朝の微睡み

文字数 2,227文字

    カレンは、目を覚ました。こんなにも清々しい朝なのに、何故か生々しいのは昨夜の行為が原因である。

    昨夜は凄かった。アレンとカレンは、何度もこの世の果てを見た。カレンは、今回した行為を途中までは覚えているが、最後の方は覚えていなかった。汗やその他諸々も綺麗に拭き取られており、違和感はなかった。

    そんな事もお構い無しにアレンは眠っていた。もちろんカレンの目の前には、アレンの胸板が飛び込んでくる。カレンが布団の中を覗きこんでみると、アレンとカレンは裸であった。

    優しく出来ない、と言っていたアレンはとてもカレンを優しく扱ってくれたことを覚えている。

    カレンは、布団の中からモゾモゾと出ようとしたが、アレンに手を握られており、出れそうになさそうだ。

    後、昨夜行為に及ぶ前に飲んだホットミルクには、惚れ薬が仕組まれていたみたいだ。そりゃ、急にあんなことやこんなこと言いたくなる。

    ようやく、アレンが目を覚ました。

おはよう、カレン。昨日は、あまり余裕がなくて優しく出来なかったような気がして……
そんな事ありませんわ。私は、アレンとあんなことやこんなことが出来て嬉しいですわ
でも……
    心配そうにカレンを見つめるアレン。

    カレンは、

隙あり、です!!
    カレンが、アレンに強烈なデコピンをした。勿論の事アレンは、痛さに涙目になって弱々しく抗議してくる。
痛いですよ!!    どうしていきなりデコピンするんですか!?
弱々しいアレンは見たくないですわ。昨夜と同じぐらいの勢いでお願いしますよ。これから戦場に行くのですから!!
    カレンの言う戦場というのは、実家に久しぶりに戻るという事なのだろう。カレンは、ファイティングポーズを作った。
そのファイティングポーズは何ですか?    何か意味があるのですか?
特に意味はないですわ。これは、私が家族と戦うのに必要な心構えなんです!!
何故家族と戦う必要があるのですか?!
    アレンは、驚きを隠せない。
だって、私は家族と揉めているのですよ。これは、私の責任ですし仕方ないことですが……。だけど、私には勇気がありません。お兄様に会うのが怖いです……
それでも、謝らないと先に進めないです。だから、これからの為に何とかこの案件を解決しましょう!!
とにかく、着替えて朝ごはんにしましょうよ
そうだね
    アレンとカレンは急いで着替える。その間も昨日の情事を思い返し、お互いと視線がぶつかり合うと赤面してしまった。

    着替え終わると椅子に座り、朝御飯をとり始めた。朝食は、ホットコーヒーと焼きたてのパンとフルーツが出てき、二人は無言で頬張った。

とにかく、カレンは自宅に戻ったら謝ること!!    分かってますよね?
分かってます!!
    とカレンが言う。

    しかし、その顔には不安が滲み出ていた。カレンは、ホットコーヒーにミルクと砂糖を多めに入れ、一口飲んだ。

それ甘すぎないですか?
私の舌はまだお子様なんです。だから、コーヒーはあまり好きじゃないです……。まだこれでも少し苦いくらいです……
そうなんですね……。僕の使わなかった砂糖とミルク使いますか?
    カレンは目を輝かせ、アレンの使わなかった砂糖とミルクを受け取った。それをコーヒーに入れ、カレンはコーヒーを一口飲んだ。
ありがとうございます、アレン。おかげでちょうど飲みやすい味わいになりましたわ
それは良かったです
アレンは、コーヒーにミルクや砂糖は入れないんですか?
    アレンは、首を縦には振らずに横に振った。
僕は、コーヒーはブラック派なんです。豆の味わいや香りを楽しみたいなぁ、って思って……
アレンは大人ですね。尊敬しますわ
僕は、まだ完全な大人にはなりきっていません。だから、カレンを守れるぐらい強くなりたいです!!
    アレンは、完全な大人にはなれていなかった。好きな人を守れていないことを負い目に落ち込むこともしばしばあった。

    しかし、カレンを愛する気持ちは誰よりも勝っていると思ってもいた。この思いを抱き、これからカレンの家族に会いに行く。どのように説明するかは、全く考えていない。その場の雰囲気に合わせる感じになりそうだ。

    その事を考えていると、カレンが発言をしてきた。

アレン、お願いがあります
何でしょうか?
私の家族に会うとき、婚約者を演じてほしいんです!!
婚約者ですか?!
    アレンは、驚きのあまり声が裏返ってしまう。アレンは、恥ずかしさのあまり口元を押さえ、頬を真っ赤に染めた。

    カレンはコーヒーを飲み干し、話を続ける。

いきなりアレンが私と一緒に家に行ったらビックリするにちがいありません。だから、ここで「 婚約者 」として私の家に行くんです。その方が、私も怒られずにすみますし、家族にも怪しまれません。良い作戦だと思いませんか?
確かに作戦としては怪しまれません。しかし、……
    アレンは口ごもってしまう。驚きの作戦にアレンは口出しすることが出来なかったのだ。音楽の女神と言われているカレンとこんなにも幸せな事をして良いのか……とアレンは思っていたのだ。

    そんな事を知らないカレンは立ち上がり、アレンの手首を掴んだ。コートを着て、ホテルの宿泊代を払うとそのまま外に出た。

    これから、カレンの家族の元に向かう。

    雪が舞うそんな1日が始まるのであった。

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登場人物紹介

アレン


落ちこぼれトランペット奏者。

とあるキリスト教の吹奏楽団で聖歌のみを演奏している。

19歳

カレン


天才フルート奏者の女性。

落ちこぼれトランペット奏者のアレンに音楽を教えている。

とあるキリスト教の吹奏楽団で聖歌のみを演奏している。

15歳

フェリックス


アレンの友達でルームメイト。

ホルンを担当している。

20歳

ルナ


カレンのルームメイト。

クラリネットを担当している。

アレンに対して、いい印象を抱いていない。

17歳

ロバート・ルター


聖マリア吹奏楽団の指揮者。

問題児の多さに頭を悩ませている。

62歳

サラ


トランペットパートのパートリーダー。

アレンを上達させようと奮闘する負けん気の強いリーダー気質の聖女。

21歳

ギルバード


トランペットパートのメンバーでアレンの友人。

アレンの本気を出したときの音色を聴いてからアレンに憧れを抱いている。

22歳

ジョージ


カレンのお兄さん。

20歳

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