女神の導き
文字数 2,103文字
アレンは、次の音を吹き込んだ。やはり、音は綺麗に鳴らず、蛙が潰れたような音が鳴り響いた。空しい音色にカレンは大きなため息をついた。
子供のような無邪気な悪戯を企むような笑みを浮かべたカレンは、アレンに問い質す。アレンは、その様な現状にドキッとしてしまい、紅潮してしまう。
アレンは、言葉を探すのに苦労する。目を輝かせて答えを待っているカレンに答えない訳にはいかない。必死に答えを探し求める。アレンは、意を決したような表情をし、カレンに本当の事を告白したのである。顔を真っ赤にさせて、恥ずかしそうな仕草をしてしまったが、アレンは重い口を開いた。
アレンは、ビクビクしていた。カレンに嫌われるのではないか……また孤独な日々を過ごさないといけないのか……と。
情けない声でアレンはカレンの解答に不信感を抱く。しかし、彼女は本気だ。アレンは、諦めるしかなかったのだ。カレンを本気にさせたアレンは自身を恨むことしか出来なかったのだ。
アレンは戸惑いを見せる。理由は簡単だ。マリア様にお祈りや礼拝に参加するとき特に何も考えずにお祈りをしていたからだ。その事は、真面目なカレンには言いたくない、とアレンは口を閉ざしたのだ。
しかし、カレンには全てお見通しだ。カレンが悪戯な笑みを浮かべ、アレンに問いかけた。
そんな事はございませんわ。このキリスト教は誰でも始められるんですよ。だから、アレンさんもイエス・キリスト様やマリア様を信用してみる事が大事なのですわ。聖書も覚えることも大事なのですわよ。聖書は、語学の教科書と言われているぐらいですのよ……
そうですよ。私も落ちこぼれと言われていた頃もありましたわ。でもある日、私がお祈りに行った時にマリア様の御加護をうけることができたの。すると、生まれ変わったかのようにフルートが吹けるようになりましたのよ。私の話を信用してくれます?
カレンは、元々は落ちこぼれのフルート奏者だったらしい。しかしある日、マリア様の御加護を受けたことによって生まれ変わった。アレンにも出来るのか不安になったのであった。アレンは、マリア様を信用していいのか心の中で葛藤していた。葛藤していても仕方ない。アレンは、意を決した。
アレンは、心に決めた返事を返し、カレンと握手を交わしたのであった。
かくして、アレンとカレンのレッスンが始まるのであった。マリア様の御加護をこの二人に……。