カレンの秘密
文字数 2,079文字
カレンは息を飲み込んだ後、普段の明るい声とは異なり、低くくぐもった声で告げた。
アレンは驚きのあまり声が出なかった。出なかったというよりは出せなかったの方が正しい。
死んではいません。でも、私からしてみれば死んでしまったも当然なんです。ジョージお兄様は、私を庇って大ケガを負ったあの日から車椅子の生活で手も動かせなくなってしまいました……。もうジョージお兄様のトランペットは聞けないと思うと……
カレンは、泣きそうな表情でアレンを見つめた。また同じ過ちを犯すのではないのか……と怖いのだ。カレンが、キリスト教の道を選んだあの日の事故がとても怖いのである。アレンもそれを分かってあげられなかったことに拳を握りしめる。彼女を苦しめている兄の障害を自分のせいにして生きている。アレンは、それを許すような事をしなかった。
アレンの言葉にカレンは目を見開く。驚きを隠せないでいた。カレンのサファイア色の瞳からは次々と涙が溢れだしてくる。不安そうな表情を浮かべたままのカレンにアレンは声をかける。
アレンがカレンの頭を撫でると、カレンは涙を浮かべていたが、笑顔を見せてくれた。
アレンは、この時決意した。ジョージのような人々を魅力出来るトランペット奏者になる、と。
その時だった。扉が開き、ルナとフェリックスが部屋に入ってきたのである。
今の状況を見て、ルナはわなわなと怒りを顕にする。今、アレンとカレンは抱き締め合う感じになっていたからだ。単なる見せびらかし……カレンにとって嬉しいことだが、アレンにとっては死亡フラグだ。
ルナの怒りが、火山の噴火のように大爆発した。
ルナの怒りはアレンに集中する。
一方、カレンとフェリックスはお互いに顔を見合せ、話し合いをしているので助けてくれそうになさそうだ。アレンは、昨夜の事を反省し、絶対今後ルナには話さない、と誓ったのであった。
フェリックスは、顔を赤らめて否定はしなかった。
カレンは、慌てて否定する。
フェリックスは、クスクスと笑いを溢す。
カレンとフェリックスは、お互いに苦笑いをしたのであった。後にこの恋は加速していくのだが、当時の4人はこの事を知らない。
知るのは、もう少し先になりそうだ。