その12 音楽隊

文字数 805文字

今日のひとふり:
「うまが/みちで/いぬを/ひろいました」


 馬が年を取って、働けなくなりました。
 馬刺にされてしまう前に、どこかへ行ってしまおうと思って、馬は出かけました。

 途中で、犬に会いました。
 犬も年を取っていました。犬鍋にされてしまう前にと思って、家を出てきたところでした。
 ふたりはすぐに、意気投合しました。

「ところで馬さん、どこへ行くんですか」
「いや、とくに決めてなかったんだが」
「どこへ行きましょうか」
「てきとうでいいんじゃないか」

 で、てきとうに歩いて行くと、ねこに会いました。
 ねこも年取って、ねずみが取れなくなっていたので、喜んで仲間に加わりました。
 そのあと、おんどりとめんどりの夫婦に会いました。おんどりはときが作れず、めんどりは卵が生めなくなっていたので、やはり喜んで仲間に加わりました。
 なんか一羽、メンバーが多い気がしますが、フォーメーションとしてはこのほうがバランスが良いと私は思います。

 で、私がいつも不思議に思うのは、

一、彼らは、最後まで、音楽はやらない。(一度だけ声を合わせて大騒ぎするだけ)
二、彼らは、最後まで、ブレーメンには行かない。(途中で素敵な館を見つけてそこに住んでしまう)
三、にもかかわらず、ブレーメンには彼らの立派な銅像があって、しかも、ろばの(オリジナルはろばでした)ひづめをなでながら願いごとをすると、かなう、という言い伝えまであるものだから、ろばのひづめはなでられすぎて、ぴかぴかになっている、

 ということです。

 そして、もっと不思議なのは、
 私がした願いごとは、かなったということです。
 (しましたよ、願いごと。観光客ですから。)

 さらに不思議なのは、
 気がついたら、いま、その願いごとは、わりとどうでもよくなってしまった、ということです。

 何ごとも、てきとうにしておくのが、あんがい幸せの秘訣かもしれない。
 というのが、私がこのお話から得た教訓です。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み