第42話
文字数 891文字
このお店は和風にアレンジされたイタリアンと各種のお酒を楽しめて店内もシックにまとめられている洒落た雰囲気のお店だ。
(料理も良いし。何より店の佇まいが良い。リピート確定!大事な商談や接待にも使えそうだ
し独りで来るのもアリかも。しかし、こんなお店に通っていたなんて意外だわ)
等と思い巡らせて居る順子の横には、先刻のスマホの着信音の主だった林田が居る。
林田に呼び出されてこの店に来てから、かれこれ一時間ほどが経って居る。
その間、二人の会話は互いの身の上話から専ら林田のジャズ愛についての話に費やされていた。その話によると、林田は大学生の頃からジャズに傾倒し仲間とジャズ喫茶に通い詰めビバップと呼ばれるジャズのベース奏者として活動していた時期があったのだそうだ。
そして大学卒業後も就職はせずに本気でジャズ奏者として身を立て様と考えてもいたそうで、特にアメリカのベース奏者でジャズミュージシャンのレイ・ブラウンをこよなく愛し尊敬している。
そんな話を楽しそうに語る林田に順子は、(意外だわ・・林田さんにジャズ・・イメージだけだとフォークか演歌好きに思えるけど。人って見かけだけではやはり判断してはいけないもんだわ。それにしてもジャズ・・余り聴かないなぁ・・)と思いつつ不思議と退屈することなく林田の語りの巧みさもあって楽しく聞き入っていた。
(にしても、以前から感じては居たのだけど林田さんって、やはり掴みどころが無いと云うか独特な雰囲気の持ち主だな)とも順子は感じていた。
以前竹田から聞いた林田の人となりも含めて、順子の林田のイメージは癒しキャラではなく。
かといって頼りないという事でもないし集団のリーダーとして率先して引っ張るタイプでもない。それでいて他人任せと云う事でもない。結局、掴みどころがない。となる。
しかし、やはり竹田が言っていた、「俺たちのリーダーは、やっぱりあの人しか居らん(おらん)なということですわ」の意味だけはこうしてジックリと話し込んでみて理解出来た気がした。