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文字数 2,256文字
中央の丘にそびえる、カオスの城を目指すユーコとジンファン、そしてジンファン隊二十数騎。
先の戦いで自身の馬は負傷したため、ジンファンとユーコは他の馬に相乗りしていた。
と、その時――町の東部から、激しい爆発音が聞こえた。
ユーコとジンファンは同時にその方向へ顔を向ける。
何か嫌な感じが、胸をざわめかした。
2人は馬から飛び降り、部下達の声もよそに、無言で東部へと駆け出した。
狭い路地を次々と駆け抜け、やがて、2人は市場へ飛び出した。
ユーコの目に飛び込んできたものは、大剣を持ったシャミンの、背中だった。
シャミンはふらふらと足をおぼつかせ、それから、ぐらりと地面へ倒れようとする。
ユーコは咄嗟に飛び出し、倒れるシャミンを抱え上げた。
――ユーコの両眼が、大きく開いた。
抱えることで明らかになる、シャミンの体の全容。体中に深い切り傷が入り、中の骨すらも見え、大量の血が噴き出していた。
シャミンは霞んだ目で、うわ言のように声を出した。
「俺……守れなかった……レイファを」
その言葉に何かを察し、ユーコはシャミンの横を見ると、そこには血だらけのレイファが倒れていた。
ユーコの顔面が、更に蒼白する。シャミンが再び、口を開いた。
「弱かった……何も、守れなかった、何も……。最期まで……駄目な弟子で、ごめん」
ユーコはただふるふると首を振っていた。それが彼に見えているかは、もう分からない。
「ユーコを……守れる男に……なりたかった、なあ」
シャミンの右目から涙が一筋流れ、シャミンの体は、動かなくなった。
「シャミン……? レイ、ファ……?」
後ろに立つジンファンも、ただ呆然と立ち尽くしていた。
市場の奥では、まだ激しく金属音が鳴り響いている。残るフェアラルと交戦中のアムズが、片方の顔をユーコ達へ向けた。
「ああ? ジンファン隊か? ……なんだこいつら。固まってやがる」
アムズはケラケラと笑い声を上げる。
「ここまできて、まさかビビっちまったのかあ?」
アムズの不快な声を無視し、ユーコはゆっくりとシャミンを地面に置いた。そして祈るような所作で――光剣をシャミンの胸へ貫いた。シャミンの体が淡い光に包まれる。
それからユーコはレイファの元へ歩を進め、同様の所作で、レイファの胸にも光剣を突き刺した。
『――魂の残滓を確認。魂力100%オーバー。レベル4。形状――多剣・扇 。能力――防護吸収 。解放します』
光剣はユーコの手元を離れて宙に浮き、その形体を変化させる。
片膝をつくユーコの頭上に、巨大な扇のようなものが浮かび上がった。よく見ると、16本の細長い剣が扇のように並んでいる。
ユーコは泣き声も上げずに、静かに立ち上がった。ユーコの両眼からは、涙がとめどなく溢れている。しかしユーコは、1つの泣き声も上げなかった。
「なんだあ、その目?」
ユーコの鋭い目に、アムズが苛立たしげに声を上げる。「今のオレァ、気が短いぜ!」
アムズは2本の腕を絡ませ、巨大な銃筒へと変化させる。銃筒が火を噴き、巨大な弾丸がユーコ目がけて宙を駆ける。
瞬間、宙に浮かぶユーコの巨大な扇剣が動いた。扇剣はユーコの前方で盾となり、ユーコの上半身をすっぽりと覆い隠した。
扇剣は、迫る巨大な弾丸を受け止める。大爆発が起こったが、扇剣もユーコも、無傷だった。
扇剣が再びユーコの頭上へと移動し、ユーコの上半身が現れる。
ユーコの顔から涙は消え、代わりに、凄まじい威圧感が発せられていた。
