第41話
文字数 729文字
そう、瓦解の二文字が順子の頭の中でグルグルと駆け巡っている。
昨夜の竹田と芳本の対立は寸でのところで林田が間に入ったことで最悪の状況だけは避けることが出来た。
しかし、その後はとても会議を続けられる雰囲気には戻らずに結局散会となったのだ。
その後、竹原の慰めにもならない多くの言葉をBGMの様に聞き流しながら帰宅途中の天王寺で痛飲し、どうやって事務所兼自宅マンションに辿り着いたのか覚えていない。
目が覚めるまで寝入っていた順子はベッドの上で寝間着に着替えることもなく寝落ちしてしまったらしく昨日と同じ服のまま座り込んで居る。
寝起きということもあるが。その様子は放心状態といった体で、昨夜の会議での自分の芳本への不用意な対応に呆れて自己嫌悪にも陥っている。
(パンドラの箱を開けて火に油を注いだのは間違いなく私だった。自分の言葉に酔いしれてしまい調子に乗って相手を打ち負かして退路を塞いでしまった。何てバカなことを)
どんなに後悔して反省しても時間は戻らない。そんなどうにもならない気持ちを無限ループの様に反復し呆けた表情の姿は、まるで戦に敗れて彷徨った挙句に力尽きて座り込んで居る落武者の様だ。
そんな重苦しく無言の時間を打ち消すかのように突然、恐らくはバックの中にしまわれたままのスマホの着信バイブ音が鳴り出し、止まっていた順子の思考を少しだけ動かし始めた。
いつもなら狙った獲物を取り逃がさない肉食動物の様な俊敏な動きでスマホを手にする順子なのだが、「ハヨ出ぃ!」と言わんばかりに鳴り響いているスマホが入っているバックをボンヤリ眺めながら、(今は、誰とも話したくないないなぁ・・)と若干、現実逃避に陥っている。