一文小説集「見たくない」等五篇

文字数 224文字

「見たくない」

 今日は豚の霊を見たくないので、定食屋で豚カツを食う時、お経が書かれた方の瓶のソースをかけた。



「点滅」

 空気清浄機の注意ランプが点滅しているので、ため息を控える。



「墨」

 墨の匂いがだんだん薄くなってきて、この嘘の夜空が明けるのが近いことを知る。



「着替え」

 夜中の墓地で服を着替えていた女が、突然、目の前の墓石にビンタした。



「貧乏ゆすり」

 火葬場の煙突のてっぺんに座って貧乏ゆすりをしている人がいて、小さな黒い物がひらひらと落ちてくる。
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