#9 ヴェイルベイビーと禁断の薬

文字数 3,105文字

深夜。BABU。

薄暗い部屋の中、1つの影が怪しく動いていた。

月夜の明かりがゆっくりと部屋の中を照らす。

orurunshoboon

………………

orurunshoboon

ーー廊下。

orurunshoboon

参ったなぁ、俺が見回りなんて…

ひいい、怖い…ったく、こういうことは人事部の新人にやらせればいいんだよ…

コロコロコロコロ……

orurunshoboon

ん?なんだ?何かが転がるような……

……アメ?な、なんでこんな所に…ま、まさか…誰かいるのか!?いるなら返事しろ!おい!!


…気のせいか…ハハハ…

そ、そうだよなぁ。こんな時間に誰かいるわけ…

…ゴクリ   だ、誰かに見られてる気がする…な、なんだよ!ネコか!?ベイビーか!?人間か!?それとも……!!
おやおや、大変ですねぇ…

orurunshoboon

救急車でも呼びましょう……か?

orurunshoboon

あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!
朝。BABU、人事部。

orurunshoboon

なに?また出たぁ?
ほんとなんだって!
ふああ。おはようございます…
なぁアイト君、聞いてくれよ!
どうしたんですか〜?
昨日の夜中、出たんだよ!
出たって何がです?
…アレだよ、ア・レ!
ちょっとやめてよ。そういう季節だからって。夏といえば他にもあるでしょう?海とか、プールとか、お祭りとか!BBQもいいわね♪
おーいいですねー!水着とか!
お。アイト君わかるやつじゃないかー。真面目そうな顔して、女の子の水着見たいんだなー?いいねぇ!
うわ。サイテー。
なんで俺を見るんだよーアイト君が言ったんだろー
お2人とも夫婦みたいですね!
だれがこんな奴!!
好きになるもんですか!!
夫婦円満だ♪
みんなおはよう。
おはようございます!
ええと、みんなに良いお知らせと悪いお知らせがあるのだけれど…
良いお知らせ?
ええとね、夏だし暑いので、社内のプールを使ってイベントをやりたいと思うの。
いよっ!待ってました!ヒューヒュー!

毎年恒例のイベントよ。プールは自由に泳いでOK。フライドチキンやポテト、焼きそばやアイスクリームが食べられるの。

シルさん!飛び込み台!飛び込み台!

本当に男の子って飛び込み台が好きなのねぇ。そんなリクエストにお応えして、今年は飛び込み台があるわ。

やったーーー!

すごいなぁ…会社のプールに飛び込み台があるなんて…

参加資格はベイビーちゃんと仲良くなること。

人数はヒミツだけど、アイト君はクリアしてるから問題ないわ。もちろん無料よ♪

わぁ…プールかぁ…

シルさん。俺のスムーズでスマートなスタイルで飛び込む華麗なるフォームを見て下さいね?

はいはーいそうだねー

なんだよ!お前に言ってないだろー!

それと、悪いお知らせ。昨日なんだけど、また出たみたい。

そういえば…出たって何が出たんです?

昨日の夜中ね、警備員の人が見回りしてたんですって。そしたら、何者かに襲われて……目が覚めたら…

ベイビーちゃんになってたの。

目が覚めたらベイビー……?えええええええ!?

シルさん大丈夫ですか?その言い方。せめて次の日になったら…とか…

せやけどアイト君!
こらこらこらこら
う”う”ん。

昨日の夜中、警備員の人が見回りしていたら誰かに襲われて、

翌日の朝6時くらいになったらベイビーちゃんになってたの。

…うん、これで大丈夫。もし問題があれば1つ前のセリフを消して編集すれば大丈夫よ♪

余計ややこしくなってるような…

なんか最近シルさん暴走してるよなぁ…

****


BABU。食堂。

orurunshoboon

えーっと、何にしようかなぁ…カレーと焼きそば定食と本日の日替わり定食…うーん…

バブ。
あっ。瑞希ちゃんだ。こんにちは!隣の席いいかな?
バブ。

ありがとう。何食べて……

あ…カレーに唐辛子…タバスコ…からし…ワサビ…山盛りになってる……

食べるかって?遠慮しときます…
――

orurunshoboon

いただきまーす!もぐもぐ。美味い!ん?
なぁ聞いたか?先週の土曜、また出たんだってよーこえぇよなー

マジ?先週の火曜も聞いたぜ。やべぇんじゃないの?ココ。

何回も出てるのか…それにしても何者かに襲われて、なんて…嫌だなぁ…

バブ   バァ

え…紙とペン?はいどうぞ。絵でも描くのかな?

