第16話 きっと西原は泣いているに違いない

文字数 682文字

  SNSのアカウントを教えてほしいと言われたので、さすがの西原もようやくアカウントくらいは作る気になったのかと思ったのだが、いくら待っても音沙汰がないのでメッセージを送った。
俺のSNSフォローしてくれないのかよ
  だが、時間がたっても既読にすらならない。返信があったのは、何日もたってからだった。
ずっと返信出来なくてごめん
 もう俺のことなんてどうでもよくなったのか。そう思って落ち込んでいた俺は、秒速で返信する。
いいよ。何かあったのか?
彼が仕事中に怪我した
包丁で?
 西原の恋人は料理人なのだ。
いや。棚が倒れて肩を強打した
大丈夫なのか?
骨はなんともないけど仕事を休んでる
心配だな。それでずっと付き添ってたのか?
そうでもない
 え? 部屋に泊まり込んでかいがいしく恋人の世話を焼いていたのかと思ったのだが。
何か事情でも?
彼のお母さんが来てるから
そうか

 西原の母親は、二人の関係を認めているらしいが、多分、恋人の母親は何も知らないのだろう。それが普通だ。

 

 それきり返信が来ない。

おい、大丈夫?
大丈夫じゃない。彼に会いたい
ずっと会えてないのか?
うん
 それは辛いだろう。
俺でよかったら話聞くけど
ありがとう
 泣き虫の西原は、こうしている今も涙をこぼしているかもしれない。
怪我がよくなったらまた会えるだろ?
でも、彼が辛いときにそばにいられないのはいやだ
それはそうだよな
 もっと気の利いたことが言えればいいのだが。
やっぱり男同士じゃ駄目なのかな
そんなことないよ。世の中にどれだけゲイがいると思ってるんだ
 それに、西原が恋人を思う気持ちが真剣だということは、俺がよくわかっている。
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