第19話 宮崎 青島をぐるり

文字数 1,760文字

 ホテルの朝食バイキングでは、郷土料理がたくさん用意されていた。鮭の焼き漬け、さつま揚げ、きびなごの南蛮漬け、豚味噌。ざる豆腐も美味(おい)しくて、これ本当に千円でよかと? と思ってしまった。昨日食べなかった白熊のかき氷の代替かのような白熊プリンも、小さいながらに朝のコーヒーのお供として最強だった。



 ああ満足だ、ということでホテルを出発して、鹿児島中央駅から出る特急に乗る。



 グレー一色(いっしょく)で機動戦士のようなフェイスの特急は、桜島を臨みながら海岸沿いを進んで行く。今日は真っ晴れで、桜島のてっぺんまでしっかり観ることが出来た。白く丸い煙の塊は火山の噴煙だろうか。

 特急なんて乗らなくてもよかったのだ。なぜなら、南宮崎駅から日南線で青島へ行く電車を2時間待つことになったから。この旅の間、新幹線と特急しか使っていないから、1時間に1本よりも(あいだ)が空くことがあるなんて予想だにしなかったのである。

 どうやら今日は青島観光だけで終わりそうだと、この文章を書きながら青島行きの電車をひたすら待っているわけでして。

 ようやく青島行きのワンマン電車1両がホームへとやって来た。宮崎からの乗客で既に満員に近く、25分くらいならと立ち乗りする。特に旅情みたいなものを感じないのは、窓に映る風景が少し地元に似ていたからだろう。畑、家、自然、家、かつて家だったはずのバラック……。



 青島駅に到着して、大きく伸びをしながら歩き出す。



 駅前から青島までは観光地化されていて、宮交ボタニックガーデン青島という広場や温室の植物園やイベントスペースなどが内包された大きな敷地の周りに、個人の飲食店多数。僕はお腹も空いていないし喉も乾いていなかったので利用せず。ソフトクリームだとかマンゴージュースだとか、ひとりじゃなかったらきっと立ち寄ってたんだろうな。



 青島はごく小さな島で、真ん中に青島神社がある。激しい波飛沫(なみしぶき)を受けながら弥生橋という長ーい橋を歩いて青島に渡ると、砂浜にたくさんの貝殻が打ち上げられていた。
 さらに青島をぐるっと一周してみる。流木が積み重なっていて、一部の砂浜は砂と貝殻の破片や小さな貝殻で構成されていた。波に削られたであろう岩は、丸くなっていてブツブツと穴があいている。穴の理由は諸説あるようで、ネットで検索してもなんだか曖昧な情報しか見当たらなかった。



 遠景にて、波は高く大きな岩にぶつかってはじける。効果音を当てるならドーン、ドーンといったところか。熱海の海でもなくフェリーから眺めた海でもない、また別の顔を見せてくれた。何もかも洗い流そうとする、削り取ろうとする海。



 一周するのに15分程度、最後に青島神社に参拝して、また波飛沫を受けながら橋を渡って戻った。



 戻りの電車の時間までまだ30分あるので、せっかくだから亜熱帯植物園大温室という大きめの施設に立ち寄ることにした。



 人間よりも大きな葉をもつ木、怪しい純色の大きな花、謎の実……これはマンゴーか。生命力に溢れた木々や草花を見て回り、野生の力を思い知らされた。青島の荒々しい海もまた同じで、本気の自然を前にするとやっぱり人間は小さくて無力なんだなって思う。



 またもや帰りのワンマン電車1両は大混雑。20分少々ってこんなに長いんですかと(なか)ば無心で揺られ、南宮崎駅へ戻った。
 もうホテルにチェックイン出来る時間だから、そのまま電車で宮崎駅まで行ってもよかったのだが、そうすると宮崎の街を全く観ずに終わることになる。だから1時間ほどブラブラ歩くことにした。

 道中、300メートル位の川幅がある大淀川に架かる大淀大橋を渡った。地図で見ると海のほど近く、もはや川じゃなくて海なのでは。でも潮の匂いはしないからやっぱり川なんだ。この川を観られただけで良しとしようじゃないか。

 ホテルには大浴場があり、高温サウナも利用出来た。本当に高温らしく温度計は105度を指しているのに、昨日のサウナほど蒸される感じはしなかった。汗をかいた(あと)は水風呂で身体を冷やし、露天風呂に入ってサッパリ。部屋に戻りビールを飲んでつまみを頬張り、歯磨きをして横になった途端に朝が来た。爆睡だー。



 朝食バイキングは野菜中心に、さらにケールの青汁も飲んで健康志向。
 朝早めの特急に乗って、九州最後の宿泊地となる大分、別府へ。
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