6.5・愛しい恋人(4)

文字数 1,120文字

 大好きな彼と抱き合うのは凄く気持ちいい。
 蓮もそうならいいのにと悠は思う。
 元カノと比べられるのは嫌なのに、競っているのは自分なのだ。
 彼の一番でありたいし、彼の全てになりたい。

──最初は変な人だなって思っていたのに。
 顔に普段と素とのギャップだよねえ。
 下ネタ言わなくなったら、ただのイイ男だもの。

「悠……もっと感じてよ」
「もっと?」
 充分感じているのに、彼はそんなことを言う。
 首筋に優しく口づけされ、奥がきゅんと締まる。
 触れられるたびに感じているのに、これ以上どうしろと言うのか?
 部屋に響く水音はもう、静かに流れた音楽ではかき消せなくなっていた。

 彼が望むならなんでも叶えたいと思う。
 なんでもしてあげたいと願う。
 だがこればっかりは、どうにもならないのではないか?

「もっと俺に溺れて」
 充分溺れているのに。
「俺だけ見て」
 蓮しか見えていないのに。
「愛してよ」
 気が変になるそうなくらい愛しているのに。

「あッ……それダメ……」
 一際深く腰を進められ、そのまま引っ張り起された。
「や……あ……ッん」
 体勢を変えられ、対面騎乗位となったまま深く繋がる。
「蓮……」
 悠の瞳は彼の唇を捉えた。
 じっと見つめたまま彼の上唇を唇で挟みこむ。
 弾力と柔らかさを感じながらチロと舌を出し味わえば、下唇を舐められた。

「はあッ……」
 彼に抱き着きながら、自ら動く。
 それは彼が望んだことだから。 
 下から突き上げられながら、何度も彼の名を口にし愛の言葉を乗せる。

 満たして。
 溢れるほどに。
 零れてもまた、注ぎ込んで。
 なお咲き乱れるように。

 蓮の愛と体温を感じながら、良いとことにあてていく。
 感じるままに感じて、我慢せずに絶頂を迎えた。
 それでもやめずに、彼を攻め立てる。
 彼の利き腕は悠を支え、もう片方の手は膨らみをまさぐった。
 彼のつけた鎖骨の痕は、まるで花弁のように赤く浮きたつ。

 何度も何度も口づけを交わし、数度絶頂を迎えたのち彼をその高みに導く。蓮の熱い愛液は一枚の壁を隔て、悠にもその熱を分ける。

「悠たん……好き」
 ぎゅっうと悠に抱き着いたまま、蓮が呟くように言う。
「お眠なの? このまま寝ちゃったら大惨事だよ?」
「んー」

 ”誰だ、今夜は寝かせないと言ったのは”と思いながら悠はペチペチと彼の背中を叩く。彼の腕を退けると、まだ硬いままの彼から離脱した。
 トロリと透明な熱いものが溢れ、(もも)を伝う。
「蓮。そのままじゃ……。もう、ちゃんと目を開けて」
「ん」
 寝てしまいそうだった彼が、悠の視線に気づき頬を染める。
「どこ見てるの? 悠」
「今更隠しても遅いわよ?」
 慌てて処理をしようとする蓮に、悠は悪戯っぽく笑うとちゅっと口づけたのだった。
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