ルナの夜の作戦
文字数 2,419文字
ルナは、今禁忌を犯そうとしている。この気持ちは抑えることは出来ない欲望の1つになるのだろうか……。恋をするとどうしても歯止めが効かない。カレンとアレンがそうだった通り、ルナもそうなのだ。フェリックスは、どうなのかは分からないが、多分皆同じ事を考えているに違いない。
フェリックスの部屋の扉越しに話しかける。すると、フェリックスの声が聞こえてくる。
フェリックスに扉を開けてもらい、ルナは部屋に案内される。何もない質素な部屋には、フェリックスの使っているホルンの入った楽器ケースとアレンが使っているトランペットの楽器ケースが丁寧に保管されていた。本当にフェリックスは、几帳面な人なんだと認識できる。
フェリックスは、冷蔵庫からミルクを出し、鍋にいれる。
フェリックスのありきたりな質問にも、ルナはドキドキしていた。こんなにもドキドキするのは、昨日以来だ。昨日の夜もこれぐらいドキドキしていたのかもしれない。フェリックスのありきたりな質問にルナは、
風味豊かなミルクの香りが部屋に広がってくる。この部屋でフェリックスと2人きり……そう考えるとルナは恥ずかしくなり、顔が火照ってくる。フェリックスは、ミルクを温め、マグカップを持ち、ルナの隣に座った。
ルナは、ホットミルクをちびちびと飲み始める。しかし、顔の火照りはなくならない。今の状況がとても恥ずかしい。
何故なら、大好きな人が隣に座っているシチュエーションなんてこの世界では滅多にないことなのだから。
フェリックスの顔が近づいてくる。ルナは目を瞑った。キスされる……と思っていたが、額に何かがコツンと当たったのだ。目を開けるとフェリックスの顔が目の前に広がっている。近い!!、とルナは声が出そうになったが、何とか心の奥底で押さえつける。
フェリックスは、くつくつと笑いを堪えている。ルナは、自分がどれだけ初なのかを思い知らされる結果となったのであった。
しかし、ルナは諦めなかった。大好きなフェリックスの事を考えていたかった。でも、ルナも我慢の限界まで我慢してきたのである。これぐらい言っても怒られない、と思っていたことを口にした。
フェリックスは、黙りこんでしまう。ルナは、ダメだと感じてしまう。フェリックスは、何かを考えているような素振りを見せていたが、遂に覚悟を決めたのか重たい口を開いたのだ。
ルナは、この言葉を待っていたのだ。フェリックスの好きな人を聞き出す。これが今回の目的なのだ。これ以上の関係になれるのならもっと色々な事をしてみたい、と思っている。
ルナは、重たい口でフェリックスの好きな人を聞き出そうと口を開く。
ダメだ、とルナは思ったと同時に視界が水のベールで覆われたかのように周囲が見える。驚き慌てるフェリックスの姿も写っている。自分の声もおかしい……。ルナは、下を向いてフェリックスから視線をそらした。
このフェリックスの言葉に怒りを覚えたルナは、フェリックスに飛びかかったのだ。それもフェリックスの手首を押さえつけ、逃げられないように覆い被さる。
ルナは、もう淑女の嗜みを捨てていた。この時ばかりは、怒りを抑えきれなかったのだった。
フェリックスは、ルナの押さえつけている手から逃れようとするが、力一杯押さえつけられているので逃げ出すことが出来ない。ルナのルビー色の瞳からは、次々と涙が溢れ、フェリックスの頬の上に落ちていった。
ルナは、そのままフェリックスの胸に顔を当てて泣いた。フェリックスは、優しく頭を撫でてくれる。ルナは、フェリックスの優しさに感謝したのであった。
この日、ルナとフェリックスの思いは実り、恋人同士になる。
しかし、この二人にはこれから先障害となるものがたくさん現れる事になるとはこの時誰一人思ってもいない。