アムズの体に、激しい緊張が走った。そう、それはまるで、主であるカオスと対顔している時のような――。
「馬鹿な……こんなガキと、カオス様が……? ……アハ。アハハハハハ!」
アムズは壊れたように笑い出す。「いーいだろう! 認めてやるよその力! だがなあ、戦 ってのは、戦場の全てを利用したモンが勝つんだよッ!」
アムズは体中に次々と武器を生やし、自身の体表面積を増やす。それから武器の表面に、大小様々な穴を多量に開いた。
それは、砲弾の穴だった。全ての穴が、熱を持ち始める。
「この市場にいるクソ共、全員が死ぬぜぇ? その剣でよぉ、守ってみせろよお!」
アムズは大きく跳躍し、上空から無数の砲弾を乱れ撃った。
その刹那、ユーコは扇剣を形成する16本の細剣を周囲に飛ばし、巨大な円(サークル)を形作る。
次いでユーコが両手を叩くと、剣と剣が細長い光で繋がり、その囲った空間に、半球の防御障壁が発生する。
アムズの放った砲弾はその障壁へ激突し、爆発した。アムズの砲撃による市場への被害は、何もなかった。
着地したアムズが、引きつった笑みを浮かべる。その時アムズは、何かに気付いた。
爆発を受けたユーコの障壁が、赤色に輝いているのだ。
周囲に散っていた、赤色に輝く16本の細剣がユーコの元に戻り、再び扇状になる。更にユーコは、それを大剣へと変化させた。だが、その赤い光はまだ残っている。
赤い光はバチバチと凄まじい音を立て、ユーコの構える大剣で輝きを放っている。
「まさか……砲弾のエネルギーを吸収したのか!?」
ユーコは地面を蹴り、アムズへ迫る。
アムズは再び狂ったような笑い声を上げ、身の丈の数倍はある巨大な剣を生成し、ユーコへ振り下ろした。
ユーコは自身の大剣を横に薙ぎ、アムズの巨大剣諸共、アムズを真っ二つにした。
更にユーコはアムズを縦に斬り降ろすと――アムズの核は、バキンと砕け散る。
アムズは最期まで笑い声を上げながら、その体を爆散させた。
先の戦いで自身の馬は負傷したため、ジンファンとユーコは他の馬に相乗りしていた。
と、その時――町の東部から、激しい爆発音が聞こえた。
ユーコとジンファンは同時にその方向へ顔を向ける。
何か嫌な感じが、胸をざわめかした。
2人は馬から飛び降り、部下達の声もよそに、無言で東部へと駆け出した。
狭い路地を次々と駆け抜け、やがて、2人は市場へ飛び出した。
ユーコの目に飛び込んできたものは、大剣を持ったシャミンの、背中だった。
シャミンはふらふらと足をおぼつかせ、それから、ぐらりと地面へ倒れようとする。
ユーコは咄嗟に飛び出し、倒れるシャミンを抱え上げた。
――ユーコの両眼が、大きく開いた。
抱えることで明らかになる、シャミンの体の全容。体中に深い切り傷が入り、中の骨すらも見え、大量の血が噴き出していた。
シャミンは霞んだ目で、うわ言のように声を出した。
「俺……守れなかった……レイファを」
その言葉に何かを察し、ユーコはシャミンの横を見ると、そこには血だらけのレイファが倒れていた。
ユーコの顔面が、更に蒼白する。シャミンが再び、口を開いた。
「弱かった……何も、守れなかった、何も……。最期まで……駄目な弟子で、ごめん」
ユーコはただふるふると首を振っていた。それが彼に見えているかは、もう分からない。
「ユーコを……守れる男に……なりたかった、なあ」
シャミンの右目から涙が一筋流れ、シャミンの体は、動かなくなった。
「シャミン……? レイ、ファ……?」
後ろに立つジンファンも、ただ呆然と立ち尽くしていた。
