ユダの場合

文字数 352文字

 それからどこをどう歩いたのか覚えていません。気がついたら私は、町外れの丘の上にいました。皇帝の城に目をやりました。今ごろ先生は、あの中で断罪されている最中でしょう。
 手の中には先ほど拾った縄がありました。今の私に最も相応しいものです。兆度良い木が目の前に立っています。私はその枝に縄をかけました。
 もう一度城に目をやろうと思いましたが、その勇気は出ませんでした。私は一刻も早く楽になりたかったのです。罪に気づいてしまった人間が楽になる方法は二つだけです。赦されること。もしくは裁かれること。
 それならば、私は自分で自分を裁きましょう。

 イスカリオテのユダ。お前は裏切り者の長として、これから先未来永劫、呪われるがいい。
 お前など、生まれてこなければ良かったのだ。

 さようなら。


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