大好きな人のぬくもり
文字数 2,009文字
大好きな人のぬくもりは、本当に心地よい。穴の空いた隙間を埋めていってくれる……、そんな気がする。それがどれだけの時間がかかっても二人の思いは揺らぐことはないだろう。
カレンは黙ってしまう。アレンは、話を変えようと努力する。頭をフル回転させて、話題を変えようと……
暗闇に包まれた二人の部屋……。アレンの隣では頬を赤らめて照れているカレンの可愛らしい姿。見えていないが何となく分かる。じれったくアレンの隣で動くカレンにアレンも変な感情を抱いてしまう。
この渦巻く感情をアレンは知らない。初めて覚える感情だ。アレンは寝返りをうち、カレンと背中合わせにある。
カレンにいきなり抱きつかれたアレンの理性はどっかにおさらばしてしまったようだ。おさらばした理性を取り戻すためにアレンは目を瞑った。
カレンは、アレンに抱きついたままアレンの表情を覗きこんでみる。
カレンは、眠っているアレンの頬にキスを落とすと再びアレンに抱きつき眠りについたのであった。
カレンの可愛らしい寝言が口から漏れている。アレンの心を揺さぶるには、効果は抜群のようだ。決してアレンはロリコンではない……。そう思っておこう……。
アレンもいつの間にか眠くなってき、寝てしまったのであった。
アレンが時計を見るとまだ朝の5時であった。カーテンの隙間から青白い光がさしているのが分かる。アレンの後ろには、温かな大好きな人の温もりがある。一晩中、この体制で寝ていたのだろう。今思い返すとアレンは恥ずかしくなった。後、ルナを追い出した罪悪感も込み上げてきた。ルナは今頃フェリックスと同じ部屋で寝ているのだろう……と思う。
その時、アレンの背中に激しい痛みが走った。思わずアレンは声をあげてしまう。
いきなりアレンの耳元でカレンが叫んだ。アレンは驚き、カレンの方を見る。顔を真っ青にし、冷や汗を流して呻いているカレンの姿が目に入った。
アレンは、カレンに抱き締められたまま動けない。こんな時に何も出来ないなんて……、とアレンの心に芽生える。
アレンが優しくカレンを抱き締め、頭を撫でる。すると、いつの間にかカレンは落ち着き、眠りについていた。
アレンは良かったと思い、再びカレンの頬にキスを落とした。冷たい汗が流れた後があったが、アレンはそんなことは気にしていなかった。カレンが落ち着いてくれた事に安心したのである。
アレンは疑問に思った。カレンは、天才だと言われる前は、落ちこぼれだった。その言葉にアレンは引っ掛かりを覚えていた。カレンが落ちこぼれなのは信じたくない。彼女がどうやって落ちこぼれから脱出したのかも気になった。
アレンが再び眠りについた頃、カレンは目を覚ました。アレンに抱き締められている事にカレンは安心感を覚えた。先程の悪夢もどこかに飛んでいってしまったようにカレンの心は落ち着いていた。
カレンは、アレンの胸板に顔を押し当て、声をあげずに涙を流したのであった。やはり、アレンの近くは安心する。カレンにとっては、お兄様に似ていて大好きな人なのだから……。部屋の暖炉はいつの間にか薪が燃え尽き、部屋の温かさはどこかにいってしまっていた。