肉球爆裂★オンライン:コメディ青春8000字

文字数 8,116文字



にゃーん。
にゃーん。
にゃーん。テレレレッレレー♪
にゃーん。
 レベルアップしました。
にゃーん。

なんでこんな変なアプリ作ったんだろ。

にゃーん。
にゃーん。
 記念アバター【肉球赤】を取得しました。
にゃーん。

俺は只今絶賛アプリのバグ探し中。
そして何回目かの再登録。通称リセマラ。再登録はたいていネトゲで禁止されがちな行為だけど、でも大丈夫、このアプリ作ったの俺とナカヤンだから。
このリセマラの発端は昨日深夜の慌てた電話だった。

「タッチー、6ch見て」
「は? 6ch?」
「そうそう、3日くらい前からアクセス激増しただろ、原因わかったよ」
「ちょっとまって、俺も見てみるわ、アプリ総合?」
「いや、そっちじゃなくて都市伝説@オンラインってやつ」
「は? 都市伝説? なんぞそれ」
「いいから見て」



( ^A^)都市伝説@オンライン ★34
1 ON市民 6/03 17:19:49 ID:C2PwK2YB
ここはオンライン上に発生した都市伝説とその噂について語らうスレです。
次スレはオンライン怪談が立てて下さい。
怪談が立ててくれない場合は誰かが立てて下さい。

>>前スレURL

952 ON市民 11/02 17:19:49
肉球破裂オンラインでまじ猫の霊が出る
>>URL

960 ON市民 11/06 00:11:48
>>952
は?
つか糞つまんなくね? これ

961 ON市民 11/06 15:51:44
>>957,960
いやまじで
フラグはわからんが3000回目位のタップで守護霊アバターっていうのが出たら
画面から猫がでた
めっちゃリセマラしたら友達も出た

967 ON市民 11/07 00:37:45
>>961
は?

973 ON市民 11/07 00:52:59
>>961
は?

962 ON市民 11/07 23:49:31
あ 出た 1500回目くらい
>>967,973
お前ら仲いいなwww



その後は守護霊が出た報告が続いた。
守護霊アバター?
そんなの実装したかな。
アバター画像を作成したのはナカヤンの彼女の西松さん。アップロードする前に大量の猫画像データを全部チェックしたけど、その中で【守護霊】なんて見た記憶はない。

「ナカヤン、アバター追加したん?」
「してない。だからなん何だろと思って」
「これって不具合なの? バグレポは届いてないよね」
「目に見えるエラーは出てない。アクセスが多すぎて鯖が落ちた以外は」
「放置しちゃまずいん?」
「そのうちでかいエラーに繋がったら困る。えっと、コードは俺が調べるからタッチーはバグ取りして」
「うぇぇまじで? 悪夢再び」

そんなわけで俺はひたすら画面に表示された猫の頭をタップしている。アプリ公開前にもしたけど、バグ取りとは孤独で辛い作業である。アプリに不具合がないか、ありとあらゆる動作をチェックする。更にこのアプリで何が辛いかというと、糞つまんないんだわ。
そもそもこれは俺らが大学の夏休みの暇つぶしと小遣い稼ぎに作ったアプリ、『肉球爆裂★オンライン』。画面上に表示された猫の頭とか肉球をタップしたら『にゃーん』という音が出る、基本それだけ。たくさんタップすると、たまにねこの鳴き声とか顔とか服を変えるアバターがゲットできる。それだけのアプリ。
 ようはジョークソフトってやつ。最初から長時間やり続けることを想定してない。

にゃーん。
にゃーん。

それが3日くらい前からアクセスが急増した。ひょっとしたらどこかのサイトで紹介でもされたのかなと思って探したけどそれも見当たらず。見当たらないわけだよ、だって『肉球破裂』になってるんだもん。破裂したら可哀想だろ。

にゃーん。
にゃーん。

そんなわけで、俺は本当にそんな不具合(?)が発生しているのか、リセマラしながらもう何時間もぺちぺち猫の顔をタップしている。でも噂の守護霊なんて全然でない。カケラも出ない。
そもそも『猫が出る』ってなんだよ。ガセネタだろと思ったが、スレでは守護霊確認報告が相次いでいる。検証も行われていて、1000~4000タップで【守護霊】が発生することが多いらしい。
4000タップって。1タップ1秒としても1時間以上だろ? 手が破裂しちゃうじゃん。

