その9 戸締まり

文字数 728文字

今日のひとふり:
「りょうしが/もりで/おばあさんを/たすけました」


 猟師は、森の道を歩いていて、いつもの一軒家の前を通りかかりました。
 おばあさんが、小さな畑の手入れをしています。

「ごせいが出ますね」猟師は声をかけました。

 おばあさんは、腰をのばして、にっこりしました。
「ええ、もうじき、まごが遊びに来るのでね。
 とれたてのさやいんげんをゆでてあげようと思って」

「いいですねえ」
「よかったら、あなたもめしあがっていきません?」
「ほんとですか? では、えんりょなく」

 そこへ、ちょうど、赤ずきんちゃんが到着しました。
 猟師とおばあさんと赤ずきんちゃんは、三人で、おいしいさやいんげんをたっぷり食べて、楽しくおしゃべりしました。新鮮ないんげんは、ゆでて塩をふっただけで、それはそれはおいしくて、おなべに何杯だって食べられます。
 三人で、おいしいおいしいと食べました。
 赤ずきんちゃんはおみやげに、お母さんの作ったぼたもちを持ってきていたので、三人はそれもおいしいおいしいと言って食べ、

 おしゃべりに夢中になっていたら、もう夕方になったので、

 猟師は、赤ずきんちゃんを、お家まで送っていくことにしました。

「戸締まりは、しっかりなさってくださいね」猟師はおばあさんに念を押しました。
「わかってますよ」おばあさんはにっこりしました。
「誰かが戸をたたいて『オレだオレだ』なんて言っても、開けちゃだめですよ」
「わかってますよ」おばあさんはウインクして、親指を立てて見せました。

 二人を見送って、家の中に入るとき、
 おばあさんは、首すじに、何かひやっとした視線を感じたのですが、
 気にしないことにして、中に入り、しっかりとかんぬきを下ろしました。

 のどかな春の一日でした。

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