その14 老婆と海

文字数 560文字

今日のひとふり:
「おばあさんが/うみで/さかなを/つかまえました」


 漁師のおじいさんが、海に出ました。
 一世一代の大物を釣り上げましたが、
 鮫におそわれて、そのさかなを食べつくされてしまいました。

 それでも、その大物をものにした、という誇りは、おじいさんの心に深く刻まれたのです。

 ここまでが、世界名作文学「老人と海」のおはなしです。

 さて。

 手ぶらで帰ってきたおじいさんを見て、おばあさんは、かんかんに怒りました。
「何でしょうね、この人は。
 一世一代の大物を釣り上げた?
 そんなの、持って帰ってこなけりゃ、なんの意味もないじゃありませんか。
 今夜のおかずはどうするんです。思い出ばなしが、おみおつけの実になりますかと言うんですよ」

 おばあさんの怒りはおさまりません。
「ええ、ええ、よござんす。
 わたしが行って、取ってきましょう。少々ちいちゃくたって、ちゃあんと口に入るさかなをねえ」
 ぷんぷん怒りながら、舟をこぎだして行きました。

 そうしてそのまま、帰ってきませんでした。

 どうも、私たち女というものは、とくに、もう若くない女というものは、
「男のロマン」というものがまるでわかっていなくて、困ったものです。


【注】もちろんあの名作にこんな続きはありません。ヘミングウェイさん、ヘミングウェイ・ファンの皆さんごめんなさい。
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