にゃーん。
にゃーん。
 アバター【きゅうり猫】を取得しました。

きゅうり猫? と思ってナカヤンが送ってきたアバターリストを見たが存在した。なんだこれ。
でも変なアバターでもプログラム内に存在してれば問題はないんだ。エラーじゃない。

にゃーん。

リストを見直してもやっぱり【守護霊】というアバターはなかった。ナカヤンもコード内にそんなアバターは登録されてないって言ってた。意味がわからないよね。

◇◇◇

結局朝までタップしたけど【守護霊】出なかった。かわりに俺の指が破裂しそう。
今は学食でナカヤンと打ち合わせ名目の昼飯中。

「ガセじゃないの? 西松さんそもそも【守護霊】描いてないんだろ?」
「そう。画像データも確認したけど【守護霊】なんてなかった」
「スレでもスクショ上がってないじゃん。虚報じゃね?」

ジョークソフトだけに?
にゃーん。

「えーとこれ。ざっと見たけど変なとこは1個だけ。11/2に変なアクセスがある。国名表示がバグってる」
「ウィルス?」
「どこぞの国が変なもん送ってくるのはいつものことだけど別口。んー。そのアクセスは国表示がバグってるんだ、数カ国経由することはあっても国表示がバグるって普通ない。でもそのアクセス自体は別に何かした形跡はないんだよな」
「ふうん、よくわかんね」

俺の担当はアイデアだもん。だから他にできることないだろっていわれていつもデバッグを押しつけられるわけで。うどんすすりながら今も左手小指でぺちぺち中。他の指は破裂しそう。つらたん。
にゃーん。
にゃーん。
 レベルアップしました。
高木が通りかかりました。高木は同じクラスのやつで。

「あれタッチー肉球やってんの?」
「高木これ知ってんの?」
「うん、最近噂になってる奴だろ? 俺も【守護霊】ゲットしたし」
「「ブッ」」

うどんと冷やし中華が同時に空を舞う。
にゃーん。

「なんだよ汚いな」
「ちょちょ、それ見してマジで」
「えっ。まずくない?」
「まずいって何が?」
「ゲット自体は広めて中身を秘密にするように【守護霊】に言われてるんだ」
「【守護霊】に? なんで」
「まあ、色々やばいからじゃない?」
「ヤバいってなんだよ。肉球作ったの俺らだぞ?」
「えっ? お前らヤバい組織なの?」

なんだそれ。
聞くと【守護霊】ゲットしたらスマホ内に知らないアプリが勝手にいくつか増えたらしい。それを聞いたナカヤンは真っ青になって冷やし中華に落下しそうになった。

「ちょっ、それ本当ヤバい、どうしよう」
「ヤバいん?」
「ヤバい、かなりヤバい。勝手にアプリ突っ込むとか酷いウィルスだぞ? なんで認証通ってるんだ? それでユーザーに損害が出たらこっちがすごい額請求されかねない」
「へー」
「ってタッチーも共同代表だぞ?」

そうだった。俺も青くなった。
にゃーん。

「そんなわけで【守護霊】みせて」
「ええっやだ」
「でも俺ら破産するかも知れんもん」

無理やりスマホを奪ったら、『肉球爆裂★オンライン』と似たような感じのアイコンがいくつかあった。『猫予報』、『猫警報』。なんだこれ。

「ええとこれ? 増えたやつって」
「そう。猫予報を押すと予言が出る。猫警報はやばい事が起こりそうになったら鳴るらしい」
「なんだそれ」
「あっ、やめて、開かないで」

高木の『肉球爆裂★オンライン』をタップするとスマホの画面が薄く光って透き通る猫がスマホからぽわんと浮かび上がった。えっ? 何これ。ホログラム?
 猫は最初は偉そうに胸をそらし、その後キョロキョロと不安げにあたりを見渡して俺とナカヤンに気づいてビクッとして、そっとスマホに沈んで消えていった。

「高木なにこれ」
「【守護霊】」
「なあナカヤン、これどうやってんの?」
「わかんない。俺に聞かないで」

もう一度アプリをタップする。先ほどの透明な猫が頭の半分だけ恐る恐る浮かび上がり、目だけ見せてまた沈んでいった。
可愛いけどこれ明らかに俺らの技術超えてるよね? スマホにホログラム機能とかないよね。どうなってるのこれ。
アプリを連打したけどもうでてこない。

