#1 ようこそBABUへ

文字数 3,494文字

20XX年。日本。

いつもと変わらない普通の日常。

「退屈だ」と誰かが独り言を呟いた。


そんな独り言を誰かが聞いていたのだろう。

アニメのような、映画のような、非日常の世界はすぐそこまで来ていた。

orurunshoboon

「Baby(ベイビー)」。それは、不思議な能力を持った小さな赤ちゃん。

彼らは突如として現れ、その姿は日本各地で確認された。

いつしか彼らは「baby」と呼ばれ、瞬く間に有名になり、海外でも高い人気を誇った。


そんな中、彼らを保護するため、また彼らと交流をとるため1つの会社ができた。

それが「BABU(バブ)」である。

食事、家などbabyの生活を保障する代わりに、彼らを日本中、いや世界中に派遣しその力を借りるというもの。

するとどうだろう。彼らはBABUに興味を持ち、今や多くのbabyが世界中で活躍している。

orurunshoboon

東京、有明。

真夏の朝、1人の少年がBABUのオフィスビルにやってきた。

ギュウギュウの満員電車に揺られ、汗は止まらず、緊張からか変な汗までかいている。

orurunshoboon

やっと着いた…それにしても本当に高いビルだなぁ……写真より大きいよ…

青空と同じくらい青いビルを見上げ、大きく深呼吸をして自分を落ち着かせる。

会社から自宅に送られてきたネームプレートを出し、首から下げ、意を決して自動ドアに手をかける。


あぁ、なんて涼しいんだろう。

暑さが吹っ飛ぶくらいのエアコンの冷房の風が、少年の身を包み込んだ。

orurunshoboon

はぁ〜…♪エアコン最高♪
しまった!早く行かないと!
少年は、広く開放感のあるオフィスロビーを歩きインフォメーションセンターを見つけると、エレベーターに乗り3階へと辿り着いた。

orurunshoboon

ええと…人事部…あ、ここだ…
お…おはようございまーす!!

ガチャ、と意を決して人事部のドアを開け、深く一礼。

元気よく大声で挨拶する。

ここまでは良かったのだが、返事はなく「君!危ない!!」という大声が聞こえた。


突然の声に驚き、「えっ」と顔を上げる少年。

すると目の前から、メイド服を着た小さな赤ちゃんが飛んできた。


orurunshoboon

バブ?
うわぁぁぁあああ!?

慌てて手を前に出し、少年は無事に赤ちゃんをキャッチすることに成功。

少年には「おおおおおお〜」「よかった……」という声と共に、拍手が贈られた。

orurunshoboon

****

orurunshoboon

いやー君のおかげで助かったよ!ありがとう!

いえいえ!びっくりしましたけど、無事で良かったです…!
あ、もしかして君、新入社員の人?それならちょっと待ってね。内線かけるから。

…あーもしもし、人事部のシルさんいる?そうシルさん。え?

あ、ナナちゃん?いたよ!そうそういたの!どこって人事部の中!そうなんだよ〜。新入社員の子も来てるから待って……

え?ベイビールームにいる?わかったわかった、しょうがないなー。じゃあ新入社員の子に向かわせるから。はいはい、大丈夫大丈夫。地図渡すから。はい。はーい。

…いやー悪いんだけど、ベイビールームまで行ってくれるかな?君の担当者がそこにいてね、今手が離せないんだって。
わ、わかりました!
はいこれ地図。もしわからなかったら誰かに聞いてくれればいいよ。
ありがとうございます!では行ってきま……
バブっ
かっ……かわいい……!
おっ?気に入られたようだね。良かった、その子と一緒に行ってきてほしいんだ。
えっ!?でもボク、赤ちゃんを抱いたことなんて……!
大丈夫大丈夫。この子はbabyなんだ。普通の赤ちゃんとは違う所がいくつもあってね。ちゃんと自分で歩けるから安心してよ。
そ、そうなんですか…
あそうだ、その子の名前はナナ。ナナ・ニャルキットっていうんだ。じゃあ行ってらっしゃい!
ありがとうございます!
バ〜♪
ガチャ

orurunshoboon

あっちょっと待って!ドア閉めなきゃ…おーい!待ってよー!
バタン

orurunshoboon

あ、あの子の名前聞くの忘れてた…まぁいいか!
――廊下。

orurunshoboon

まずい…どうしよう…!完全に見失った…!あの人に言われた通り本当にハイハイしないで立ってどこかに行っちゃった…!今ごろどこかで泣いてるのかなぁ…!どうしよう…!
あっあの人に聞いてみよう!すみません!こちらに赤ちゃんが来ませんでし…あ!
廊下は走っちゃダメよ?ね、ナナちゃん♪
バッブ♪
……良かったああ……
ところで君、どこの子?
あっえと、今日から人事部にお世話になるんですけど…!
あっ。君がアイト君!?
は、はい!

