新しき友と
文字数 2,079文字
しかし、アレンを追放するようなこともなく、仲良くトランペットを奏でているようには見えないが、それでもアレンを追放しなかったのだ。
今までなら追放されていた。パート練習から追い出され、一人で練習をさせられていた。しかし、誰も文句は言わないし、出来ているところは誉めてくれるメンバーでアレンは良かったと思っている。極度のあがり症だけど見放さないでくれるメンバーにアレンは感謝をしていた。
サラのパート決めで、アレンは1stトランペット、サラは2ndトランペット、ギルバードは3rdトランペットを担当することになった。何故、アレンは1stになったのか理解できなかった。
極度のあがり症を治すため、だとサラは言っているが、アレンにとっては大きなプレッシャーだった。こんなの理不尽だ、とも思っていた。
サラの音色が教会に鳴り響く。とても透き通った綺麗できらびやかな音色……。ギルバードの音色は、力強く讃美歌にあう音色を作り出している。対してアレンの音色は、ぺひゃー、と出だしに訳の分からない音が入ってしまう頼りのない音色が教会に鳴り響く。これをきらびやかなステンドグラスの教会の中で吹くだなんて……アレンにとっては、とんでもないプレッシャーであった。
サラとギルバードは、これは戦力になるトランペット吹きが現れたものだ、と思った。天才教会音楽家の再来は、翌日の新聞にも取り上げられ、アレンは時の人となるとはこの時全く知る由はない。
そして、動き出すアレンの恋にも気がついていない。