警察のお世話になりました

文字数 1,453文字

 昨日、仕事帰りに元夫の家に寄ったから。
 僕が住んでるグループホームに警察の人来た。
 僕はストーカーとのこと。
 元夫は、「僕のことを怖がっている」と、警察の人から聞いた。
 そして「もうよりを戻すつもりもない」
 あの時横断歩道を渡らず、素直にバスロータリーに向かっていればよかった。
 元夫に送ったラインが、1日経っても既読にならないことを、僕は、“未読スルーされてる”
と、非常に楽観的に捉えていた。
 僕の本当に悪い癖だ。
 昨日僕は、元夫の家に行きたいという衝動的な欲望に突き動かされた。
 それは、また元夫が「しょうがないな、入んな、ほら」と言ってくれるという期待が僕の胸の中に燻ってたから。
 根拠はないけど、元夫は優しい人だった。
 だからそんなおめでたい妄想が捗ったのだろう。
 そして元夫と僕が暮らしていたメゾネットの前に立ち、インターフォンを2回鳴らした。鳴らしてる間中、無言になってしまったが、中に女性がいるかどうかドキドキして何か言う余裕なんてなかった。
 結論から言うと、元夫は、僕に未練など一切抱いておらず、僕を警察にストーカーとして突き出すほど、僕のことを
“忌避”
 しているということが、警察の人の話でよくわかった。
 でもグループホームに警察が来る前、シャワーと夕飯を済ませた僕は耳掃除をしていた。
 そのとき、切羽詰まった表情のスタッフさんが、「来客用です」と言ってきたので僕は2回聞き返した。
 ほとんど知り合いのいない僕を、わざわざグループホームまで訪ねる人なんてーー。
 もしかして、夫!?
 夫が来てくれたーー!?
 疑念はそんな期待に染まっていった。
 僕は、玄関まで走っていった。
 夫が、迎えに来てくれた!
 僕をフッたことを後悔して考え直して、直接ここまで訪ねてくれた!
 玄関の扉が少し開いていた。
 そこいたのは、夫ではなかった。
 その瞬間、90%悟った。
やがてその男は、黒いパスケースのようなものを出した。
 それを、開く。
 警察手帳だった。
 警察だった。
 その瞬間、僕が元夫の家に行ってしまったことと、警察が結びついた。
 僕がやったこと。
 一般的にいう、ストーカー規制法。
 あぁ、外では鈴虫が鳴いてるね。
 早いもんだ。
 季節が回るのは。
 早く冬になって欲しい。
 早く離婚から1年経って欲しい。
 早く、元夫と過ごした日々から離れたい。
 実は今日も仕事終わり、元夫家に行って、小さな折り鶴を郵便受けに入れた。
 よりを戻したい、と。
 電車の中で書いて鶴を折った。
 夫の駐車場から、夫の車が消えていた。
 有給でも使って新しい女と遊びに行ってるのかな、なん呑気なことを考えてた。
 半分ふざけながら、「もしかてマッポ来るかも」とか呟いたりした。
 今日のことは、
 このこと警察に話してない。
 警察に連れられ、ボックスカーの中で事情聴取が始まったとき、「あぁ、夫が通報したんだ」と全て理解した。
 夫の家を訪ねる以外のなにか迷惑かけることは何一つしてないからだ……。

 今日は警察の世話になった。
 ホームの社長は、悩みがあったら聞くと言ってくれた。
 元夫は、私に未練など一切なくて、僕を「忌避」し、「恐怖」してる。
 元夫は私を怖がり、忌避してる。

 まるで、ゴキブリかムカデみたいだね。

 それ以外に秀逸な例え、ある? 

 (笑)


 世界に暗幕がかかってるみたいだ。


 僕の言動ひとつひとつ、行動ひとつひとつ、人を忌避、畏怖させてるんじゃないかと不安になってくる。


 というわけで、僕はムカデとゴキブリの合体です。


 
 





 
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