第45話 富山 ブラブラのち雨

文字数 2,775文字

 朝7時に富山へワープした。

 そんなわけなくて。金沢から新幹線で2駅、富山に着いた。
 まずは神社、そして美術館等を(めぐ)る予定だ。本日は午後から雨という天気予報で、せめて帰りの高速バスに乗るまでは曇りくらいで勘弁して欲しいところ。さてどうなる?

 富山駅南口からゆったり歩いて20分程度、神通川近くにある富山縣護國神社へ。戦役で(くに)のために戰歿(せんぼつ)された方々の御霊(みたま)をおまつりしているとのこと。広くて綺麗な境内(けいだい)だ。
 ちょうど神主(かんぬし)さんが朝のお勤めをされている(そば)(まい)ることになった。そう、まだ朝7時台なのです。

 少し西へ行くと神通川がある。うーん、河川敷がパターゴルフ場になっていて全然風流でなかった。本来の川幅は広いんだろうけど。

 次は日枝(ひえ)神社。こちらは主祭神が縁結びとか商売繁盛の神様らしい。街中にあるのに境内は広くて、立派な拝殿だ。

 暇があればその土地の神様に挨拶するというのが今の旅の定石(じょうせき)で、特にお願い事があるわけじゃない。ちょっとお邪魔してますという感じで参拝している。

 さらにアーケード商店街なんかもウロウロして時間を潰し、富山市ガラス美術館に入る。ここは4階に国内外のアーティストによるガラス工芸作品を、6階に巨匠デイル・チフーリ氏の空間芸術作品を展示している。
 ガラスに着色して重ねていったり、折りガラスにしたり、分厚い1枚ガラスを加工してグラデーションに見せたりと、色んな手法を使ってガラスアートが作られるということが分かった。そしてこのアート群も、やはり写真ではその美しさを表現しきれないだろう。実物がある場所で、前から、横から、後ろから第三者が見ることにより、作品(アート)は完成するのだ。多分。
 美しいガラスによる(きら)めく芸術を堪能し、また歩く。



 少し北へ歩くと、富山城跡地。その富山城址公園には模擬天守の郷土博物館がある。博物館内には主に富山城と富山市の歴史が展示されていた。ジオラマとホログラムを使った分かりやすい説明動画もあった。短い滞在でもかなり富山の歴史を知ることが出来たように思う。
 あと、とんちのアニメでお馴染み「蜷川(にながわ)新右衛門(しんえもん)」の家系についての企画展示があった、本物はとっても偉い人だったんですねぇ。



 バスの出発予定時刻までまだ3時間以上あるし、続いて富山駅の北側にある県立美術館へ行ってみよう。

 美術館への道中にあったラーメン屋、メニューに富山おでんがあるじゃないか。ということで引き戸を開けて入る。よし、まだ混んでないみたいだ。
 富山おでん7種盛りと味たまラーメンを注文してニュースを眺めていると、富山にクマが出たと言っている。クマに出会(でくわ)したらどうすればいいんだっけな……。



 最初におでんが運ばれてきた。富山のおでんはとろろ昆布をいっぱいかけて食べるみたい。これが確かにイイ。特に大根(だいこん)との組み合わせは素晴らしくて、赤巻きやこんにゃくとの相性も抜群だった。これから家でおでんをやるときにはとろろ昆布もつけよう。
 ラーメンはご当地の富山ブラックにしなかった。どこかで食べたことがあるから。けど、どこだったかは忘れた。普通のラーメンと富山おでん、いい組み合わせだと思う。他の客もたいていはラーメンにおでんセットだったから、この店はおでんが売りなのだろう。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 さて、県立美術館。
 入ってすぐのチケット売り場の横に、「ジブリ展」のポスターがあった。

「これはどうやって入るんですか?」
「Webから予約したお客さまが、予約された時間でご入場いただけます」
「今から予約しても?」
「このQRコードから予約をお取りになれば、ご観覧いただけますよ」

 ということでチラシを貰う。僕のスマホはアプリを入れてもQRコードを認識しないので、検索してチケット予約ページを開く。
 5分間の悪戦苦闘の末、なんとか今の時間で予約を取って支払いを済ませた。スマホのチケット画面を開いたまま2階に上がり、すんなりと企画展示室へ入る。

 どうやら全国を順々に(まわ)っていて、たまたま10月下旬現在は富山でこの展示をしているみたいだ。ジブリ創設から最新作まで、一つ一つの作品の絵コンテやスナップショット、公開当時の出来事や流行ったものや流行語が年代ごとに並べられていた。
 宮崎氏も()高畑氏も、絵コンテから漂うオーラが半端(ハンパ)ない。小さな枠の中で、鉛筆書きのキャラクターが躍動している。まるでそこにいるみたいな存在感。絵コンテそのままの構図でアニメになっているのが分かる。
 時間はいっぱいあるのだからとじっくりコトコト観て回った。なにげに作品の公開年に流行ったものの実物、ベストセラーの本とかCDとかゲーム機なんかが置いてあるのも良かった。ちゃんとミスチルの「innocent world」のシングルも置いてあったぜ。

 そこで終わりかと思ったらとんでもない。進むとナウシカの腐海(ふかい)を表現した空間へ突入することとなった。巨大な王蟲(おうむ)や腐海の(むし)たちがお出迎えだ。これってもしかして等身大ってことなんだろうか。だとしたら腐海で人が生きるのは無理でしょう。蟲たちの複雑で奇妙な造形に若干ビビりながら観て歩く。
 さらに先では、ジブリの幻燈楼(げんとうろう)なるフォトスポットあり。これは各作品のステンドグラスがはめ込まれた優美なオブジェクトと、天井と壁に映るキャラクターたちの幻想的な姿を楽しめる素敵な部屋だった。回転しながら、どんどんその映像が切り替わっていく。まさに美麗。感動してちょっとだけ涙が出たかも知れぬ。

 そして最後は、アニメの立体パネルと一緒に自分の写真を撮ってもらえる場所。恥ずかしながら、もののけ姫のモロの横に立つ姿を撮っていただいた。魔女の宅急便のパン屋のカウンターもあって迷ったけど、それはやめておいた。多分恥ずかしさのあまり写真を消去してしまうだろうから。
 で、グッズショップにてこの企画展の本と缶入りクッキーを買って終了。なぜか紙袋をビニールで保護してもらえたので、なんでか(たず)ねたら「今、すごい雨が降ってるらしいですよ」とのこと。

 確かに、美術館の外はどしゃ降りだった。予約制なので時間厳守で傘を持たずに走ってくる人たちや、強風のせいで傘が使い物にならずビショ濡れになる人たち。天気予報アプリの雨雲レーダーを確認すると、これからさらに(ひど)くなっていくようだ。
 駅までは歩いて15分、でもその15分でずぶ濡れになりたくない。だから仕方なし、タクシーを呼びました。

 やっぱり車は速い。5分で着いちゃうんだもんなぁ。
 ハロウィーンパフェを食べたり、お土産を買ったりして時間を潰す。高速バスの発車時刻に合わせてバス停で待機。



 ということで宇宙科学博物館に行きたかっただけなのに最後はジブリで〆ちゃった一部北陸旅は終わり。福井は、またいつかそのうち気が向けば……。あれ、もしかして新潟も北陸?!
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