第8話 下船、そしてエスコンフィールドへ

文字数 1,535文字

 朝7時半に船内放送で目覚めた。どうやら爆睡していたらしい。

 連絡しなきゃいけない用事があるのに、スマホは圏外の表示だった。船内の窓際に立っても、上の階でも電波が通じていない。まさかと思ってデッキに出たら、あっさり繋がった。遠くが(かす)んでいるせいか見渡す限り海しかないけど、電波はどこからやって来ているのだろうか。



 連絡を済ませるとお腹が騒ぎ出した。最後にあんパンを食べたのは16時間前で、そりゃ空腹にもなるでしょう。朝食バイキングで栄養を取り込んで、自室へ戻り下船の準備をする。隣の船室の人が永遠にくしゃみをし続けていてビビる。



 下船時刻になったとのアナウンスが流れた。荷物を持ってタラップへ。夜にジャズを演奏していたバンドの方々と目が合ったので会釈してみる。丁寧に会釈を返してくださった。素晴らしい演奏をありがとうございました。



 苫小牧駅へはバスでも行けるが、バスでも徒歩でも乗れる電車は同じ時間になりそうだから歩くことにした。
 歩きながら観た景色は、大きな道路の横に全国展開のチェーン店やセイコーマート、地元の不動産屋さんらが並ぶ普通のいわゆる田舎街という感じだった。海はすぐに見えなくなり、かなり暑いため、汗をかきながらバスにしとけば良かったなと後悔のウォーキング。港からちょうど1時間歩いて苫小牧駅に着いた。

 北広島駅で降りてエスコンフィールドまでの道を20分ほど歩いた。



 今日はナイターでプロ野球の試合があるけど、14時30分までは施設内に入ることが可能だ。コンコース内のグッズ売り場にて頼まれ物のキーホルダーをクレジットカードで買って、スッとサウナへ。そう、ここへはサウナのために来た。



 施設内は現金が使えないようで、サウナ入浴料2500円はクレジットカードで、サウナに入るために必要な水着は交通系ICカードで1000円を支払った。僕はICチップの搭載されていない時代遅れのスマホを持っていて、なんとかペイなんてサービスとは無縁だ。カードのチャージが残っていて本当に良かった。

 水着を穿()いて汗を流し、サウナに入った。手すりと装飾として野球のバットが並んでいて、ずっと応援歌を流している。野球場だなあ。
 それほど温度は上がっておらず楽勝だと思っていたら、(あと)から入って来た大学生らしき2人組がロウリュ、焼け石に水をかけて蒸気を発生させた。一気にサウナ内が蒸し暑くなる。
 それでも時間的には1回しかサウナに居られないので、10分ほど耐えてから水風呂にドボンした。球場内の一塁ベンチ前で選手がストレッチする様子を観ながら、3分ほど身体を冷やす。そして残りの時間は、2種類の風呂で(あたた)まって、最後に水シャワーを浴びて、着替えて出た。

 ほーん、なるほどねとしたり顔でコンコースを1周しようとすると、もう14時30分で、警備員が人払いを始めていた。球場を出て北広島行きのバスに向かうと、これもちょうど出発したところだった。ほーん。

 トホホの徒歩、またまた汗をかきながら北広島駅まで20分。そして札幌駅へ。ちなみに北広島という地名は開拓者の出身地からの由来だそうな。

 電車に揺られながら、さっきのサウナについて考えていた。料金はまあ、場所代といった感じかな。設備としては普段通っている地元のサウナの(ほう)()い。楽しむために行くのならナイター中に、倍くらいの値段で入って野球を観戦しながら、ジュースも飲みながらというのが素敵だろう。もしその時があるなら、防水機能とICチップ搭載のスマホを持っていくべきなんだ。そうしないとジュースも軽食も買えないからね。

 ということで札幌駅に着いた。今日は下船してから水分を一切口にしていない。それは、この(あと)立ち寄る場所の為だ。当然のように続く。
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