第17話 電話越しに泣く西原に胸が痛む
文字数 798文字
西原からのメッセージが途切れてしまったので、心配になって電話をかけた。
久しぶりに聞いた西原の声は、か細く震えている。そして、鼻をすするような音。
西原の母親は、夜は仕事でいないのだ。こんな時間に一人ぼっちで泣いているのかと思うと、胸が痛くなる。
俺は思わずにやける。
西原は黙ってしまった。機嫌をそこねてしまっただろうか。
そう思っていると、電話の向こうで「チン」と音がした。レンジでグラタンを加熱していたのだろう。
それから、ガタガタという音。食卓に着いたのだろうか。
少しは元気が出て来たみたいだ。俺はごろりとベッドの上に寝転がると、そのまましばらく待った。
なんなら、今すぐ新幹線に乗って家まで行きたいくらいだ。そして、細い体を抱きしめて……。
だが俺は、西原の言葉で現実に引き戻される。
そうなのだ。西原は、愛しい恋人を思って泣いていたのだった。
そして彼は、俺の気持ちはとっくに門田に移っていると思っている。でも、実際は……。