を詳細に語って聴かせた。
「うわ~悪魔の様な奴ですね。で、鈴和さん狙われてるんですか?」
「う~ん。今はそう言う感じはしないけど、きっと手不足なのと東京に私を余り居させたく無いと思ってるだと思うの」
「やっぱり、ボスは鈴和さんを溺愛してますからねえ」
「ちょっと、やめてよ! ウチの父が溺愛なんて……」
「えへ!」
そう言って二人は笑って新大阪に向かって行った。
新大阪に着くと鈴和は英梨に
「乗り換えるんだけど、東海道線ね。それに乗って一つ目だから」
「でも面白いですよね。JRは『大阪』なのに同じ所にある私鉄や地下鉄は『梅田』なんて」
「そうねえ、なんでかね? あ、ここだ、この階段降りると東海道線のホームだよ」
二人はエスカレータを降りるとホームに降り立ち、英梨が
「来た電車は何でも乗って良いのですかねえ?」
そう訊いて来るので鈴和は
「この駅に止まっる電車はみんな大阪に止まると思うよ。名古屋だって大曽根に止まった電車は皆名古屋に止まるでしょう」
「そう言えばそうですね」
そう言いながら英梨はホームにある立ち食いのうどん屋さんを眺めている。
「ねえ鈴和さん、帰りは『きつねうどん』食べて帰りましょうよ」
「きつねうどん? そんなの東京でも名古屋でも食べれるでしょう?」
「違うんですよ。美味しいんですよ! ね!」
どうやら英梨は食道楽の毛があるようだと鈴和は思うのだった。
大阪駅に着いて地下道を阪急電車に乗る為に歩いて行く。地下街でサラリーマンがたかってる店があるので何か? と覗いたらなんと立ち飲みの店だった。
「凄い! 東京なら東京駅の地下街に立ち飲みの店がある様なものだわ。考えられない」
「いや~凄いですね。
二人で阪急電車のりばの案内の通りに進んで行く。きっと目立つのだろう、高校生の男子や大学生らしい男どもが二人を舐める様に見て行く。
それはそうだろう。一人は見てくれもスタイルも抜群の高校生。もう一人は百七十五センチありながらもこれも抜群の容姿の高校生だ。注目を集めるな、と言うのは無理だと思う。鈴和は気にしないが英梨は相当気になるらしい。
「なんかジロジロ見られてますよ」
「気にしない。皆畑の芋だと思えばいいよ」
鈴和のあっけらかんとした言い方に英梨は笑ってしまった。
やがて阪急の梅田の駅についた。伊丹までの切符を買って自動改札を抜けて、神戸線のホームに行く。
「はあ~私鉄なのに凄いですね。名鉄の名古屋駅は凄いですけど、ここのほうが大きいですね」
英梨が感心してると
「どれに乗ればいいんですかね」
と鈴和に訊いてきた。
「ほらこの路線図を見ればいいじゃ無い。まず塚口と言う駅まで行って、そこで伊丹線に乗り換えるのよ。塚口は特急以外は皆止まるから大抵のは大丈夫よ」
そう言って二人は準急に乗った。間もなく電車は動き出す。すぐに中津と言う駅に止まる。ここで隣のホームにも電車が止まっているのが見えた。やがて動き出すと、新淀川の鉄橋に差し掛かった。ここで二人とも驚いてしまった。
何と、自分の乗っている電車、それに隣の鉄橋を走っている電車。そしてその向こうにも同じ色の電車が並行して鉄橋を渡っている。その壮大さに我を忘れて見入ってしまった。
「凄い!阪急ってすごい! でも全部チョコレートに見えて着ちゃた。伊丹着いたらパフェ食べよう。ね英梨!」
英梨は突然の鈴和のパフェモードに戸惑うばかりだった。
二人は伊丹駅に着くと、伊丹シテイホテルのチェックインした。ここは宿として組織が予約を入れてくれていたのだ。部屋に入り、地元の組織の人物に連絡を入れるとすぐ行きます、との返事だった。その通り、荷物を開ける間も無く部屋のドアがノックされた。
開けると三十歳くらいの女性が立っていた。
「こんにちは、アルファと申します」
その女性はにこやかに自己紹介をした。ひと目見て能力者と判り、しかも組織の人間だと判ると二人はアルファを部屋に入れた。
「これから荷物を整理されたら、私が直接現場にご案内します。事情を説明したら、私は今担当しているヒロポン事件に戻ります。そちらの指令が片付いたら又ご連絡下さい」
アルファを名乗る女性は極めて事務的に説明をする。
「こちらでもヒロポンは広まっていますか?」
そう鈴和が聴くとアルファは
「それはもう、先日は大元の能力者とやり合いました。逃げられましたが……」
それを訊いて鈴和は
「忙しいところすいません。早速行きましょう」
そう言って英梨と共に立ち上がった。