第15話 熊本 土産物を送ってあの城へ

文字数 1,426文字

 しまった。平日の朝、博多駅は通勤客でごった返している。朝食もとらずにホテルを出たからお腹がペコペコだ。駅地下のマックは席が()いてないし、どうすんべ。

 とりあえず熊本までの新幹線の切符を買う。改札口で見上げたインフォメーションには、あと5分ほどで熊本行きが発車するという情報あり。振り返ると「駅弁」の文字。
 よし、2分で駅弁を買うぞと意気込んで店の中へ入るも、ラインナップが強力で迷ってしまう。それでも、唐揚げというワードがあった「鶏三昧」弁当を手に取る。牛はもういい、鶏肉を食べたい気分なんだ。

 割と本当にギリギリのタイミングで九州新幹線に乗り込んだ。通勤客っぽい人たちで自由席がほとんど埋まっている。2列、2列なので誰かが窓際に座っているとその横に座りにくい。2席空いている所があったのでホッとして座る。
 まさか博多から熊本に毎日通勤してるわけじゃないよな、と周りを見ていたら、次の駅、さらに次の駅でどんどん人が降りていった。新幹線で通勤してるのか……。



 鶏三昧弁当はまあ、普通に美味(うま)かった。別に九州の地鶏とかでもなさそうだし、いたって普通の弁当だ。でもお腹はそこそこ膨れた。
 これが千円程度なんだから、同じくらいで食べられるホテルの朝食バイキングは結構コスパ()いんだな。今日は朝食ありのプランでホテルの予約を取ろう。

 博多から熊本までは新幹線で40分程度。あっという間に着いてしまった。九州内の移動はそれほど大変じゃないみたいだ。



 熊本といえば阿蘇なんだろうけれど、自動車でないと1日で楽しむことは出来なさそうに思えた。電車ならいったん阿蘇で泊まって、次の日は熊本、という動きでも良さそう。だがしかし、今回は1日1県で(めぐ)る予定なのだ。

 熊本駅で土産物を買う。売り場の中に宅配便の受付コーナーがあり、複数の店舗で買った土産を箱に詰めて発送してくれるという。それならばと美味(おい)しそうなお菓子や海苔なんか買って、発送をお願いした。箱で送るから送料はそこそこかかるけど仕方なし。

 地図アプリで確認すると駅から熊本城は近そうに見えたので、市電を使わず歩くことにした。札幌や博多とは違い、道がまっすぐでなく川に沿ってクネクネと曲がっている。そのせいで思ったよりも時間がかかり、熊本城へ着く前にバテてしまった。

 道中、ショッピングモールに入りスタバを見つける。水分と甘いものを摂取したくてカフェモカを注文した。席に着くと、近くの席でサラリーマン2人組が大きな声を出して仕事をしている。別に聞き耳を立てているわけでもないのに情報がダダ漏れ。暑いだろうけどテラスに出た。本当に9月の後半ですよねと誰かに()きたくなるくらい、やっぱり外は暑い。

 ちょっとだけ現実に引き戻され「ぐぬぬ」感を引きずり、改めて熊本城へ。

 熊本城の入り口にあたる道を歩いていると、後ろで大きな衝突音。振り返ると、ワゴン車にハイブリッドカーが思いっきり追突していた。ヤカラっぽい男性がなにやら叫びつつワゴン車から飛び出す。追突したのは女性のようで、車から出ることなく対応している。
 この(あと)色々大変だろうなぁ。以前、中古車販売の仕事をしていたから、事故後の処理が面倒くさいことは知ってる。警察、保険、板金、医療費……。保険会社によってはかなりお任せできるんだろうけど。双方が任意保険に加入していることを願うばかりだ。

 そうしてまた現実に引き戻されてしまった旅人。
 気を取り直して、いざ熊本城ッ……!
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