第51話 福井 東尋坊
文字数 2,299文字
朝の天気は晴れ。福井駅で高速バスを降りた。すぐにえちぜん鉄道の駅舎に入 って一日 フリーきっぷを買い、電車に乗った。
電車はゆっくりコトコト進み、11時頃に三国港 駅へ到着。
昨日この辺りで釣り人が流され2人亡くなったらしい。
三国港駅を出て東尋坊 まで歩いて行く。ここは国の天然記念物で、柱状節理 と呼ばれる柱状の岩が連なっている。サスペンスドラマで犯人が罪を告白してそうな切り立った崖、そして日本海の絶景パノラマビューを期待してここまで来た。そういえば柱状節理は鬼ヶ島でも見たな。あれは小さかったけれど。
駅を出てからは、ひたすら日本海沿いの道路を歩く。歩道の幅がほとんど無いようなものだから、恐る恐る歩き、それでも左を向けば雲の動きに合わせて徐々に色を変える荒々しい日本海を見渡せる。深く息を吸い込めば、風に乗って潮 の匂いが鼻に入り込んでくる。
30分ほど歩いて行くと、この地域一帯を見渡すことのできる東尋坊タワーがあった。展望台から、東尋坊とその先にある雄島 が見える。けっこう近そうだから後 で雄島にも行ってみよう。
タワーを出て東尋坊の崖へ向かうと、魚料理を出す店が軒を連ねていた。もう12時か……。今日は朝早かったから、まだ何も食べてないんだよな。
今は断食 してないし何か食べようと思い、適当に店を選び入ってみた。本日のおすすめである甘海老 の丼 の写真が輝いて見えたので注文。トッピングでぶりの刺身もお願いした。
丼 がくるのを待っている間にメニューを眺めていて、ホタテのバター焼きの写真がまたもや輝いて見えたので追加注文した。
甘海老とぶりの乗った丼がカウンターに置かれる。写真よりも甘海老の数が多いように感じた。ぶりも凄く分厚い。これは……絶対に美味 いだろ。
醤油 を少し垂らして、甘海老とご飯を箸で一緒につまみ、口の中へ放り込む。
あ、あ〜……。甘海老って、甘いから甘海老なんだよなぁきっと。ウマッ。
そういえば甘海老がたくさん乗った丼って、滅多に食べない気がする。でもこれ、めちゃくちゃ美味いぞ。港直送の文字に釣られてるわけじゃなくて、わさびと醤油と甘海老とご飯の混ざった味は、まるでそう、日本海!
……さて、次はぶりだ。分厚いぶりを、これもご飯と共に頬張る。
うぉぉ、こいつも美味 ぇや。何この幸せな食卓。
ウンマ、ウンマとトリップしているうちに、いつの間にかホタテのバター焼きがカウンターに置かれていた。一本の長い串が刺してあるから食べやすそう。ひと口いただいてみる。
アアー、ホタテのバター焼き美味 いんじゃァー!【昇天】
何もつけずに焼いたって美味 しいんだろうけど、バターをつけて焼くだけで5倍くらいは美味くなっているはずだ。とんでもない破壊力。いやこれは癒しの力 か。噛むたびにジョワッ、噛むたびにジョワッ。旨みが口の中に溢 れてしまう。
モノホンのホタテはこういう味だったのか。そんなこと思いながら大事に大事に食べた。アアー、ホタテの以下略。
そんなこんなで、昼食によって最強状態になった僕は、再び東尋坊の崖を目指して歩く……と思ったらすぐ近くにあった。
「ここを自由に歩き回っていい……のか?」
ついつい口に出してしまう。だって、落ちたら一巻の終わりだ。
底が擦 り減った靴じゃなくて、トレッキングブーツで来たらよかったなぁ。岩場そのものだからゴツゴツしてて足元が不安定、ちょっと濡れていて滑りそうだから、あまり崖のギリギリ縁 まで近付けないのだ。
崖の下では荒々しい波がドーン、ドーンと轟音 を立てて打ち寄せ、盛大な波飛沫 を上げている。例えば崖から落ちて、たまたま岩じゃなくて海に落ちたとしても、そのまま波に連れ去られて沖まで流されるか、大きな波で身動きが取れずに溺れてしまうか、というところであろう。
大学生くらいの男の子が、かなり細くて危ない所を通って崖の先端まで行っていた。あんな所に立ったら、僕は恐怖で意識を失うだろう。それに人生最後の言葉が「追加でホタテのバター焼きお願いします」になるのは避けたいから、追従するのはやめておいた。
いやはや、日本海。ああ、日本海。演歌の海のイメージってまさにこれなんだろう。猛々 しく、それでいて浪漫 を感じさせてくれる。
遠くに大きな雨雲があって、どう見ても滝のような雨が海に降り注いでいる。あれがこっちに来たら大惨事だ。
