6
文字数 1,532文字
「……?」
ユーコの目が覚める。そこは誰かの家のようだったが、部屋には誰もいなかった。
ユーコは外へ出ると、家の前にルカ達3人がいた。しかし、ジルバの姿はどこにもない。
ユーコがキョロキョロと辺りを伺っていると、見かねたルカが口を開いた。
「あのジルバっておっさんなら、もうここにはいない。今頃はフラウ様の屋敷さ」
ルカは薄っすらと見える北の屋敷を指す。それからジョズが西の道を指した。
「町の門はあの通りをずっと歩いていった所だ。……さっさとどこにでも行け。消えろ」
ユーコは小さく首を傾げたあと、彼らにペコリと頭を下げ、ルカが指したフラウの屋敷の方向へと歩いていった。
不思議そうにそれを見やるルカ達だったが、やがて何かに気付き、ユーコへ駆け寄った。
「ちょ、ちょっと待て! まさかフラウ様の屋敷へ行くつもりか!?」
コクリと頷くユーコ。ルカ達の顔がひきつった。ルカとジョズが声を上げる。
「分かってないようだな! お前のためにおっさんもシェリーも犠牲になったんだよ!」
「だから行くな! お前はこのまま町から出ていけ!」
ユーコは小さく首を傾げた。しばしの沈黙のあと、やはりユーコはルカ達にペコリと頭を下げると、再び屋敷へと歩き出した。
「こいつ、理解してないのか……!? シェリーの話は聞いたんだよな……?」
ジョズは歩くユーコの肩を掴み、ユーコの目を見据えて言い放つ。
「2人にはもう会えないんだよ! いい加減分かれよ!」
『ガーン』と、目に見えて大きなショックを受けるユーコ。
やがてユーコは涙目になりながら、ジョズの肩を掴み返し、ぶんぶんと激しく揺すった。ユーコを止めようとルカが声を上げる。
「や、やめろって! そんなことしたって、フラウ様がいなくなる訳じゃないんだ!」
その言葉を聞いたユーコはピタリと止まる。
次いで腰に差している短剣を抜いたかと思うと、その短剣を、薄っすらと見える北の屋敷へ鋭く向けた。そして自身の胸を、ドンと叩いた。
「……は、はあ? まさかとは思うがお前……フラウ様を、倒そうっていうのか?」
ルカの問いかけに、ユーコはこっくりと頷いた。
「アホかあ! 死ににいくようなもんだ!」
ルカは声を荒げた。「お前は剣に自信があるのかもしれないが、亜神ってのは剣の1本でどうにかできる相手じゃないんだよ! あの……アンヌ姉さんだって……!」
ルカは拳を握った。ジョズとエスタも悔しそうな表情をしている。
しかしユーコは激しくかぶりを振った。それから再び、自身の胸を大きく叩く。ユーコの両眼は、涙で潤んでいた。
「そ、そんなに……あのおっさんに会いたいのか?」
ユーコは力強く頷いた。
しばしの沈黙があった。
やがて、エスタが声を漏らした。
「ぼ、僕だって……シェリーにもう一度、会いたいよ」
エスタの言葉を反芻するように、「俺だって、もう一度……!」と、ジョズが言った。
――馬鹿ガキども。そんなにシェリーが好きか?
