第12話 大岡山駅
文字数 909文字
2015年1月10日
「間もなく終点東京です。東海道新幹線、山手線、京浜東北線、中央線、東海道線、……」
上越新幹線のアナウンスの音で、僕は目覚めた。どうやら途中で寝てしまっていたようだ。隣の席では、安田がスマートフォンで動画を見ている。
「頭痛いの治った?」
僕が起きた事に気づくと、安田はイヤホンを外して心配そうに声を掛けてくれた。
「うん、大分楽になったわ、悪いな」
「高山病かね?」
「いや、ただの風邪じゃないかな。それと、二日酔いだな」
「昨日の晩、そんなに田中さんに付き合ったの?」
「いや……、独り飲み」
「あっはは、珍しいこって。さて、降りるか」
僕たちは、スキー道具を持って東京駅のホームに降りると、先に大宮駅で降りた田中さん以外のメンバーで別れの挨拶をして、その場で解散した。
僕は、大岡山駅に向かう京浜東北線に乗る為に、乗り換え口を出てホームに向かう。途中、中央線に乗り換える安田や宇野と、手を振って別れてから階段を上った。みんなさすがに疲れていたのだろう、結局別れるまで無言のままだった。
ホームにタイミング良く大船行きの京浜東北線が入ってきたので、僕は少し混んでいる電車にスキー道具を持ちながら小走りで乗り込んだ。そして15分程乗ってから、大井町で降りて東急大井町線に乗り換える。
大学を卒業して社会人になってからもアパートを替えてないので、もう10年近く今でも毎日のように乗っている電車だ。ただ、今日だけは普段と違った感情で暗くなった窓の外を眺めている。
大岡山の駅で降りて改札を出ると、そこは昔、何度も幸恵と待ち合わせをした場所だ。ここで会った時の彼女はいつも、僕の大好きだった綺麗な三日月型の目で、笑ってくれた。
僕は駅を出ると、そのままロータリーを抜けて、路地に入る手前のベンチに座った。この先には、幸恵に告白した場所までの細い道が続いている。
10年近くが経ち、駅も駅周辺も整備されたが、不思議とこの道だけは当時と変わらず、薄暗い街灯もあの時のままだ。しかし、あの頃一緒に過ごした幸恵はもうこの世にはいない……。
今日の僕は、幸恵も気に入っていたフレーズの『嫌でも』あの時の事を思い出してしまう。
「間もなく終点東京です。東海道新幹線、山手線、京浜東北線、中央線、東海道線、……」
上越新幹線のアナウンスの音で、僕は目覚めた。どうやら途中で寝てしまっていたようだ。隣の席では、安田がスマートフォンで動画を見ている。
「頭痛いの治った?」
僕が起きた事に気づくと、安田はイヤホンを外して心配そうに声を掛けてくれた。
「うん、大分楽になったわ、悪いな」
「高山病かね?」
「いや、ただの風邪じゃないかな。それと、二日酔いだな」
「昨日の晩、そんなに田中さんに付き合ったの?」
「いや……、独り飲み」
「あっはは、珍しいこって。さて、降りるか」
僕たちは、スキー道具を持って東京駅のホームに降りると、先に大宮駅で降りた田中さん以外のメンバーで別れの挨拶をして、その場で解散した。
僕は、大岡山駅に向かう京浜東北線に乗る為に、乗り換え口を出てホームに向かう。途中、中央線に乗り換える安田や宇野と、手を振って別れてから階段を上った。みんなさすがに疲れていたのだろう、結局別れるまで無言のままだった。
ホームにタイミング良く大船行きの京浜東北線が入ってきたので、僕は少し混んでいる電車にスキー道具を持ちながら小走りで乗り込んだ。そして15分程乗ってから、大井町で降りて東急大井町線に乗り換える。
大学を卒業して社会人になってからもアパートを替えてないので、もう10年近く今でも毎日のように乗っている電車だ。ただ、今日だけは普段と違った感情で暗くなった窓の外を眺めている。
大岡山の駅で降りて改札を出ると、そこは昔、何度も幸恵と待ち合わせをした場所だ。ここで会った時の彼女はいつも、僕の大好きだった綺麗な三日月型の目で、笑ってくれた。
僕は駅を出ると、そのままロータリーを抜けて、路地に入る手前のベンチに座った。この先には、幸恵に告白した場所までの細い道が続いている。
10年近くが経ち、駅も駅周辺も整備されたが、不思議とこの道だけは当時と変わらず、薄暗い街灯もあの時のままだ。しかし、あの頃一緒に過ごした幸恵はもうこの世にはいない……。
今日の僕は、幸恵も気に入っていたフレーズの『嫌でも』あの時の事を思い出してしまう。