恋遍路29.春に

文字数 743文字

 試されていることは、よく感じるよ。
 おまえは、どれだけ、この女を愛せるのか。
 おまえは、この世界と、どう接し、どう、自分のなかで、処理していくのか。
 おまえは、試されているんだよ。

 なかなか、順風満帆に、生きている人は、少ないらしい。
 いや、いないかもしれない。
 うまくいけば、うまくいっただけ、たとえば財を成したなら、その財を失くさぬよう、ひどく心配するらしいよ。
 うまくいかなかったら、うまくいかなかっただけ、あ~あ、ってなるらしい。
 何をしても、結局…。
 ふしぎだね。これで万々歳、なんて、ないんだ。
 
 いつも、時は流れているからね。
 いつも、時が流れているからね。
 
 ねえ、ほんとにスゴイ夫婦って知ってる?
 ほんとうに、仲睦まじく… というのも、女と男は、ほんとに違うからね、ほんとに違うものどうしが、仲良くやるって、ほんとにスゴイことなんだよ。
 男女平等とかいうけど、あれは、ほんとうは「人間平等」のことなんだ。男とか、女とか、そういうものの前の、時空間の問題なんだ。人種も、差別も、そこのところでは、全然ない。あるもんじゃなかった。
 知能とか、知恵? 人間が、人間であると自覚し、他の動物と比べて、できあがった意識が、差別を生み出したんだ。
 もとは、同じ。

は、同じなんだ。

 もう戻れない。もう、戻れない。

 せめて、わたしたち、死ぬまで、なかよく、いましょうよね。
 うん。気まずい時があっても、…その時も、時に上乗せされる。
 ぼくらの意識とは無関係に、時が、ずっと、過ぎて行く。
 気まずい時、気おいしい時、どんな時も、どんな時も、時が過ぎて行く。
 そうだ、だから、だから、平和に、いきたいね。
 みんな、死ぬんだから。
 そう、死ぬまで、ほんとに、平和で、いたいよね。
 
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