ルカは不意に――十年以上前、まだ帝国との大戦が始まる前の――幼き日の記憶を思い出した。
幼いシェリーに寄り添うルカ達3人に、アンヌは言った。
『だったら、何があってもシェリーを守ってやれ。その時お前らにできることを、全力でやってな。お前らは全員馬鹿なガキだが……まあ3人一緒なら、なんとかなるかもな』
アンヌの笑顔が消え――ルカの意識が現実の世界へ戻ってくる。
ルカは震える拳を、自身の腿へ叩きつけた。
「今まで……シェリーを守るために、外の人々を犠牲にしていたんだよな」
ルカは再び、拳を腿に打ちつける。
「シェリー渡して、何やってんだよ……!」
顔を伏せるルカ達3人に、ユーコは三度自身の胸を、ドンと勇ましく叩いた。
ユーコの目が覚める。そこは誰かの家のようだったが、部屋には誰もいなかった。
ユーコは外へ出ると、家の前にルカ達3人がいた。しかし、ジルバの姿はどこにもない。
ユーコがキョロキョロと辺りを伺っていると、見かねたルカが口を開いた。
「あのジルバっておっさんなら、もうここにはいない。今頃はフラウ様の屋敷さ」
ルカは薄っすらと見える北の屋敷を指す。それからジョズが西の道を指した。
「町の門はあの通りをずっと歩いていった所だ。……さっさとどこにでも行け。消えろ」
ユーコは小さく首を傾げたあと、彼らにペコリと頭を下げ、ルカが指したフラウの屋敷の方向へと歩いていった。
不思議そうにそれを見やるルカ達だったが、やがて何かに気付き、ユーコへ駆け寄った。
「ちょ、ちょっと待て! まさかフラウ様の屋敷へ行くつもりか!?」
コクリと頷くユーコ。ルカ達の顔がひきつった。ルカとジョズが声を上げる。
「分かってないようだな! お前のためにおっさんもシェリーも犠牲になったんだよ!」
「だから行くな! お前はこのまま町から出ていけ!」
ユーコは小さく首を傾げた。しばしの沈黙のあと、やはりユーコはルカ達にペコリと頭を下げると、再び屋敷へと歩き出した。
「こいつ、理解してないのか……!? シェリーの話は聞いたんだよな……?」
ジョズは歩くユーコの肩を掴み、ユーコの目を見据えて言い放つ。
「2人にはもう会えないんだよ! いい加減分かれよ!」
『ガーン』と、目に見えて大きなショックを受けるユーコ。
やがてユーコは涙目になりながら、ジョズの肩を掴み返し、ぶんぶんと激しく揺すった。ユーコを止めようとルカが声を上げる。
「や、やめろって! そんなことしたって、フラウ様がいなくなる訳じゃないんだ!」
その言葉を聞いたユーコはピタリと止まる。
次いで腰に差している短剣を抜いたかと思うと、その短剣を、薄っすらと見える北の屋敷へ鋭く向けた。そして自身の胸を、ドンと叩いた。
「……は、はあ? まさかとは思うがお前……フラウ様を、倒そうっていうのか?」
ルカの問いかけに、ユーコはこっくりと頷いた。
「アホかあ! 死ににいくようなもんだ!」
ルカは声を荒げた。「お前は剣に自信があるのかもしれないが、亜神ってのは剣の1本でどうにかできる相手じゃないんだよ! あの……アンヌ姉さんだって……!」
ルカは拳を握った。ジョズとエスタも悔しそうな表情をしている。
しかしユーコは激しくかぶりを振った。それから再び、自身の胸を大きく叩く。ユーコの両眼は、涙で潤んでいた。
「そ、そんなに……あのおっさんに会いたいのか?」
ユーコは力強く頷いた。
しばしの沈黙があった。
やがて、エスタが声を漏らした。
「ぼ、僕だって……シェリーにもう一度、会いたいよ」
エスタの言葉を反芻するように、「俺だって、もう一度……!」と、ジョズが言った。
――馬鹿ガキども。そんなにシェリーが好きか?
ルカは不意に――十年以上前、まだ帝国との大戦が始まる前の――幼き日の記憶を思い出した。
幼いシェリーに寄り添うルカ達3人に、アンヌは言った。
『だったら、何があってもシェリーを守ってやれ。その時お前らにできることを、全力でやってな。お前らは全員馬鹿なガキだが……まあ3人一緒なら、なんとかなるかもな』
アンヌの笑顔が消え――ルカの意識が現実の世界へ戻ってくる。
ルカは震える拳を、自身の腿へ叩きつけた。
「今まで……シェリーを守るために、外の人々を犠牲にしていたんだよな」
ルカは再び、拳を腿に打ちつける。
「シェリー渡して、何やってんだよ……!」
顔を伏せるルカ達3人に、ユーコは三度自身の胸を、ドンと勇ましく叩いた。