【シルフィーナ】

私はシルフィーナ!人事部とこの会社の秘書をしているの。
秘書!?
そう。君のお家にそのネームプレートを送ったのは私。ようこそ、ベイビー派遣会社BABUへ!
****

orurunshoboon

じゃあさっそくだけど…最初のお仕事に行きましょうか♪
は、はい!
ふふ♪そんな緊張しなくても大丈夫!今日は社内見学と、 ベイビーちゃん達についてお勉強!
あれ、シルさんベイビールームにいたんじゃなかったのかい?
思ったより早く作業が終わったのよ。さぁ着いてきて!
は、はい!
――エレベーター。

orurunshoboon

ここはね、普通の会社と同じように人事部、営業部、広報部、会議室、社員食堂があるの。1階はオフィスロビーとプールがあってね、プール好きなベイビーちゃんもいるのよ。
じゃあ、社員食堂に行きましょうか。
――社員食堂。

orurunshoboon

広くて綺麗でしょ?ここのオススメはカレーなんだけど、ベイビーちゃん達は普通の赤ちゃんと違って、ラーメンとかたこ焼きとかステーキとかも食べるのよ。
本当に赤ちゃんとは別物なんですね…

ん?あそこに座っているのは…赤ちゃん、いやベイビー?シルフィーナさん、挨拶した方がいいですかね?

…………
あっ…あの子はやめた方がいいわねぇ…
えっ。どうしてです?
あの子は瑞希ちゃんって言ってね、この食堂によく来て、香辛料をいっぱいかけて食べるんだけど…食事中に話しかけると、その香辛料をかけられちゃうのよ…これが本当に辛いの。
ええっ。あほんとだ、テーブルの上に何かいろんなの並んでる…
さて、食事の邪魔をする前に行こうかしら♪
はい!
――オフィスロビー。

orurunshoboon

さて、どうしてここに来たかわかるかしら?
えっと…?
あら、もしかして気付かなかった?

アイトはロビーの真ん中にある柱を見た。

そこには、大きなモニターにランキングのようなものが映し出されている。

orurunshoboon

え!?『ベイビースマイルコンテスト』……!?
そう♪うちの会社では、年1回に最高の笑顔を見せて賞をもらえる大会を開催しているの。審査員は社長を含めて5人いるんだけど、偉い人が揃うからベイビーちゃんは任務より緊張するのよ。
『1位煌ベイビー、

   2位ミントベイビー、

   3位未来ベイビー、

   4位ティムベイビー、

   5位ゴラゴランベイビー』……!

ええええ!?未来ちゃんとティムちゃんってあのアイドルの…!?

ええそうよ。君もテレビとかで見たことあるんじゃないかしら?
ありますあります!演劇とかCMとかライブとかで有名な今話題のアイドルですよね!?ファンです!
あらよかったわ!2人ともここへ顔を出しにきてくれるの。いつか会えるかもしれないわ。
ほんとですか!サインとかもらっちゃっても…!
ベイビーちゃんがOKを出せば問題ないわ。なんといっても君にはベイビーちゃんと派遣先へ行ってほしいから、仲良くなるのは早いかもね♪
えっ?あの、ボクの仕事って…?
言ってなかったかしら?アイト君のお仕事は、いろんなベイビーちゃんと一緒に派遣先へ行ってもらうことよ。
そうそうベイビーちゃんの性格とか好きな食べ物もみんな違うのはいこれベイビーノートよ名前とか全部覚えてね(早口)
ええっ
あとベイビーちゃんには不思議な力があって火を起こすとか透明になるとか一時的だけど筋肉が膨張してパワーを出せるとか間違えてぶっ飛ばされないように気をつけ(早口)
えっっ
それとベイビーちゃんは「バブ」しか喋れないけど大丈夫よ何を言ってるかわからない時はそのベイビーノートを見てちょうだ(早口)
えええっ
ベイビーちゃんについての不思議な力についてもノートにあるから明日までに読んで暗記しておいてね全部で1360ページ袋とじもついてるから中身をプレゼント(早口)
ええええええええっ

****


BABUオフィスビル前。

シルフィーナはアイトを見送る。

orurunshoboon

今日はお疲れ様〜♪また明日ね〜♪
は、早口で何言ってるかわからなかった………
でも、これでボクもBABUの社員なんだ!これからどんなベイビーと出会うんだろう…楽しみだ…!
よーし!初出勤祝いに1人焼肉行こ!いっぱい食うぞー!
ベイビー。

それは、不思議な力を持った赤ちゃん。

時に人の手助けし、時に戦い、時に泣き、時に未知の力を使う不思議な生き物。

果たして、人類にとって敵か味方か。

orurunshoboon

これは、1人の少年アイトとぶっ飛んだベイビー達のドタバタな日々を描いた物語である。

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登場人物紹介

アイト

ひょんなことからBABUの新入社員になった少年。

ベイビー、未来とティムのファン。

シルフィーナ

BABUの人事部兼秘書の女性。

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