その11 中洲

文字数 477文字

今日のひとふり:
「かっぱが/かわで/おとこのこを/ひろいました」


 大雨が降って、川が増水しました。
 そのうち誰かが、たけどんのところの小太郎が帰ってこない、と言いだしました。

 みんなで探しに行くと、小太郎は、川の中洲に取り残されていました。

 大騒ぎになりました。川の勢いはどんどん増してきて、大人の男でも流されかねません。
 何人もで力を合わせて、やっと子どもを岸へ連れ戻しました。子どもはくちびるを紫にして、ぐったりしています。

 雨に打たれながら、皆が口々にしっかりしろと叫んでいると、ひときわ甲高い声がひびきました。
「何言ってる。おれはさっきから、ここにいる」

 見ると、大小の子どもたちのあいだに、小太郎がちゃんといて、必死に叫んでいるのです。

 皆、ぞっとしました。
 けれども抱えられてきた小太郎はずぶ濡れで、死にかけています。

 とにかく、けんめいに介抱したら、小太郎の顔色はだんだん良くなってきました。
 そしてそのうち、一人になりました。

 小太郎自身が、どちらが本当の自分だったか、わからないようでした。
 いくら聞かれても、首をひねっていたそうです。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み