「どうしよどうしよ。タッチー、俺らのアプリ呪われてんの?」
「まさに都市伝説オンライン」
「どうしたらいい? 呪いとかまじわかんない」
「まだ損害報告出てないならとりあえずストアから取り下げて削除申請しとくか」
『まつにゃ』

慌てた声がして高木のスマホから猫の耳だけ出た。

『こまるにゃ。このままはだめにゃ?』
「そんなこと言われても俺らも困るんだよ」
『あと5にちまってほしいにゃ』
「5日後になんかあんの?」
『げんざい、このひのもとでは猫神と犬神がたたかっているのにゃ』
「はぁ?」

耳がビクッと揺れて必死な声が続く。

『けっせんは5にちごなのにゃ。猫神がまけるとたいへんにゃ。それまでなにとぞ、なにとぞおたのみもうすにゃ』
「やだ」

「タッチー可哀想だよ、ねね。負けるとどうなるの?」
『なんと!』

スマホから出た三角の耳がぴるると動く。
ゴクリとナカヤンの喉が鳴る。

『犬がいばるのにゃ!』
「ナカヤン消して」
『まつにゃ! ぬしらはこのアプリをつくったにゃ? 猫派でないのかにゃ?』
「いや、猫好きなのキャラデザした西松さんだし。俺は別に」
『そんにゃ! しょうりのあかつき、にはおれいをすると猫神様いってたにゃ』
「お礼って何かもらえるの?」
『猫神様の肉球をおしたおまもりを』
「却下」

にゃーん、という絶望したような声とともにずぶずぶと耳がスマホに沈んでいく。
高木から声がかかる。

「可哀想じゃね?」
「高木には他人事かもしれんけどさ、ソンガイバイショーとか言われても困るもん」
『そのソンガイバイショーとやらがなければよいのかにゃ』

また少しだけ耳が出る。ええい鬱陶しいわ。試しに耳を摘むと摘めたから引っ張り上げた。守護霊って触れるんだ。必死に手足をばたばたさせている。

『はなすにゃ! すぐにはなすにゃ!』
「出たり入ったり面倒くせぇ。話進まないじゃん」
『はなすにゃ! はなすからはなすにゃ!』
「何言ってんのこれ?」
「話をするから離せってことじゃね?」

あぁ。
それでスマホの上にちょこんと正座した神妙な顔の【守護霊】と真面目に話した。
俺らは莫大な請求とやらをされなきゃいい。それに妙なアクセスアップでまとまった小銭が通帳に転がり込んできてたから寧ろアプリを消したくはなかった。
損害賠償については決戦後はアプリが消滅して証拠も残らないから問題ないらしい。そういうもん?

こいつらの目的は馬鹿馬鹿しかった。
年に一度、猫と犬がどちらが偉いか決めるそうな。勝負の方法はじゃんけんだったりくじびきだったり。今年はなぜだかアプリによる信仰集め。猫のことを念じてタップして信仰心を集めてその量で勝負が決まる。デジタルなんだかアナログなんだからわからない。

「なんで俺らのアプリなのよ」
『ゆうめいアプリはそこあげがあるから、おなじころにできたむめいなアプリでしょうぶすることになったにゃ』
「なんかイラッときた」
「まあ事実だろ、あれ? じゃあ犬アプリもある? ひょっとして」
「あっ、田所か」

さらにムカッときた。田所は前に西松さんを狙ってたから、俺らというかナカヤンに妙に張り合ってくる。
夏休み入る前にアプリの相談してたら近くで聞いてたのか企画丸パクられた。バックれてたけど友達に俺らのより面白いって言って犬アプリ勧めてたの知ってるし。仕様はほとんど同じで公開時期も大体同じ。勝負で比べるには丁度いいのかもしれん。俺らが勝負をつけるのにも。
田所にはムカついてたからメタメタのぶっち切りでのしてやりたい。

「負けらんねーな、ソンガイバイショーないならいいんだろ?」
「仕方ないね」
「猫、手伝ってやるよ。協力するのはいいんだよな」
『うれしいにゃ!』

守護霊の仕様は5000タップまでに猫への愛が一定量を超えると出るらしい。上限があるのは愛の強いユーザーに限定してリソースを割くため。数字で愛を分けるとか、ドライすぎくない?
そういえば俺は別に猫への愛なかった。淡々とツマンネと思ってぺちぺちしてた。ひどい無駄骨。俺のデバッグ時間を返して欲しい。