バ、バ、バ、バブ。
ん?……これは!?
――人事部。

orurunshoboon

シルさん!います!?
あらどうしたの?そんなに息を切らして…
これ見てください!瑞希ちゃんが描いてくれたんです!
これは…なるほど。犯人がわかったわ。真実は!

――ベイビールームのある廊下。

とあるベイビーの部屋の前。

orurunshoboon

んもう、なんでカットしちゃうのよー。せっかくカメラ目線になったのにー。
少し落ち着きましょう、うん。
というか、なぜこの部屋に?
瑞希ちゃんの描いてくれたのは緑色の髪の男性でしょう?その人が犯人なのよ。さぁ、入るわよ。

ガチャ

扉を開けると、中は真っ暗。

目の前に黒い塊があり、吸い込まれそうになる。

orurunshoboon

こ、怖い…
大丈夫よ。ヴェイルちゃん。ヴェイルちゃんいる?

2人は、まるで誘われるかのように真っ暗な闇の中に入っていく。

すると、開けていたはずの扉が音もなく閉まる。

orurunshoboon

ヴェイルちゃん、返事して。
…!シルさん後ろ!!
おや、アイト君。こんにちは。
あ、あなたは一体…!
私はヴェイルノート。この世界に来る予定はありませんでしたが、この体ならば問題ない。ヒヒ…

(な、なんだ…?ものすごい威圧感…!この人、人間じゃない…!?)

シルフィーナさん、いい女性だ…この世界に置くにはもったいない…
ヴェイルちゃんやめて…っ!
異世界人確保…首を絞めるのは簡単ですが、今はやめておきましょう…

拘束するだけでいい。あとは帰るだけです…

ん?

シルさんを離せ!

ヒヒヒ…あなたのスキルで私を止めようと?おもしろい。やってみてください…

うん…?視界が……薬の効果が切れかけている…?

仕方ありません…今回は控えておきましょう…ですがいつか必ず…!

そう言うと、ヴェイルノートから灰色の煙が立ち上る。

アイトはすぐに解放されたシルフィーナに駆け寄る。

orurunshoboon

シルさん!シルさん!
ケホッうう…ありがとう、アイト君…
今の人は何者なんです!?危険すぎます!!
ヴェイルちゃん、正確にはヴェイルノートちゃん。彼はベイビーよ。
ベイビー!?どう見てもボクより背の高い男の人でしたよ!?
彼はね、ベイビーちゃんがスキルを持ったまま私達と同じ大人の体になる薬を開発しているの。
大人に!?
…詳しい事はまだわかっていないけれど、

社長はその『大人の姿』を『本来の姿』と考えているわ。

もともと違う所からやってきて、赤ちゃんのような姿に変わった。

ということは、彼らベイビーちゃんが元いた場所は確かにあって、何らかの影響でこの日本へ来た。

そんな非現実的なことあるわけない…けれど、ベイビーちゃん達がこうして私達の近くにいる。可能性はある…

違う所から…
『あとは帰るだけです…』

まぁ、仮説だけどね。BABUでは、ベイビーちゃん達の研究も行っているのよ。

彼らはどこから来たのか、目的は何なのか、私達人間を襲う可能性はあるのか。

(人を襲う…さっきシルフィーナさんをどこかに連れていこうとしてた…)
バブ!

orurunshoboon

わぁ!?き、君は!?
バァァァ〜!
さっきの人にそっくり!?体はベイビーだ!!

この子ね、ベイビーちゃんの姿の時はいつも泣いているの。抱っこしてあげて。

んしょ。大丈夫かなぁ?
キャッキャ
笑ってる……
――人事部。

orurunshoboon

えっ。警備員さんが元に戻った!?

そうなのよ。ちなみに戻る時は服を着てなかったみたい。

え、なにそれ。エロ〜。お前ベイビーになってこいよ〜。

……こんの……バカーーーー!
バチーン

orurunshoboon

ははは…やっぱり仲がいいや…
(今回は大丈夫だったけど……本当に大丈夫だろうか…?でも、倒すなんてできないし……)
新たに出会ったヴェイルベイビー。

やがてアイトは、大人の姿になったヴェイルノートと出会ったことでベイビーに関する重大な秘密を知ることになるのだが、、、それはまだ先のお話…。

orurunshoboon

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登場人物紹介

アイト

ひょんなことからBABUの新入社員になった少年。

ベイビー、未来とティムのファン。

シルフィーナ

BABUの人事部兼秘書の女性。

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