にゃーむーの生活:吾輩は猫である500字

文字数 552文字

 にゃーむーは猫である。
 名前はまだない。
 にゃーむーというのは仮の名だ、と言い張っているニンゲンとこれが正式名称だと言い張っているニンゲンがいる。言い争っているということはおそらく確定はしていないのであろう。つまり、名前はまだない。
 猫と呼ばれる時もあるが、それは種族名なので名付けとはまた異なるカテゴライズの概念なのだろう。

 もともと『にゃーむー』とは動詞だった。
 古屋敷夜道(こやしきよみち)がにゃーにゃーをむにむにするという意味で『にゃーむーしてくる』と言いだしたのが始まりだ。
 古屋敷夜道とはこの事務所にたまに現れる人間の女だ。にゃーと鳴くと首筋をもにもにと揉んでいく。
 にゃーむーは古屋敷夜道の前に事務所にいた女に拾われた。そういえばあれは雨の降った夜だった。ぞんざいに事務所に放り込まれ、それ以降はここで暮らしている。

 ここで1番偉い西野木(にしのぎ)という人間は扱いがぞんざいだ。毎日同じ餌でも気がついていないようだ。とはいえ朝晩にまめに水は交換する。古屋敷夜道が来ると時折高級な餌をもらえる。

 それにしても不思議な生き物だ。言語が違うから声をかけても意思疎通はできないだろう。だが試みてみよう。

「ニャー」
「あれ? 公晴(きみはる)さん猫好きなんですか?」

 やはり言語は通じないらしい。にゃーむーは不思議そうに私を見ている。

Fin
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