カレンの思い
文字数 2,254文字
カレンは何度目か分からないため息をついた。アレンに告白をされてから何故かあの時の事を忘れることが出来ない。とてもあの景色とアレンの必死な表情にカレンは、ドキッとしたからだ。
カレンは、そのアレンの一世一代の大告白を無下に扱ってしまったことを後悔している。アレンの前から逃げたことも……。聖母・マリア様と主・イエス様に見られていたら、と考えるとカレンは非常に胸が締め付けられたかのように苦しくなった。
ルナはむすっとした表情を浮かべていたが、何とか納得してくれた。カレンは、もう一度大きなため息をついた。
こちらの誤解は解けたが、カレンはアレンとの関係に傷を生んでいる。これからは、こちらがメインになりそうだ。
ルナは、スキップをしながら扉を開け、部屋を出ていく。鼻歌まで聞こえてくる。その後、部屋の扉が虚しい音を立てて閉まった。また、カレンは一人になる。今度は、天に向かって祈りを捧げる。
しかし、誰の返事も返ってこない。何時ものようにフルートを吹いて気をまぎらわせよう、と思ったカレンは、フルートの入った楽器ケースと譜面を持ち、部屋を後にした。中庭に行けば何かが変わるかもしれない、とカレンは思った。
中庭には先客がいた。
優雅にテラスの椅子に腰をかけ、ホルンを吹いているイケメン男子であるフェリックスである。フェリックスは、カレンの気配に気がつき、ホルンを吹くのをやめた。そして、カレンに微笑みかける。
俺は別に何もしてないよ。ただ、落ち込む音楽の女神を見捨てる訳にはいかなかっただけだから……。俺ら、一応同じ聖マリア吹奏楽団のメンバーだしな。こういう時は、助け合わないといけないんだ。マリア様もそれを望まれているから……
フェリックスは、楽器を綺麗に磨き、楽器ケースにホルンを片付けた。楽器ケースを持ち、最後カレンにこう伝えた。
ここまで本気に恋しているアレンを見たことないよ。あいつは、本気だから諦めてなんかいない。これだけは、俺にもわかるよ。まぁ、けっこう顎で使っているけどね……。アレンには、伝えておくよ。じゃあね、カレンさん。冷えてきたから早く部屋に戻った方がいい。プレイヤーが風邪をひくわけにはいかないからね
フェリックスが立ち去った中庭には、微かに石鹸の香りが残っていた。バラの香りに混ざり、落ち着くような感じをカレンは覚えたのであった。思いは天へ……マリア様の為に祈り続ける……。