市場の奥では、まだ激しく金属音が鳴り響いている。残るフェアラルと交戦中のアムズが、片方の顔をユーコ達へ向けた。
「ああ? ジンファン隊か? ……なんだこいつら。固まってやがる」
アムズはケラケラと笑い声を上げる。
「ここまできて、まさかビビっちまったのかあ?」
アムズの不快な声を無視し、ユーコはゆっくりとシャミンを地面に置いた。そして祈るような所作で――光剣をシャミンの胸へ貫いた。シャミンの体が淡い光に包まれる。
それからユーコはレイファの元へ歩を進め、同様の所作で、レイファの胸にも光剣を突き刺した。
『――魂の残滓を確認。魂力100%オーバー。レベル4。形状――
光剣はユーコの手元を離れて宙に浮き、その形体を変化させる。
片膝をつくユーコの頭上に、巨大な扇のようなものが浮かび上がった。よく見ると、16本の細長い剣が扇のように並んでいる。
ユーコは泣き声も上げずに、静かに立ち上がった。ユーコの両眼からは、涙がとめどなく溢れている。しかしユーコは、1つの泣き声も上げなかった。
「なんだあ、その目?」
ユーコの鋭い目に、アムズが苛立たしげに声を上げる。「今のオレァ、気が短いぜ!」
アムズは2本の腕を絡ませ、巨大な銃筒へと変化させる。銃筒が火を噴き、巨大な弾丸がユーコ目がけて宙を駆ける。
瞬間、宙に浮かぶユーコの巨大な扇剣が動いた。扇剣はユーコの前方で盾となり、ユーコの上半身をすっぽりと覆い隠した。
扇剣は、迫る巨大な弾丸を受け止める。大爆発が起こったが、扇剣もユーコも、無傷だった。
扇剣が再びユーコの頭上へと移動し、ユーコの上半身が現れる。
ユーコの顔から涙は消え、代わりに、凄まじい威圧感が発せられていた。
アムズの体に、激しい緊張が走った。そう、それはまるで、主であるカオスと対顔している時のような――。
「馬鹿な……こんなガキと、カオス様が……? ……アハ。アハハハハハ!」
アムズは壊れたように笑い出す。「いーいだろう! 認めてやるよその力! だがなあ、
アムズは体中に次々と武器を生やし、自身の体表面積を増やす。それから武器の表面に、大小様々な穴を多量に開いた。
それは、砲弾の穴だった。全ての穴が、熱を持ち始める。
「この市場にいるクソ共、全員が死ぬぜぇ? その剣でよぉ、守ってみせろよお!」
アムズは大きく跳躍し、上空から無数の砲弾を乱れ撃った。
その刹那、ユーコは扇剣を形成する16本の細剣を周囲に飛ばし、巨大な円(サークル)を形作る。
次いでユーコが両手を叩くと、剣と剣が細長い光で繋がり、その囲った空間に、半球の防御障壁が発生する。
アムズの放った砲弾はその障壁へ激突し、爆発した。アムズの砲撃による市場への被害は、何もなかった。
着地したアムズが、引きつった笑みを浮かべる。その時アムズは、何かに気付いた。
爆発を受けたユーコの障壁が、赤色に輝いているのだ。
周囲に散っていた、赤色に輝く16本の細剣がユーコの元に戻り、再び扇状になる。更にユーコは、それを大剣へと変化させた。だが、その赤い光はまだ残っている。
赤い光はバチバチと凄まじい音を立て、ユーコの構える大剣で輝きを放っている。
「まさか……砲弾のエネルギーを吸収したのか!?」
ユーコは地面を蹴り、アムズへ迫る。
アムズは再び狂ったような笑い声を上げ、身の丈の数倍はある巨大な剣を生成し、ユーコへ振り下ろした。
ユーコは自身の大剣を横に薙ぎ、アムズの巨大剣諸共、アムズを真っ二つにした。
更にユーコはアムズを縦に斬り降ろすと――アムズの核は、バキンと砕け散る。
アムズは最期まで笑い声を上げながら、その体を爆散させた。