第12話 それはデートであってデートではなく

文字数 620文字

 この頃は、夜寝る前に西原にメッセージを送るのが習慣になった。さすがに恋人がいる彼に毎晩は送れないし、送っても、デート中で返信がないこともあるのだが。

 今日は、西原のほうからメッセージが来た。

昨日はごめん
 昨日も、そんな日だったのだ。
気にするな
どんなことがあったか教えて
彼に、どんなラノベを読んでるのか聞いてみた
それで?
おすすめを教えるから連絡先を教えてくれって
連絡先交換したの?
うん
やったじゃん。てか、それなら僕より門田くんとチャットすれば?
いや、それは
門田くんは、おすすめを教えてくれたの?
うん
どんな本?
明治時代の話で探偵が出て来るシリーズもの
へえ。で、生野はなんて返信したの?
ありがとうって
それだけ?
うん。どうせ学校で毎日会うし
それを言うなら、おすすめだって学校で教えられるのに、わざわざスマホに送ってくれたんでしょ
 言われてみれば、たしかに。
でも、今度の休みに一緒に本屋に行く約束した
やったね。初デート
デートじゃねえよ
デートだよ
 こういうの、水掛け論というのだろうか。
ちなみに、お前と彼氏との初デートは?
彼のマンション
 出会ったその日にマンションに行って、「愛し合った」とか言っていたが。
そうじゃなくて、初めて出かけたのは?
忘れた

 え……。初めて二人で出かけたことを忘れるわけがないだろう。何か言いたくない事情でもあるのだろうか。

 まだ西原とのやり取りをを終わらせたくない俺は、あわてて話を変えた。

それで、本屋に行くときのことだけど
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