それで愛の量によってアプリが増えてご利益も増え、愛がさらに増してどんどん愛が集まるらしい。何このネズミ講的なやつ。猫だから?
高木の持ってるアプリ『猫予報』と『猫警報』は信仰度が真ん中ランクらしい。でも『猫予報』ってその日猫に会う回数に応じて吉凶が表示されて『猫警報』は犬が近づくと鳴るらしい。誰得。

「この辺改良したほうがいいんじゃないの?」
「だよな」
『どうすればいいにゃ』
「うーん、まあ猫好きな人がDLしてるんだから『猫予報』の方向性はいいと思うんだけど」
「数で吉凶言われても意味ないだろ、会う数がわかるならどこで会うかもわかるよな。それならどこで会えるか表示したほうがいいんじゃないか? アプリ使って出会えたんなら愛も増えるだろ」
『なるほどにゃ!』
「『猫警報』は正直微妙。猫好き=犬嫌いなわけでもないよね」
『そんにゃばかにゃ!』

猫は白目を剥いた後、茫然とよよよと崩れ落ちた。
アバターにしては芸が細かい。

「高木は猫好きなんだろ? なんかいいアイデアないか」
「うーん、猫の気持ちがわかるとか」
「ニャーリンガルか。喜怒哀楽だけでもわかると爆売れしそうだな」
『そんなのみればわかるにゃ?』
「人間はわかんないんだよ」
『にゃんと!』

人間にアピールするには人間向けのマーケティングは必要。ってことで西松さんとか高木の猫好き仲間とか6chの猫好きスレで意見を集めて以下の機能が実装された。
 Lv1.地図と同期して猫の位置がわかる『猫地図』
 Lv2.猫の喜怒哀楽が色でわかる『猫感』
 Lv3.半径500メートル圏内の猫が寄ってくる『猫寄せ』
 Lv4.猫が5秒動きを止める『猫ストップ』
 Lv5.猫神様が1日1回呟く『猫大予言』
最後の要らなくね? 猫神様のありがたいお言葉が1番とか自信満々に言ってたけどさ。俺は何も作業やらなくていいからどうでもいいんだけど。
ナカヤンが真剣にプログラム外注したいって言ってたけど、これはプログラムじゃなくて呪いとか神力とかいうものだから違うらしい。残念だったな。

それで俺らは都市伝説@オンライン以外にも猫好きスレ含む色々なスレに情報を撒いた。6chを色々覗いたけど、犬アプリの情報や噂はなかった。
その結果、勝負は圧勝だった。信仰はよくわからんがストアを見るとDL数は犬アプリの千倍だ。高木に聞いたら【守護霊】は猫が勝ったと喜んで踊り狂って、勝負が終わったら増えたアプリごと【守護霊】アバターは消えたそうだ。スレはいつのまにか噂は虚報ということになっていた。

高木は残念がってたけど結局ソンガイバイショーされることもなく、増えた小銭でホクホクした。
田所はそもそもそんな勝負が行われていたこと自体気付いていなくて腑に落ちないが、猫神がどうとか自慢しても頭おかしいとしか思われなさそうだから放っておく。

◇◇◇

夜中ふと目が覚めると変なところにいた。
正面には偉そうな太った猫と犬がいて、左に猫、右に犬がずらっと並んでいた。俺の右には全裸のナカヤン、左には猫柄パジャマの高木がいた。大学生でそのパジャマかよ。なお俺はTシャツに短パン。普通。
ドンドンとドラのような音が打ち鳴らされ、正面から偉そうな犬の声が聞こえた。

『諮問する。そなたらは我らの勝負に卑劣な手を用いたと聞くが誠か?』
「はぁ?」

俺の返答に大きなざわめきが起こる。

『無礼な! 犬神様のご諮問ぞ』
「知らねぇよ。気持ちよく寝てたのによ」

まじだるい。さらに周りはざわつく。正面左の猫神も多分おろおろしている。
高木もオタオタしているが、ナカヤンは全裸で寝てた。というかそもそも起きてなかった。ナカヤンは1回寝ると朝まで起きない。

