第93話
文字数 867文字
そんな想いを感じて順子が身を置くこの空間には、樹里の父親で真弓姐さんの亭主・武の姿も、そして、大川の乱の影の首謀者である関西芸術大学の村井定嗣准教授の姿も在る。
ノーサイド、皆、皆、この瞬間を楽しんで居る。と、順子は感じていた。
ふと、この場にはもう居ないが深大寺創建を想った。
(深大寺さん。ある意味、一番ケッタイで、最後まで掴みどころが無い人でした。でも、あなたにはモノ創りの何たるかを改めて教えられた気がしています。繊細にて大胆。それでいて実に巧みな采配と演出には只々感服です。また、その容姿と口調のキャラクターは実に見事なセルフプロデュースと言わざるを得ません。全ては嫌ですが一部分だけでも見倣いたいと思っています。
また一緒にお仕事が出来ることを今から楽しみにしています)。
等と考えていると、PAブースで進行をもっともらしい表情で見詰めている竹原と田山の姿が目に入って来た。
(田山、今日も多くを考えずにひたすら動き回っていたネ。ウン、いいよ、今はそのフットワークこそが大事。ガンバレ!)
そして竹原に目を向けた順子は、(あんたには助けられてばかりだね。私が広告代理店を退社しプラニング・ミューを立ち上げた時に、同じく会社を離れて付いて来てくれた。
言葉にして伝えられていないけど・・とても嬉しかったし心強かったヨ。これからも頼むね。
きっと、こんなこと言葉にして伝えられないと思うけど。そうそう、今日のアンタのファインプレーは、てるてる坊主、ナイスでした)。