サスペンス的な崖を堪能して、雄島 へ向かうことにした。
古くから海の神様の島として崇 められているらしく、ここにも柱状節理や板状節理があって、東尋坊とは岩の種類が違うそうな。
島に通じる長ーい雄島橋を渡りかけた時、4人組のサイクリストが記念撮影のために三脚を立てていて、それを強風によって吹っ飛ばされていた。声を掛けて僕が三脚の代わりになった。しまなみ海道を自転車で走って以来、サイクリストにはなんだかちょっとした親近感を持っているのだ。
雄島橋から見渡す日本海もこれまた絶景。荒波、波飛沫、強い潮 の匂い。雄大な自然の真っ只中に放 り出されたような気分。
雄島には海での人々の無事を祈願するための大湊 神社があって、そこに詣 ってゆっくり島を一周しても15分程度だ。遊歩道以外はほとんど手付かずに近い島。雨が降ったわけでもないだろうに土は湿っていて、見たことのない植物が怪しげな色の花を咲かせていた。
コロコロと変わる日本海の表情と相まって、少し厳粛な気持ちで彷徨 き、島を出た。
予定ではこの後 すぐに福井駅方面に戻り恐竜博物館へ行くつもりだった。しかしながら地図アプリを見ると「水族館」が近くにあるみたいだ。
僕は東に向かって歩き出した。
電車はゆっくりコトコト進み、11時頃に
昨日この辺りで釣り人が流され2人亡くなったらしい。
三国港駅を出て
駅を出てからは、ひたすら日本海沿いの道路を歩く。歩道の幅がほとんど無いようなものだから、恐る恐る歩き、それでも左を向けば雲の動きに合わせて徐々に色を変える荒々しい日本海を見渡せる。深く息を吸い込めば、風に乗って
30分ほど歩いて行くと、この地域一帯を見渡すことのできる東尋坊タワーがあった。展望台から、東尋坊とその先にある
タワーを出て東尋坊の崖へ向かうと、魚料理を出す店が軒を連ねていた。もう12時か……。今日は朝早かったから、まだ何も食べてないんだよな。
今は
甘海老とぶりの乗った丼がカウンターに置かれる。写真よりも甘海老の数が多いように感じた。ぶりも凄く分厚い。これは……絶対に
あ、あ〜……。甘海老って、甘いから甘海老なんだよなぁきっと。ウマッ。
そういえば甘海老がたくさん乗った丼って、滅多に食べない気がする。でもこれ、めちゃくちゃ美味いぞ。港直送の文字に釣られてるわけじゃなくて、わさびと醤油と甘海老とご飯の混ざった味は、まるでそう、日本海!
……さて、次はぶりだ。分厚いぶりを、これもご飯と共に頬張る。
うぉぉ、こいつも
ウンマ、ウンマとトリップしているうちに、いつの間にかホタテのバター焼きがカウンターに置かれていた。一本の長い串が刺してあるから食べやすそう。ひと口いただいてみる。
アアー、ホタテのバター焼き
何もつけずに焼いたって
モノホンのホタテはこういう味だったのか。そんなこと思いながら大事に大事に食べた。アアー、ホタテの以下略。
そんなこんなで、昼食によって最強状態になった僕は、再び東尋坊の崖を目指して歩く……と思ったらすぐ近くにあった。
「ここを自由に歩き回っていい……のか?」
ついつい口に出してしまう。だって、落ちたら一巻の終わりだ。
底が
崖の下では荒々しい波がドーン、ドーンと
大学生くらいの男の子が、かなり細くて危ない所を通って崖の先端まで行っていた。あんな所に立ったら、僕は恐怖で意識を失うだろう。それに人生最後の言葉が「追加でホタテのバター焼きお願いします」になるのは避けたいから、追従するのはやめておいた。
いやはや、日本海。ああ、日本海。演歌の海のイメージってまさにこれなんだろう。
遠くに大きな雨雲があって、どう見ても滝のような雨が海に降り注いでいる。あれがこっちに来たら大惨事だ。
サスペンス的な崖を堪能して、
古くから海の神様の島として
島に通じる長ーい雄島橋を渡りかけた時、4人組のサイクリストが記念撮影のために三脚を立てていて、それを強風によって吹っ飛ばされていた。声を掛けて僕が三脚の代わりになった。しまなみ海道を自転車で走って以来、サイクリストにはなんだかちょっとした親近感を持っているのだ。
雄島橋から見渡す日本海もこれまた絶景。荒波、波飛沫、強い
雄島には海での人々の無事を祈願するための
コロコロと変わる日本海の表情と相まって、少し厳粛な気持ちで
予定ではこの
僕は東に向かって歩き出した。