「卑劣な手段てなんだよ」
『我らの神聖なる勝負に人間が手を貸したと聞いたのだ』
「手を貸したってのは何を指すんだ」
『手を貸したは手を貸したであろう?』
「ハッ。お話になんねぇ。定義を明確にしろや」

ざわつきは怒号になり、俺らの方に飛び出そうとする犬を周りの犬が抑えている始末。猫はなんか床でゴロゴロしてた。猫に整列させるのは無理があると思う。
前提を確認したところ、勝負のルールはほとんど決まっていなかった。犬の解釈ではルールにないことは何もしてはならず、猫の解釈ではルールにないことは何をしてもいい。そもそも前提が違いすぎるだろ、毎回こうなのか? ジャンケンやくじ引きだと問題にならなかっただけかな。

「そもそもルールきっちり決めてないから揉めるんだろ、だいたい俺らは【守護霊】と話しただけで何もしてねぇ。スレに書き込んだくらいで他にも書き込んでる奴がたくさんいるだろ、何が問題なんだ」
『そうにゃ! もんだいないにゃ!』
『だが人間の手を借りてアプリを改造したというではないか』

猫神の発言は華麗にスルーされたがいつものことなのか周りの反応はない。

「改造したのは猫どもだろ。俺らは何もしてねぇ。そもそも勝手にバグばらまかれて迷惑だ」
『だが、それによって利益を得たのであろう? それを目的に手を貸したのではないか』

犬のほうがまだ賢い。
だが犬猫に口で負けるかよ。必殺論理のすり替え。

「俺らは猫のせいで大損する可能性があったんだぞ。むしろ被害者だ」
『うむ?』
「アプリに勝手に手を加えるのは人間では地獄に落ちるレベルの所業だ。それにそういや謝礼ももらってないぞ」
『謝礼?』
「手間賃。無断で俺らのアプリを利用しただろ? 対価はあってしかるべきだ。そうじゃなきゃアプリを自前で用意すべき。そしたらそもそも俺らは関係なかった」
『不遜である! 控えろ』
「外野は黙ってろ」
『なるほど、それは確かに一理ある。そなたらのアプリを使用したゆえそなたらが関与することになったのも事実であるか』
「だろ、ならなんかくれ」
『相わかった。こちらの不手際である』

お、まじで? 物分かりい。
でも肉球色紙とかはいらない。

「俺らの利益になるもんで頼む」
『利益?』
「そう、人間は犬猫とは違うんだ。犬猫からありがたいお言葉とかもらっても意味がねぇ。できればこのアプリの機能追加で! お願いシャス!」
『左様であるな。中身は猫と検討しよう。では足労であった。お引取り願おう』

俺は『守護霊』が追加したような特殊機能を期待しつつ、いつのまにか眠りに落ちてしまった、ようだ。

◇◇◇

「結局猫なんだよな、猫。猫の脳みそに期待したのが悪かった」
「ねえ、それそもそも夢なんじゃないの?」
「夢じゃないって。『猫神』アバター実装されてるじゃん」
「まぁそうだけどさ、でもこれ御利益っていわれても。むしろウィルスじゃないの?」

俺の目の前には『猫神』のアバター。
だまし絵みたいに立体的に見えるアバター。これを描くスキルは凄いけど、この絵、正直俺らのアプリに全然あってない。西松さんに言ったら多分削除しろってガチ切れられそう。ドラいもんの世界のなかに突然現れた南斗の拳みたいな劇画調の猫神様アバター。国名のない謎のユーザーが追加していったようだ。

「ナカヤン、結局損したの?」
「うーん、微妙プラス? でも経費かかっちゃったからねぇ、何もないほうが儲かったのは確か」

俺と高木は記憶がないナカヤンを必死で説得して、御利益を期待してサーバーを増設をした。だって『猫地図』とか『猫寄せ』が実装されたら大儲け確実じゃん!
ナカヤンは素っ裸で冷たい廊下で寝てたせいか少し風邪気味だった。

都市伝説@オンラインを見る。
【猫神】アバターの写真がUPされて、ガセ情報として処理されていた。

「まさに都市伝説@オンラインだったな」

一連の騒ぎでアプリのDLが増えたけど、変なアバターが増えたくらいじゃ続かない。だってこのアプリ、糞つまんないんだもん。
にゃーん。
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