告白

文字数 2,186文字

 翌日の早朝、アレンとカレンは教会の中庭にある薔薇の咲き誇るテラスに来ていた。  アレンは決意していた。

 今日こそアレンはカレンに告白する……と。

 今日は、快晴で鳥の囀ずりも聞こえてき、長閑な朝を迎えていた。そんな事を気にしていないカレンは、呑気にテラスの椅子に座り、鳥の囀ずりに耳を傾けていた。

あの……カレンさん……
何ですか?アレンさんから私に声をかけてくるなんて明日は嵐なのですかね?
僕は本気なんです!!
あらあら……。じゃあ、本気を私に見せてください
 アレンは、勇気を振り絞り大きな声で愛を叫んだのであった。
ぼ……僕は、カレンさんが大好きです!!僕とお付き合いしてください!!
 アレンは、恥ずかしさのあまり死にたくなった。ここでフラれたら大爆死だ。ネタにされてしまう。アレンは怖くて下を向いた。フラれて大爆死する運命が見えているから。
 一方のカレンは、アレンの告白に驚きを隠せず、開いた口が閉じない状態になってしまい、情けない表情になっていた。カレンは、アレンを見る。潤んだ琥珀色の瞳で見つめてくるアレンにカレンは、庇護したい、と感じてしまった。

 しかし、いきなり付き合ってほしいと言われたカレンは、初めて告白されたこともあり、返事の返しが分からなくなっていた。本当は、アレンの事が気になるけど……結婚するまでは自分の貞操を守らないといけない……というキリスト教のルールに則ってなかなか返事を返すことが出来なかった。

アレンさんの気持ちは嬉しいですわ。しかし、キリストの教えは、恋愛する場合は、結婚前提のお付き合いが条件なんですよ。アレンさんと私にはまだ早いと思うんです。アレンさんは19才ですし、私はまだ15才です。だから、後1年は我慢していただかないとなりませんわ。恋は辛いもの、とはこういう事なんですよ。アレンさん、まだまだキリスト教についての理解が足りなさすぎます
でも、好きという気持ちは抑えきれないものなんです!!僕は、カレンさんがずっと憧れで大好きな人でしたから……
それでも私はまだ16歳の社交界デビューの年齢になっていません。まだ15歳の子供なんです。だから、待ってください……お願いします……。私も心の整理をしたいのです。私は、サラさんとギルバードさんみたいにはいきませんから。恋には、障害が付き物なんです。だから、今回はごめんなさい!!いずれ、返事は返すから!!
 カレンは一目散にテラスから駆け出した。アレンの方を見ることなく、自分の部屋に駆け込む。そして、ルナが心配そうに駆け寄ってくるのが目に写る。
どうしたんですか、カレン様!!アレンに何かやられたんですの?!それなら私がアレンをぶん殴りにいくから!!
違いますの、ルナさん!!私……アレンさんに告白されました……
アレンのやつ!!ぶっ殺してやるわ!!カレン様に告白するなんて身分を弁えろ!!
私は嬉しかったんです。でも、年齢やキリストの教えを理由に逃げてしまったんです……。私はまだ15歳の子供だという理由で逃げてしまいました……
別にいいじゃありませんの?相手はアレンですから……
でも、私はアレンさんの事嫌いじゃありませんから……
えっ!!もしかして、アレンの事が好きになったのですか?!
そうみたいですわ……。私は、いつの間にかアレンさんの事が好きになってたのですわ……。恋って本当に気紛れなんですね……。今までの自分の考えがバカみたいって思えてきました……
 驚きを隠せないルナと恥ずかしさで顔を真っ赤にさせているカレン。ルナは、アレンの事が大嫌いだ。そんなルナは、アレンに対して殺意を抱いていた。
アレン……許すまじ……
やめてくださいよ、ルナさん。アレンさんはまだ19歳なんですよ……
19歳なんて私たちから比べればおっさんですわ!!私は、カレン様とアレンが付き合うことには反対ですわよ!!私の目が見えている間は絶対にカレン様とアレンが結婚することは許すまじです!!
私は、アレンさんの気持ちには真摯に答えますわ。だから、1年ほど待ってもらうことになるけど……私は、アレンさんが大好きなんですわ!!
本人がいないのに告白してどうするんですか……カレン様
 ルナはこの後、アレンに告白する話をしばらく聞かされるのであった。



 一方のアレンは、

オワタ……僕の人生オワタ……
 サラとギルバードの前で完全にどんよりとした空気を漂わせながら、アレンは絶望に陥っていた。完全に悲劇のお姫様若しくは王子様を演じきっている。
アレンくん……とにかくご飯食べようよ。いつまでも落ち込んでても始まらないよ。カレンさんが言ったんでしょ。しばらく待ってて欲しいって……。大丈夫だって……
僕の人生は、儚く終わるんだ。人生の終わりも一人ぼっちで終わるんだ……。何て神様は、差別的なんだろうか……
サラ……今はそっとしておいてあげた方が良いかもよ……。変な気でも起こされたら大変だからな……
 アレンは、二人の前で目の前のサラダのレタスにフォークを突き刺し、グリグリしながら病んでいる。これは、しばらく話しかけない方がよさそうだ。アレンは、その後も食欲が進まないまま練習に入り、練習も身に入らず、何をしていたのかさえ記憶が曖昧だった。

 その日のアレンは、燃え尽きた戦士のような佇まいだったと周囲の人たちはいう。後に伝説にさえなってしまったのであった。

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登場人物紹介

アレン


落ちこぼれトランペット奏者。

とあるキリスト教の吹奏楽団で聖歌のみを演奏している。

19歳

カレン


天才フルート奏者の女性。

落ちこぼれトランペット奏者のアレンに音楽を教えている。

とあるキリスト教の吹奏楽団で聖歌のみを演奏している。

15歳

フェリックス


アレンの友達でルームメイト。

ホルンを担当している。

20歳

ルナ


カレンのルームメイト。

クラリネットを担当している。

アレンに対して、いい印象を抱いていない。

17歳

ロバート・ルター


聖マリア吹奏楽団の指揮者。

問題児の多さに頭を悩ませている。

62歳

サラ


トランペットパートのパートリーダー。

アレンを上達させようと奮闘する負けん気の強いリーダー気質の聖女。

21歳

ギルバード


トランペットパートのメンバーでアレンの友人。

アレンの本気を出したときの音色を聴いてからアレンに憧れを抱いている。

22歳

ジョージ


カレンのお兄さん。

20歳

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