第28話 広島 福山から尾道まで

文字数 1,864文字

 新幹線は広島の福山駅に到着した。

 いったん福山駅を出て、すぐ北側にある福山城へ。ここの天守は戦時中に焼失し、市民や企業の寄付金によって再建され、最近大規模な改修工事が行われたということだ。
 だからなのか、なんだか真新しい感じがする。出来立てホヤホヤみたいな。



 時間の都合で城の中の博物館へは入らず、周りをグルッと歩いた。イベントでペリー来航あたりの歴史についての展示があったようだから、時間があれば入りたかったところだが、今日は尾道(おのみち)に行かなければ。
 しかしながら福山城、駅に隣接していて、過度に観光地化されておらず、お堀も無くて、山の上にあるわけでもなく、それでもデン! と街の中に(たたず)む不思議な城だった。

 時間ギリギリまで城を眺め、駅に戻って尾道方面の電車に乗った。福山から尾道までは20分足らずだが、市街地からいきなり港町へと車景が移りゆく様は、驚きとともに面白さもあった。

 尾道駅に到着。こんな景色の良さそうな場所に来たら、行くべき場所は決まっている。
 ロープウェイ乗り場まで歩き、千光寺山の(いただき)へ。有名な建築設計事務所による設計の展望台は、コンクリート造りの細長いパノラマ。

「ジオラマみたいだ……」



 思わず声に出してしまうほどの絶景。港町があり、その先に海があり、海の上を滑るフェリーやボート、大きな造船所、さらに奥には大きな島や小さな島が海に浮かぶように存在している。天気の良さもあって本当にジオラマを見ているみたいで、唯一無二の景色だった。こりゃあスゴイ。



 山頂から千光寺に向かう道は「文学のこみち」と名付けられていて、たくさんの歌人の俳句や(うた)が石に刻まれていた。その中には千光寺から眺めた風景を歌ったものもあり、なるほどこの風景をそんな感じで表現するのかー、と感心しながら歩いていく。確かにこれは文学だ。



 千光寺で賽銭を投げ入れ、ふと気になることがあった。そこでちょうど僧侶(そうりょ)様がいらっしゃったので()いてみた。

「お寺って……、2礼2拍手1礼でしたっけ?」
「それは神社ですね。この寺は真言宗なので、手を合わせて南無(なむ)大師(たいし)遍照(へんじょう)金剛(こんごう)と唱えてください」

 言われた通りにすると、横で僧侶様も唱えてくださった。それで、お(りん)を2回鳴らすようゼスチャーで教えていただき、チーン、チーンと2回鳴らした。
 照れくさくて何度も頭を下げながら撤退。でも、おかしなことをせずに済んでよかった。寺って宗派によって唱える言葉が違うんですね。



 千光寺から町までは徒歩で階段を(くだ)った。下りだから楽勝だったけど、これを(のぼ)るのは大変だろうな、ロープウェイで山を登ったのは正解だなと思った。無理をしたら明日、筋肉痛で苦しむことになっていただろう。

 さあ、では小腹が()いたところで尾道ラーメンでも食べますか。
 と意気込んでちょっと薄暗い商店街を歩くも、どうやらほとんどのラーメン店が17時オープンのようだ。



 30分ほど海の観えるベンチに座り、行き交うフェリーやボート、造船所のクレーンが動いているところなどを眺めて過ごした。景色に動きがあると飽きない。フェリーは頻繁に出入りしているし、漁船なのか、小さなボートも度々通って行く。スマホで時間を確認したら、もう17時10分になっていた。

 商店街のラーメン屋に入る。券売機でチケットを購入し、店の人に渡して水を飲みながら待つ。どうやら時々テレビの取材があるようで、地元のアナウンサーの色紙や、有名なコメディアンの写真が飾ってあった。



 そして尾道ラーメンと焼飯がテーブルに置かれた。尾道ラーメンは背脂と平打ち麺が特徴で、堅実な醤油ラーメンに背脂が良いアクセントとなっている。汁の完成度高し。焼飯もギトギトしてなくて、あっさり美味い。

 食べていると、旅行者ではなく地元の人たちが続々と入店してくる。あっさり系だし値段も手頃だからリピートが多いのかな。
 ところで、なぜラーメンの汁はいつの間にかなくなってしまうのだろう。一体どこへいっちゃうんだ。

 ごちそうさまでした。
 店を出てコンビニでビールを買い、ホテルにチェックイン。普通に普通のビジネスホテルだ。多分12時間くらいしか滞在しないから、寝ることさえ出来ればなんでもいいという。
 と思ったらダブルベットだし広いしで、なかなか良かった。シャワーとなぜだかやたら高品質な分厚いタオルで身体を洗い、福山駅で買った生もみじまんじゅうをお供に晩酌。この雑文を書いて歯を磨き、寝る。



 明日はレンタサイクルに乗るのか、それともフェリーに乗って四国・今治まで渡るのか。さあどうなる?!
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