第24話 長野 松本をぶらり 後編

文字数 1,727文字

 アルプス公園へは、単にハイキングに来ただけだ。
 広大な敷地に歩道が整備されており、自然の中でマイナスイオンを浴びながら歩くことが出来る。小川のせせらぎを聴きながら、野鳥の(さえず)りを聴きながら、時々ハチに追われながら。
 なんで歩くのか、それは今日泊まるホテルでサウナを楽しむためなのである。さらに言えば、その後の晩酌を楽しむためだ。



 巨大な広場で家族連れがピクニックをしている。こんな暑いのに……。それはともかく、公園内をぐるっと1周。パノラマ展望室で松本城よりも高い所から街を見下ろして、満足したので戻ることにした。



 帰りはほとんど(くだ)り勾配だから、サッサッと歩いて市街へ。まだ松本に着いてから何も食べてない。少しだけ小腹が()いた気がする。



 ということで目当ての時計博物館近く、おやきの専門店に入った。単品袋売りのおやきを買って、店内の電子レンジで温めて食べるシステムみたいだ。「あんバタ」と「クリームチーズの味噌煮」を買って、言われるままにそれぞれ20秒と40秒で温めた。
 店の前の木製のベンチに座り、クリームチーズの方は熱くて持てないくらいだったのであんバタを先に食べた。ベーグルみたいな食感と店内に書かれていた通り、モチモチだ。これが本物のおやきなのか、おやき風ベーグルなのかどうか良く分からないけど、とにかく美味(うま)い。
 中のあん・バターがトロトロと口の中に甘みをもたらす。さっぱりモチモチのおやきがその味を変化させ、食感も相まって咀嚼するたびに幸せを与えてくれる。
 クリームチーズの味噌煮は複雑な味だった。チーズと味噌をおやきがまとめてくれるような感じで、よくこんなの考えたなぁと感心しながら頬張る。今までに食べたことのない味だが、やはり美味(うま)い。

 2つのおやきで小腹が満たされた。では、ということですぐ近くの時計博物館へ。本田(ほんだ)親蔵(ちかぞう)氏が寄贈したコレクションを中心に、市民から寄贈された時計も合わせて展示している、とのこと。何が凄いって、半分くらいの時計、古時計なのにちゃんと動いているのだ。
 それぞれの時計について細かく書いても意味がないから割愛する。しかしながら、日時計から始まり、近代、現代に至るまで、色んな時計が造られてきたのだなぁ、変な時計もいっぱいあるんだなぁ、としみじみしながら楽しく観覧した。

 ホテルにチェックインする前に、適当なトコで海老天の蕎麦(そば)を食べた。フードコート内の店だから、まあ、まあ普通のでした。うん。

 ビールと酎ハイを買ってホテルにチェックイン。駅前の他のホテルより若干宿泊料金が高い、でもどうしても泊まりたかったホテルだ。



 入り口で靴を脱いで、ホテル内は畳敷き。翌日ホテルから出るまで靴を履くことなく過ごせる。靴箱に鍵が付いてるから間違えて持っていかれることもない。
 部屋で着替えて、さっそく最上階の大浴場行き。身体をしっかり洗ってサウナに入る。

「アッツ……」

 ついつい言葉が出てしまった。焼け石がジュージュー(うな)っているから、直前に誰かセルフロウリュして部屋を蒸し蒸しにしたんだな。石の前だけ空いていたのでそこに座る。アッツ。
 じっくり蒸されること10分。さて、今日のメインイベントを始めよう。このホテルを選んだのは、これから入る水風呂のためだ。

「ツメッ……」

 またも声が漏れてしまう。普通、水風呂は15度くらいだが、この水風呂は12度程度。10度台で3度の違いは、入れば分かるけど全然違う。もはや氷水に浸かっているみたいだ。
 普段行くサウナでは2分でも3分でも、じっとしていれば耐えられる。この水風呂は1分で足がプルプル、生まれたての仔鹿みたいに震えてしまうほど。
 水風呂から脱出して、お次は露天風呂のある外気浴スペース。上にも横にも壁は無い。本当の露天。気持ちの良い風が吹き抜けていく。そしてヒーリングミュージックが流れている。目の前には沈みゆく夕陽。それが雲で隠れたり、また現れたり。山を分厚い雲が()でて流れていく。

 まるで絵画を鑑賞するかのようにゆったりと休憩すること10分。サウナ、水風呂、休憩のサイクルを3回楽しんだら、あとは露天風呂でじっくり温まりながら足を揉み、最強の状態で大浴場を出た。

 晩酌して寝るっス!
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